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〈四十話〉ベースへ帰投

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 昼時、光成たち第四分隊を乗せる二七式戦闘車は、三日間の単独先行訓練を終え拠点であるベースに帰投した。上空から見ると綺麗なヘスコ防壁で四角形に作られている。二七式戦闘車はゲートをくぐり抜け、中央まで進むと一旦停車。ゲートが閉じられ、上から横からと除染剤が吹き付けられた。十数秒後、光成たちは降りる。


 滑らない様に移動して壁際に向かう。抽選会にで使う様な箱があり、光成はその穴にマガジンを抜いた二八式銃の銃口を入れ引金を引く。銃弾が出る訳もなくカッチ、という空振りした撃鉄の動作音だけが響く。同じように腰のホルスターの九mm拳銃も空撃ち。


 『弾薬回収入れ』と書かれたケースに胸ポーチにあったマガジン全部を放り入れる。ボックスへ立てかけ、紐付きの小さな紙に自分の名前を書いてから引き金に縛りつけた。そうしている間に隣にアルベルトが同じように、ベルトリンクをケースにジャラジャラと入れている。


 全員が終えると今度は車両通路の先にあるコンテナへ進む。中はちょっとした脱衣室になっており、大きめの籠へボディーアーマーや戦闘服、下着も脱いで裸になる。そのままコンテナ奥にある『シャワー室』と書かれた縦長の場所に進み、全員が入るとドアが自動的に閉まった。少しすると頭上のスプリンクラーから()が出てきた。


「ギャー!」


「そこは女の子らしくキャー! だろ」


「そんな余裕あるか!」


 頭の上から勢いよく出てくる水を被った愛花が男のような悲鳴を上げ、隣にいたアルベルトが脇を洗いながら茶化すようにいう。愛花は怒鳴り返しながらアルベルトの足をけった。


「ちゃんと隅々まで洗えよ」


 光成は身体を洗いながら二人に注意する。本来なら四十度のお湯が出るはずだが、給湯器がポンコツなのか使用なのか最初は水が出てくる。その冷たさを紛らわそうと無言で体を動かす、しばらくして待望の温かいお湯が出てきてシャワー室に湯気が立ち込める。ようやくお湯が出てきたと思った時にシャワーは止まった。


 ブザー音と共にドアが開き湯気が逃げて空へ行く。もっと浴びたいのを我慢して用意してあったタオルで身体を拭き、クリーニング済みのタグが付いた服を着る。着終えるとシャワーを浴びている間に除染された各々の二八式銃を受け取る。


「じゃ、わたしたちはお風呂に行って帰りますねー」


「ああ」


 光成と正義は以外はそのまま身体を温めるため風呂へ向かい、二人は訓練報告をするために指令コンテナへ向かった。ベース内には無数、それこそコンテナターミナルのようにコンテナが並んでいる。


 コンテナには四つ種類があり、隊員が家として使う生活コンテナ、それを連結させた食堂や娯楽コンテナ、トレーニングコンテナ。作戦指示を出す司令室コンテナ。報告を終えた二人は脇道に雪が積もったコンテナの間を速足で自分たちの宿舎コンテナへ向かう。


「クッソ寒いな、何度だ?」


「えっと・・・マイナス六度」


「ああ通りでクッソ寒い訳だ」


 その問いに正義は温度計が付いた腕時計を見て答え、それに光成は悪態をつく。自分たちが寝泊まりするコンテナへと白い息を吐きながら向かう。ほどなくして自分たちの生活コンテナに到着し、二人は二重ドアをくぐった。


「この乳液コスパはいいけど質がねー」


「そうですね。愛花さんこれ創意化粧品の新しい乳液、五〇〇ポイントで買えますよ」


「クッー、デリッシュ!」


「つまみは?」


「はいバタピー」


 愛花と雪欄は一つのベッドに腰かけてタブレット端末で、三日間で貯まったポイントを何と交換しようかと話し合っている。アルベルト、伊平、浅海の三人は早速ビール缶を開け酒盛りをしている。正義は余程疲れていたのかすぐにベッドに横になっている。


 光成も自分のベッドに横になり電子ブックリーダーを手に取る。起動して読みかけの小説を読もうとページを捲ろうとした時、支給品であるPHSが鳴った。文字から目は動かさずに、片手で通話ボタンを押して耳に当てる。


「はい」


『光成一等陸曹、司令官室へ』


 「了解・・・・クッソ」悪態を吐きながらブックリーダーを乱暴にベッドに放り投げ上着を着ていると「誰からだったのですか?」そう愛花が聞いてきた。


「指令官室に呼ばれた」


「何かやったのですか?」


 そうビール缶片手に顔が赤い浅海が訪ね、他の五人も不思議そうに光成を見ている。休暇のひと時を邪魔された光成は苛立ち気に「知らん」と返しながらコートを着て寒い外へ出た。少し歩き左右のコンテナが切れ少し開けた中央に到着した。


 指令コンテナは十数個のコンテナが連結されている。ドアの横に立っていた歩哨に軽く敬礼して中へ入る。少し進んだところにタッチテーブルがあり、周りを複数の幹部隊員が囲み何かを話し合っている。その中には今回訓練の事実上最高指揮官である岬一佐が立っていた。


 ふとし顔を上げ拍子にちょうど光成と目が合った岬一佐は横にいた幹部隊員に何か話し、輪から外れ光成に手で付いてくるように伝えてきた。頷き後を付いていき何度か曲がると指令官室に到着した。司令官室は小さなテーブル一つにソファー二つ、奥には折り畳みの机とパイプ椅子が置いてあるだけのとても質素な内装だ。


 岬一佐は奥の椅子に座り机の引き出しから何か書類を出し、何かを書き込みながら「ただでも狭いのに余計狭く感じるから座れ」と立っている光成に向け短くいった。いう通りに安物のソファーに座り次の言葉を待った。


 カリカリと書類にペンを走らせながら「最後の大規模訓練でメディアの人間が加わるのは知っているな?」そう口にした。光成は頷きくと岬一佐は話を続ける。


「その際メディアや研究者、対話者は本隊に同行する。だが対話者の一人が先頭部隊に同行することになった」


 言語学や心理学などの技能を有している人間が対話者であり、大陸種とのコミニケションなどは対話者が行うことになっている。


「もしかしてその時の先頭部隊というのが・・・」


「そう貴官の部隊だ」


「はあ、しかし何故同行するのですか?」


「理由は知らないが本人が同行を希望している。本来なら一旦断ったが翌日に()()()()()()()()()()(調査隊)本部”同行させるように”との指令が来た。これがその対話者の資料だ」


 岬一佐は苦い顔をしながら厄介事だといわんばかりに手元の資料を光成に差し出した。それを見た光成はどこかで見たような感じを覚えた。


「この人って九年前の()()()ですか」


「九年前の歴史的な記者会見で説明した外神興子だ」


 資料に載っていたのはワープ説を証明した外神興子その人だった。


「彼女は確か上陸する研究者チームの指揮を執るのでは?」


「チームの指揮を執るとはいっても肝心の大陸種との接触がない限り、対話者たちの仕事はあまりない」


 疑問が解け資料をザっと流し読みし、四枚目を捲ると別の人間の資料があった。


「もう一人は足手まといにはならないはずだ」


「確かに足手まといにはならないですね」


 むしろ自分たちが足手まといになりそうだ、と心の中でつぶやいた。川本雄二(かわもとゆうじ)、十年前に辞めるまで陸自最強部隊である第一空挺団に十二年いた。最終階級は三等陸佐。そして今は創意グループ傘下のPSCに就職、と書かれていた。叩き上げのエリート隊員だ。


「彼は外神興子の護衛として同行する。階級についてはあくまで元であって命令権は貴官にある。命令権は一切存在しない」


 付け加えるように岬一佐がいう。


「二人は最後まで参加するのですか」


「向こうからの話では二、三日は同行するらしい。まあ途中で抜けるかも知れんが。よろしく頼むぞ」


「はっ」


「ではこの件は頼んだ。下がっていいぞ」


 敬礼をして司令官室から退出し司令室を後にする。外へと出たら先程まで細かい雪しか降っていなかったが、今降っているのは一つ一つが大きい牡丹雪(ぼたんゆき)だった。これはかなり積もりそうだな、と光成は考えながら宿舎へと急いだ。 







 

四一話の誤字報告してくれた方ありがとうございました。


小修正 12/23 2/3 2/10 4/26

中修正 3/5 3/12 3/20 3/31 4/13 4/17 4/20 5/5 5/9 6/10 6/12 6/16 10/8 1/15 1/17

大修理 6/9



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