〈三八話〉戦闘?
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日本では北海道くらいでしかお目にかかれない文明皆無な草原。雪で真っ白なキャンバスを角張ったフォルムの一台の装甲車が雪をかき分け走っている。ピーピーピーという警告音と共に妙に甲高い声の女性が警告を発す。〈二時の方向、距離一二〇〇メートル。四体のゴーレムタイプを確認〉。
「こちらに向かっているのか?」
「〈はい。本車の進行ルート上と被る接触コースです。脅威度をグリーンからイエローに変更〉」
「LRAD準備」
「〈LRADを起動〉」
車長の言葉を女性が復唱し〈使用する方位を決めてください〉と追加の指示を求め、車長の手元にある操作パッドの画面に車両全体像が表示される。車長はゴーレムが向かってくる方向をタップすると「〈二時方向に使用しますか?〉」最終確認をする。
「スタンバイ」
「〈LRADスタンバイ。ゴーレムタイプ依然接近。脅威度をイエローからレッドに変更〉」
「LRADアクション」
「〈行動抑制を実行します、LRADアクション〉」
音も振動も発生なく少し間を置き結果が報告される。
「〈敵の活動状況に変化なし、効果なしと判断〉」
「今度はADS、アクション」
「〈ADS起動―――――起動完了、行動抑制を実施。ADSアクション。・・・・・効果なしと判断〉」
「敵に指定。実力行使に移行、実弾攻撃準備」
「〈実弾攻撃準備・・・・射撃管制装置がエラー。主砲射撃不能〉」
「RWS? MATは?」
「〈射撃不能。FCSの再起動が必要です〉」
操作パッドに表示されている車両兵装部分が赤くなり兵器使用不可と操作がロックされる。
「ッチ、こちらトレーラー07、トレーラー07、コンボイ05へ。聞こえるか」
『コンボイ05、聞こえている。送れ』
車長は後方にいる本隊に連絡する。
「ゴーレム四体と接触、繰り返すゴーレム四体と接触。判定はレッド、FCSエラーのため車両兵器が射撃不可、射撃不可。これより停車して交戦する」
『了解』
「操縦手、停車だ」
「了解」と操縦手が返事をして直ぐに停車して車長と操縦手の体は前後に揺さぶられる。車長は振り向き、薄暗い兵員室に向き「さあ、お仕事の時間だ。応戦してくれ」と言葉を投げかける。兵員室に乗車している隊員、光成は頷いた。
「グリーンライト! 降車、降車、降車」
出入口のところにあるグリーンライト、汚染状態つまり安全かを示す色を叫び外の世界へと飛び出す。アルベルトや愛花たちもそれに続く。
「車両を中心に展開ッ! 田中と愛花はグスタフを使用!」
指示に従い全員が装甲車を中心として円形へと展開する。光成が地面に伏せた時には敵の姿がハッキリと見える距離まで来ていた。身長は優に五メートルは超えているであろう人の形をした土色の巨人、ゴーレムが四体が腕を振りながら静かに光成たちへ向かって走っている。
「距離は?」
『〈目標との距離五三〇メートル〉』
間髪入れずに無線を通して女性が答える。
「グスタフは四五〇で射撃開始、他は制圧射撃」
「了解」
アルベルトのSAWが断続的に射撃を始め、それにつられ他も射撃を開始する。光成も二八式銃のセレクターを”安全装置”から”単発射撃”に切り替え、銃床を肩に押し付けて光学照準器を覗き、風景に重ねて赤いサークル中央に点が見える。そしてドットをゴーレムに重ね引き金を引く。
風とそれに揺らされる草の音しかしなかったのんびりとした世界は、銃声と排せつされた薬莢同士がぶつかる金属音が途絶えることなく響き渡る戦場へと変わった。
「装填ヨシ、後方ヨシ」
スウェーデンで開発された対戦車兵器、すでに初期型から七〇年以上たっているカールグスタフ無反動砲こと八四mm無反動砲を構えた伊平のヘルメットを愛花が二回軽く叩いて装填完了を伝える。
『〈目標との距離四五〇メートル〉』と聞こえた瞬間、銃声とはまた違う花火のような爆音が銃声に加わった。グスタフが発射音だ、証拠にグスタフの前後から白煙が出ている。数秒置いて先頭を走っていたゴーレムに命中、音もなく後ろへ倒れて動かなくなった。
「次弾装填」という伊平の声に愛花は側に置いた背嚢に括り付けられている予備の砲弾を取り外し、グスタフの後ろのノズルをスライドさせ砲弾を装填する。「装填完了、後方ヨシ」とヘルメットを叩き合図する。間を置かずに二射目が発射され、右端のゴーレムに命中。
肉体? 素材? の土や岩が辺り一面に破片がパラパラと散らばる。愛花が再び次弾を装填しヘルメットを叩き三射目が発射され、今度は左端のゴーレムへ命中、膝から崩れ落ちた。最後の一体になり光成は「射撃中止」と短く命令を出すとピタリと銃声が止む。最後のゴーレムは銃弾を浴び全身にボロボロと弾痕が無数にあり、速度も落ちているように見える。
止めの四発目を愛花が装填しようとした時『再起動が終わった。最後は四〇mmで片づけるから頭を上げるなよ』車長の言葉が終わらない内にウィーン、低い音を立て装甲車の上にある砲塔がゴーレムに向けて動いた。
「伏せろ! 伏せろ! 頭を上げたら吹き飛ぶぞ!」
光成は大声で全員に聞こえるように叫ぶ。同時に重機関銃より気持ち大きいぐらいの重たい音が五回短く発せられた。光成が顔を上げると最後のゴーレムは跡形もなく四方へと砕け散っていた。
「周囲警戒」
銃にセイフティーをかけて立ち上がる。額の汗を手で拭きながらかけていたサングラスを取ると、倒れていたゴーレムが一瞬で消えた。そのことに驚かず再びサングラスをかけなおすと、再び視界に倒れたゴーレムが現れる。ゴーレム残骸を横目に光成は「全員乗車」と指示を出し装甲車へ乗り込んだ。ハッチが閉じると緩やかに動き出した。
光成たちのいる草原は新大陸ではない。一一月中旬の択捉島において訓練をしていた。
択捉島は新大陸の上陸地点と内陸部の地形や気温が極めて似ているのと、手つかずの自然があるのと同時に周囲に人が住んでいない、と演習には持って来いの場所だったため選ばれた。人が住んでいないといっても周辺海域の海底資源開発の拠点として以前よりは人はいるが。
調査隊へ参加する隊員たちは予定通りに入間基地からC-2輸送機で択捉島、旧日本軍からソ連軍、ロシア軍そして八〇年以上時を経て再び日本に使われることになった天寧空港(ロシア名はブレヴェスニク空港)に着陸した。
天寧空港からヘリで海上に待機していたおおすみ型輸送艦二番艦”しもきた”に乗艦した。”しもきた”は”かが”と同様に全通飛行甲板とウェルドックを持つドック型輸送揚陸艦だ。ウェルドックには戦車も運ぶことが可能なエアクッション艇1号を二隻搭載している。そのLCACとヘリのピストン輸送により上陸訓練が行われた。
その後は活動拠点を設営され今光成たちは任務であるパトロールをしているところだ。そして乗っている装甲車もまた新兵器の一つである二七式多目的装輪装甲車(二七式装甲車)だ。
九六式装輪装甲車の後継として開発され、調査隊仕様に改良されている。二八式銃のシステム・ウェポンと似たモジュラー構造を採用しており、一時間足らずで様々な用途のモジュールへ換装できる。そして草原を走っているのは、射撃ユニットが追加された歩兵戦闘車(二七式戦闘車)型だ。
先程ゴーレムを粉々にした主武装の対空砲としても活用できる七〇口径四〇mmテレスコープ機関砲を一門搭載。CTA機関砲というのはCTA弾を使用する専用の機関砲で、従来の砲弾は弾と薬莢(火薬入り)の二つに分かれている。しかしCTA弾の場合は砲弾は火薬と一緒に薬莢内に埋め込まれているため、サイズが三分の二になり搭載弾数や連射速度の向上など様々な利点がある。
中距離多目的誘導弾発射基を二基搭載。副武装として一二・七mm機関銃M2と七・六二mm機銃M240Bがある。射撃モジュールは完全に車体から独立・無人化しており車内から操作を行う。ウォータジェットも搭載されているため水上走行も可能だ。
また動物や大陸種を傷つけずに無力化するため非殺傷兵器であるLRADとADSの二つが搭載されている。LRADは音響兵器と呼ばれるもので、向けた方向にピンポイントに高音を流して無力化するといったものだ。
ADSは音ではなく電磁波を対象に対して照射し、電子レンジや電磁調理器と同じ誘電加熱を引き起こさせ皮膚の表面温度を急激に上昇させ行動の無力化を行う。あくまで錯覚させるだけで実際には火傷はしない。比較としてIHが使用する周波数は二十~九十キロヘルツで電子レンジは二・五四ギガヘルツ、ADSは三八倍近い九五ギガヘルツである。
なお戦闘車では車長が砲手も兼任する。そのため負担や作業量が大きいため、サポートする存在がある。ゴーレムの接近を警告したり光成たちに距離を知らせた女性、サポート人工知能が搭載されている。そのため攻撃をする時も音声だけでも目標を設定し、”攻撃”というだけでAIが攻撃をしてくれる。
ファンタジー要素が登場するまで12万文字・・・新記録かな?少なくとも著者の知っている「小説家になろう」に投稿されている中で・・・・・・・続きは活動報告にて「著者の独り言(七)」にて。
小修正 1/7 2/16 4/9 4/18
中修正 1/21 2/6 3/12 3/25 3/31 4/15 5/20 6/5 6/10 6/16 7/7 7/8 12/10 1/10 1/11
大修整 1/24 2/25 4/13 4/26 5/5




