〈十話〉 Referendum(二)
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「水を差すようで申し訳ありませんが、事態はまだ解決していません」
「どういうことですか」
「今回の船はわかりませんが、感染地域は海運が盛んのようで船舶が多数確認されました」
その言葉に先程まで安心顔だった出席者たちの表情が曇る。
「まさかまたやってくると・・・・」
「現在衛星で分かっているだけでも六隻が我が国まで流れ着く可能性が高いです」
「・・・はっきり言って下さい」
「治療法があるとはいえ相手は自然です。いつ突然変異し治療不可能になるかも知れません。そうなる前に新大陸へ介入し、ペストを封じ込めるべきです。我が国に一番近い西沿岸に部分だけでも介入するべきです」
これまで一清は新大陸について質問されない限り口にしなかった。だがここに来て新大陸に行くべきだ、と初めて主張した。まさか報告会議から新大陸に介入する話へと飛んで全員が困惑した。佐紀が誰よりも早く噛みついた。佐紀はどちらかと言えばモンロー主義つまり鎖国継続派だ。
「長官の仰る通り危険を排除するために新大陸へ介入するのは理解できますが、わざわざ我々から行くのではなく、今回同様に海上で処理すればいいのでは? それに我が国が新大陸に介入するメリットはペスト以外に存在しません。それも戦争状態の場所に?」
「・・・」
佐紀の言葉に一清は何も言い返さない。佐紀はそれを反論する余地がないのだ、と思ったのか少し勝ち誇った顔になっている。だが古賀は何も反論しない一清を見て少し警戒した。だが会議は何事もなく順調に進み、会議で決定されたのはペストの情報公開だけで、世間で騒がれている開国については決定されなかった。
事件発生から五日、ペストのことは国民に発表された。
続きは二日以内には投稿します。
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