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〈七話〉次の処置への話し合い(二)

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  古提案通り十分の休憩になり出席者が指令室を出ていく。一清長官はいつの間にかいない。総理執務室へと戻って来た徹は自分の椅子ではなく応接用のソファーに座った。執務室に入る前に秘書に頼んでおいた緑茶をゆっくりと飲む。


 「はあ」


 深々とため息をして天井を見上げる。どうして私ばかり、そう徹は考えていた。いやいやながら総理となったが、どうして私が就任して待っていたと言わんばかりに厄介ごとばかり起こるのだ? と徹は再びため息をする。そんなとき執務机の電話が鳴り、気だるげに立ち上がり受話器を取った。


 「どうかしましたか・・・・」

 

 「佐紀官房長がお見えです」


 電話の相手は扉一枚隔てた向こうにいる秘書からで、佐紀の来訪を知らせるものだった。古賀は思わず「追い返してください」そう口から出かけたが、それを飲み込み「入れてください」とそう言った。返事をして十秒も経たずに扉が開かれ佐紀が執務室に入室し、「休憩しているところ申し訳ありません」と言いながらお辞儀をする。


 「かまいませんよ。どうぞ掛けてください」


 「ありがとうございます」


 佐紀は身長が一八〇センチと高身長の先はスラっとスタイルが良く魅力的であり、同時に頭が切れ政治家としての才能があるのは古賀も認めている。優秀で仕事は完璧に行うし機転も利く、だがすぐに佐紀の問題点を見つけた。それは勝気(かちき)な性格だ。男勝り(おとこまさり)とも言えるかもしれない。


 別段、勝気だの男勝りは佐紀に限った話ではなく女性議員にいえることだ。だが佐紀の場合、今着ているスーツの色のように顔を真っ赤にしてヒステリックを起こす。容姿が整ってるだけに怒った時は余計に怖い。そのため徹はあまり佐紀と一対一で会いたくない相手の一人だった。


 そしてよりにもよっても佐紀と一斉は犬猿の中でよく言い合いを展開している。恐らく休憩時間にわざわざ執務室に来たのも自分の主張を通すための事前工作の一つだろう。


 「ご用件は? まあ船にあった遺体のことでしょうが」


 「はい、その件で総理の考えをお聞きしたいので来ました」


 「一清長官のいうように我々にできる選択肢は限られます。提案通りに遺体を筑波に運び込む、または海上で時間をかけて研究する」


 「それか今日あったことを()()()()()()にするか」


 佐紀の言葉に古賀は首を振る。


 「それが最も愚策ですよ。突入したSSTだけならばともかく今日の件には巡視船の乗組員、海上自衛隊のパイロットなど関係者が多すぎます。なかったことにしようとするなら衝突問題の時の野党政権のように国民から吊るされますよ。今度は文字通りにね」


 二〇一〇年に起きた尖閣諸島で発生した中国漁船と巡視船の衝突事故のことだ。その際の政権は事件のことをなかったことにしようとした、だが巡視船の乗員の一人が衝突の瞬間をネット上にアップし事件が公になった。


 今は国民の間で未だかつてない程に新大陸しいては日本の未来について議論がなされている。もちろん公務員も例外ではない、というより公務員の徴兵をしているため大多数の国民が公務員だが。


 「口封じをしようというなら間違いなく船のことは公になるでしょう」


 佐紀は自分から出した意見を実行した場合の結果をいう。古賀はそれが分かっているのなら口に出すな、と言いたくなったが当たり障りのない返事をする。


 「ええ、そうなるでしょうね。少なくとも船に関しては国民に発表します。問題は陸に上げるか上げないか、これで来たのでしょう?」


 「はい」


 「あなたの考えはどちらですか?」


 「一清長官の考えは分かります、ですがまずは海上で遺体の調査をしてからでも遅くないと私は考えています」

 

 「つまり陸に上げること自体は反対ではない、と」


 「ええ、いずれにしろ陸にある研究機関での調査が必要でしょうから」


 「あなたの意見は分かりました。他にはありますか?」


 徹の問いに佐紀は首を振る。ちょうど会議の再開する時間だった。





小修正 1/1 2/17

中修正 9/27 11/15 1/1 3/14 3/22 5/1


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