〈二話〉政府見解
ブックマーク・感想・評価は執筆の励みになります。
一月一日元日から全国で発生している異常事態に対して政府は、三六時間後の一月二日十二時にようやく緊急記者会見を開いた。皇居から徒歩で二十分のところにある総理大臣官邸の一階にある記者会見は、ピリピリとした空気が支配している。そこに総理が現れると滝の様にシャッターとフラッシュが響き渡る。普段のスーツではなく防災服姿の総理が壇上に立つ。
そして軽く一礼して総理は今起こっている異常事態の原因について語りだす。だがその場にいた記者やカメラマン、テレビクルー、テレビ・ラジオ、インターネットで見聞きしていた人間は驚愕した、いや自分たちの目や耳を疑った。
「我が国に存在する考えられる全ての機関に研究者、科学者そして個人にいたるまで原因を調査した結果、我が国は本来いた宇宙ではない別次元の宇宙へワープした、と結論づけました」
「それは本当に政府の公式見解ですか?」
「冗談でも嘘ではなく正真正銘、政府の公式見解です」
たまらず質問した記者の質問に総理は律義に答え、記者会見室はザワザワと騒がしくなる。総理は両手を上げ静まるように促しながら続ける。
「形式上、今の空間つまり宇宙と惑星を「第二宇宙・第二地球」と呼称します。現段階では我が国以外の国家と通信不能どころか生物の存在を確認できておりません。こちらの映像は辛うじて被害を免れた国際宇宙ステーションに乗り込んでいた日本人宇宙飛行士により撮られたものであり、現在我が国がいる地球の映像です」
総理の合図で壇上横に設置されたディスプレイに映像が映し出されたのは、誰もが一度は見たことのある青い惑星、地球が映し出されていた。しかし一目でおかしいと誰もが思うとろこがあった。
「ユーラシア大陸もアフリカ大陸、アメリカ大陸、オーストラリア大陸、グリーンランドといった大陸や島々の一つすら存在しません。もちろん南極や北極も存在しません。また日本近海や領海内に新たに大小さまざまな島を複数確認しました」
淡々と説明を続ける。いつしかマスコミは総理の説明に静かに聞き入っていた。呆然としていたという方が正しいかもしれない。
「・・・・もちろん発表したことが間違いであることも含め現在も調査を続けています」
一旦言葉を切り「また私からの公式見解の後に並行世界へのワープ説とそれを証明した方から詳しく説明して頂きます」壇上横に立っているスーツ姿の女性を手で差し、一旦言葉を切りコップに水を注ぎ口に含んで記者会見を続けた。
そして最後にこう付け加えた。
「我々は未だかつてない程の苦境に立たされています。今こそ国民が、日本人が一丸となってこの苦境へ立ち向かわなければいけません。そうでなければ我々は滅びの道を歩むことになるでしょう・・・・」
小修正 12/1 12/8 2/18 5/10
中修正。10/20 11/25 12/23 4/29 5/23 1/5
大修正 4/29