〈二話〉新大陸の住人
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「本日は昨日に言った通りに新大陸についての報告をさせていただきます。今から皆さんに見ていただくのは一週間前のものから十二時間前に衛星で撮れた画像と映像です」
現総理である古賀徹総理は壇上の国旗に一礼し、そう前置きしつつ左側にあるモニターを指す。映し出された映像が進むにつれマスコミや国民は驚愕した。最初は新大陸の全体像が映し出された。そして徐々に寄っていくと、映し出されたのは見慣れている山々だったが、少し引いて今度は平原と思われる場所に近づいていく。
草原が画面いっぱい広がりしばらく続く。画像の右上に撮影時刻と経度、緯度らしい数字が少しずつ変わっているので地表にズームしたまま横か上に移動しているのだろう。少し続いたあと草原の中に自然の物ではない“何か”が映し出される。
何かの集団が二つ横一列になり線を作り出している。そして撮影時刻が一分ごとのコマ送りになり先程まで二つあった線が徐々に寄っていく。五分進んだところで二つの線は完全に交わり一つの線になった。「ここから映像になります」黙っていた古賀総理が急に短く発言してすぐに画質は荒いが何が起こっているかはハッキリと理解できる。
戦争だ。しかも戦争というより「いくさ」といった方が近い戦争だ。
二つの線だと思っていたのは隊列を組んだ軍隊で、少し近づいたところで両陣営から白い何かが相手に向かって飛び出す。そして飛び出した何かが両者に到達すると隊列がわずかに乱れた。上からの映像だからまるでオセロの石が白か黒に変わるかのように見える。そして隊列は進むが色の変わった“石”は動かずに隊列から置いていかれる。あれは“矢”だ、そう少し経ってから分かった。
そして最初に見た画像のように隊列が交わる、いやぶつかった。先程までは線がぶつかった瞬間、ゴチャゴチャと崩れ次第に横や縦に広がる。軍隊の人?は剣のようなものを振り回しており、それが当たった相手は倒れて動かない。
少ししてから馬がゴチャゴチャとしたところに突っ込んでいく。騎兵だろうか?そうまるで時代劇や大河ドラマで流れるような“シーン”がモニターに流されているのだ。だがこれは“本物の戦”だ。
開いた口が塞がらない、という表現がぴったりする映像に追い打ちをかけるように新たな要素が加わる。空を羽ばたく鳥のようなものが地上に火を噴いている、しかし明らかに鳥より大きいその証拠に人らしき生物が背中にまたがっている。
別の場所では巨人のような生物がこん棒のようなものを振り回しているではないか。他の人とは格好が明らかに違う集団が何やら儀式めいたことをしている、しばらくして電気の灯りは少し違う光が包み込み、その光が目の前の集団へと飛んでいき爆発した。
銃弾やミサイルが飛び交う戦争どころか中世や戦国時代の戦いにあんなものはいなかった。いや、いてたまるか。そんな明らかに異常な戦場の映像は十分続いた。古賀総理は映像が終わり呆然とするマスコミに向かっていう。
「映像はここまでです。何かご質問は?」
一瞬遅れて無数の手が上がった。
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