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斯波武衛家顛末記  作者: 神山
元亀2年(1571年)
37/53

林佐渡守「ふっ、完璧な囲みは敵に死力を尽くさせますからな」武井夕庵「いや、敵に包囲されてるのはこちらなんですけど」


  元亀2年(1571年)。年の瀬も押し迫った美濃岐阜城において、織田家筆頭家老の林佐渡守(秀貞)は弾正大弼(信長)の右筆(秘書官)である武井夕庵と、奉行の菅屋九右衛門(長頼)を呼び寄せた。


「来年、御屋形様は上洛される」


 夕庵も菅谷も驚いた表情は見せずに、むしろ当然とばかりに頷いて応じた。


「して規模と期限は?」


 夕庵が尋ねると、林佐渡守はただでさえ不機嫌そうに見える皺だらけの顔をさらにくしゃくしゃにした。


「御屋形様曰く、長ければ来年一杯。大和や近江、摂津への出兵を検討しているので兵力は最低でも3万以上。後詰の兵も合わせれば5万から6万の動員となるだろう。その兵糧の段取りや野営陣地の策定を今から着手せねばならぬ」

「……厳しいですね。不可能ではありませんが」

「出来るか、出来ないかの問題ではない。御屋形様が決断された以上、やるか、やらぬかの問題となれば、やるしかないのだ」


 菅谷九右衛門が険しい表情で腕を組むが、林佐渡はぴしゃりと言い切った。


 政治的な決断こそが当主の仕事であり、それは誰にも代弁することは出来ない。だからこそ当主の決断の後は、臣下は全力でそれを遂行しなければならない。織田弾正忠家の家風とはそういうものであると林佐渡は理解していた。


「失礼いたしました」


 自らの心得違いを直ぐに謝罪する九右衛門に、林佐渡は気にしたそぶりも見せずに鷹揚に頷くと、指を折りながら上洛の目的を列挙した。


「今回の上洛の目的はいくつかある。朝倉・浅井の牽制、摂津情勢、大和の松永霜台……」

「そして幕閣との意見調整ですな」


 武井夕庵が重ねるように言うと、織田家の筆頭家老である老人は苦々しげな表情でひとつ頷いた。


 京と岐阜の間は通常なら5日ほど、どんなに急いでも3日の距離がある。この地理的距離が、幕府と織田家の間の政治的な距離感につながり、ひいては亀裂「がある」と受け止められる原因となっている。


「烏丸卿の一件も村井長門守(貞勝)では抑えきれなんだ。本来であれば上様を抑えることが出来たであろう先の管領たる斯波武衛様は越後への使者として京を空けていたし、上様と同年代の若武衛様(斯波義銀)ではいかにも力不足。岐阜との連絡を取ろうにも、往復だけで時間が過ぎてしまう」

「三郎五郎様(織田信広)が御屋形様の御名代で在京していたとしても無理だったでしょうな。大樹(足利義昭)のお怒りは相当のものだったと聞きます」

「武井の申す通りだ。名代ではいかん。御屋形様でなければ止められなかったのだ」


 烏丸屋敷襲撃事件は、朝幕関係の悪化をもたらした。これに改元費用をいまだ工面出来ない幕府に代わって織田家が負担したことと併せて、三者の関係が悪化している……とのもっともらしい風説が畿内において『意図的』に流されていることは、村井長門守から報告が入っている。


「こちらの疑心暗鬼を誘おうという策ですか。松永霜台の仕業ですかな?」

「四国三好の篠原右京進(長房)も、この程度の情報操作ならやってのけるであろうよ。二条関白の政敵である人物が丹波の赤井のもとに身を寄せ居ているとも聞くし、噂を流布させるだけなら本願寺とてお手の物……しかしここで犯人探しをしても仕方があるまい」


 疑わしい勢力の名前をいくつか列挙して見せた林佐渡は、「厄介なのは事実の中に意図的な嘘が組み込まれていることだ」と続けた。


「御屋形様が在京していないのも、幕府が烏丸屋敷を襲撃したのも、改元の費用を幕府が負担できずに織田家が肩代わりしたのも、すべて事実だ」

「つまりそこに相手の意図があると」


 菅屋九右衛門が唸る。


 いくら織田家が岐阜で抗弁しようとも、都で形成された世論を覆すのは難しい。ただでさえ今年は畿内における反幕府・反織田家の一大拠点である比叡山延暦寺を焼き打ちしたことで、伝統的な自社勢力は無論、穏健派の保守勢力からも反感を買っているのだ。


 これ以上の政治的な失策は幕府にとっても、むろん織田家にとっても許されない。林佐渡は「だからこその上洛だ」と菅屋九右衛門の懸念に応じた。


「このまま斯波武衛様とその一族に任せておくわけにはいかないというのが、御屋形様の決定である。自ら幕府との意思疎通を図り、朝廷を交えて関係の修復を図る。山名氏と赤井の領土紛争、毛利と浦上との外交関係、播磨の諸侯との関係再構築、そして摂津情勢」


 「百の噂が好き勝手に流布されるのも、すべてはそこに御屋形様が不在だからだ」と林佐渡守は認めた。


「いくら取り締まったところで意味はない。実際に京において将軍家との協調体制を演出することで、そうした風説を一掃する。また幕閣との意見調整を図り、これからの政の在り方についても決められるつもりだ」

「それは御屋形様がこれまでの方針を撤回し、在京を続けられるということですか」

「武井殿、そこまでは申してはおらぬ。何より、ほれ……武田の問題もあるしな」


 林佐渡は一旦息を短く吐くと、武井に視線を合わせた。


「旧一色出身の武井殿に向かって言うのもなんだが、美濃は一色領から織田領となって日が浅い。美濃岐阜から拠点を移せば、国人衆が武田に個別に取り込まれる恐れもある」

「しかし、それで在京を拒否するのであれば、結局は問題の解決にならぬのでは?」

「なにも永遠に岐阜に本拠地を置くと決めたわけではない」


 林佐渡は主君の考えを彼なりの推察に基づいて披露した。


「おそらく御屋形様としては、美濃を本拠地とすることで織田家と美濃国人の宥和を図りたいのだ。幸いにして武田と浅井という外敵もいる。内側が結束するには十分すぎる敵だろう」

「少なくとも浅井討伐がなされるまでは、岐阜にとどまり続けると?ではその先は」

「中川駿河を摂津守護とした。中川が預かっていた安土は今は大津伝十郎(長昌)を派遣している」

「つまり将来的には南近江に」

「あくまで仮定の話だ」


 これ以上は越権行為になると、林佐渡守は強引に話を打ち切った。


 たしかに岐阜から南近江、仮に安土に本拠地を移せば都まではせいぜい2日から3日。浅井と六角残党を完全に討伐し、近江全体を領有できれば淡海(琵琶湖)の水軍も利用してより円滑に動員が可能となる。


 南近江であれば幕政から一定の距離を保ちつつ、影響力を維持したいという織田弾正大弼の思惑とも一致する。何より管領代として幕政に影響力を持った六角氏の先例もある。


「しかし問題は、浅井討伐まで武田が待ってくれるはずがないという点だな」


 林佐渡はそれまでの饒舌な語り口から一変して、顔をゆがませた。


 さながら空腹の虎を宥め透かすかの如く、甲斐武田家との外交交渉を取り仕切っていた林佐渡であったが、今年の2月から5月にかけて同盟国である徳川の本拠地の三河に武田家が侵攻したことで、これ以上の融和策をとるのは難しいという考えに傾いていた。


 この状況では、徳川と縁戚関係にある織田が一方的に対武田融和政策をとれるはずがない。


「小田原の北条氏は無理としても織田、上杉、徳川。上様を仲介役として盟約を結び、武田に対抗する。徳川には近江と摂津がある程度落ち着くまで、何とか持ちこたえてもらうしかない」

「武田が東美濃に進出した場合は?」


 今度は菅屋九右衛門が疑問を投げかけた。


「東美濃から一挙に岐阜を目指すほど武田入道は迂闊ではあるまい。仮にそうしたとしても尾張からの軍と挟み撃ちにするだけだ」

「長島だけなら可能かもしれませぬ。しかし朝倉や浅井と連携した場合はいかがです?朝倉は今年一杯、兵を休ませました。来年の雪解け、つまり3月か4月以降は万単位の兵が南下してくるとでしょう」

「浅井にはもはや単独で軍事行動を起こすだけの余力はない」


 岐阜において浅井領の調査を続けてきた林佐渡の見解ははっきりとしていた。


「2年間延々と戦場に引きずりまわしたからな。それだけ領土も荒廃したし、冬の間は朝倉からの物資も望めない。都からの物資は経済封鎖をかけることも可能だ」


「つまり武田が本格的に東進してくるであろう前に浅井を無力化し、摂津戦線と大和、京の政局の混乱に終止符を打つというわけですな。期限はやく3ヶ月」


 武井夕庵が苦笑するのも道理である。これではあまりにも虫が良すぎるというものだ。


「言葉にしてみると簡単だが、実際には幾多の困難が予想されるだろう。織田家の不在は京の政局に相当大きな変化をもたらしているそうだ」

「細川京兆家の当主が上洛してくるそうですね?」


 菅屋九右衛門が言うと、林佐渡は「これで管領家そろい踏みというわけだ」と皮肉っぽく口をとがらせた。


 細川京兆家の当主である細川六郎は、昨年の野田城・福島城の戦いにおいて、本願寺の参戦前に幕府軍に降伏している。戦況悪化により上洛が先延ばしになっていたが、このたびに正式に上洛し、京兆家歴代の慣例通りに将軍義昭より一字を拝領して昭元あきもとと名乗ることが決まっている。


 尾州家の先代である畠山紀伊守(高政)、そして先の管領である斯波武衛一族と併せて、三管領が京に揃うことになり、将軍は御喜びだという。


「村井長門守からは幕府内部で細川六郎様を管領にするという話も」


 林佐渡守はこれを鼻で笑って見せた。


 大方、幕臣の反織田派(あるいは反斯波派)が、織田家の威光を背景に幕閣で重きをなす(と見なされている)斯波一族に対抗させようという思惑から出たものだろうが、そのような政権争いをしている余裕がないことすら理解出来ぬと見える。


「武田の存在がなくとも、摂津まで三好三人衆が進出しているのだぞ?いったい何を考えているのやら。論理的に考えればわかることではないか」


 理論整然と語る林佐渡に、かつて美濃一色家に仕えていた武井夕庵は冷や水を浴びせかけた。


「この岐阜城、稲葉山に割拠していた一色とて、滅亡する寸前までお家騒動を繰り返しておりましたぞ」


 これには林佐渡も鼻白む。あえて意図的に見ないふりをしていた課題の山を突き付けられたような気分に陥ったからだ。


「されど長島はどうされるのですか?このままでは、尾張と伊勢の陸路や海路の障害になるのは必至ですぞ」


 菅屋九右衛門がまたもや疑念を挟んだ。


 5月に攻略に失敗した伊勢長島一向一揆、織田家の本貫地である尾張西部国境を脅かす一大拠点の存在は無視出来ないはずだ。上洛する以上、何らかの対処か抑えが必要となるが、実際には力攻めも調略も困難である。


「長島は先の遠征で懲りた。しばらく経済的に締め上げるだけに留めるというのが御屋形様の決定だ」


 菅谷に対して、林佐渡は続けてその理由を伝えた。


「確かに数は多いが、彼らには尾張までの遠征軍を組織出来るだけの経済力も人材もいない」

「津島や熱田については?」

「やつ等も自らの首を絞めるような相手と商売はせぬだろう。もしも取引をした場合は容赦はせぬがな。九鬼水軍と佐治水軍に海上を封鎖させ、商船の護衛という名目で臨検も行わせる……どうした九右衛門。何か懸念でもあるのか」


 次第に表情が険しくなる菅屋九右衛門に、林佐渡がその理由を問いかけた。


「……伊勢長島征伐を主張していた北畠はそれで収まるのかと思いまして。神宮(伊勢神宮)を危うくするからこそ、北畠家中の反織田派の協力が得られていたのです。これを先延ばしにするとなると、反発が出ませんか?」

「九右衛門の懸念も最もだが……」


 林佐渡守はそこで言葉を区切ると、一つ鼻を鳴らしてから酷薄な表情を浮かべた。


「いざとなれば神戸のように粛清するまでのことよ。そのほうが後腐れがないしな」



「……そ、それは、誠か」


 尾張日置城主にして伊勢安野津城主である織田掃部(忠寛ただひろ)の報告に、北畠家当主の北畠具房は伊勢大河内城の一室で肥満気味の体を震わせた。


 織田掃部は織田一族らしい細面の顔を固くこわばらせたまま「いかにも」と答えた。


「小浜民部左衛門(景隆かげたけ)殿、駿河に下向して武田水軍衆に加わったとのこと」

「しまった!」


 思わず声を上げた具房は、その大きな頭を抱えた。


 伊勢水軍はそもそも九鬼氏と反九鬼派に別れている。


 この反目は九鬼氏の先代を北畠家が志摩の豪族をそそのかして追放し、伊勢湾の海賊衆を自らの水軍衆として組織化したのがそもそもの始まりである。この北畠の先代……つまり具房の父親は、反九鬼派閥を糾合することで伊勢湾の制海権を自らの手中に収めようとした。


 これに対して九鬼一族は南伊勢攻めを行った織田弾正大弼に協力。再び志摩に入ると、北畠家の息のかかった海賊衆を次々と打ち破った。海と陸から攻められた北畠家は降伏。織田弾正大弼の子を婿養子として迎えることで和睦する。


 戦後、伊勢湾の海賊衆は解体され、九鬼の傘下に下るか、他の地域に移るかの選択を強いられることになる。


 小浜民部左衛門は志摩の答志郡に本拠があった海賊であり、大型軍船である安宅船をいくつか領有する伊勢水軍の事実上の頭目であった。


 すなわち九鬼氏の政敵であり、当然のごとく志摩を追われた小浜民部は伊勢において北畠家の庇護の元で逼塞していた。


 その小浜が甲斐武田家の誘いを受けて出奔したという知らせが入ったのだ。


「今川家には伊勢水軍出身の向井兵庫助(正綱)が先に仕えていました。おそらく兵庫助の伝手を頼ったものと」

「織田掃部、前置きはいい。結論だけを申せ」


 相変わらず青ざめた表情のまま、北畠具房は唾を呑み込む。


 駿河を手中にした武田家は旧今川氏の水軍を再編。独自の水軍創設を目指している。その武田の要請を受け入れたということは、武田家との対立を深めつつある織田家に対する重大な裏切りに他ならない。


 具房は言葉を絞り出すようにして、織田掃部に確認した。


「三瀬の父上は、この一件に関わっておるのか?」

「……いまだ調査中であり断言は出来ませぬが、おそらくは」

「何ということだ……」


 具房はその巨体を脇息に預けるようにして崩れ落ちた。みしりと妙な音がしたが、それどころではない。


 現在の武田家と織田家の関係を理解出来ない父ではないし、そこまで耄碌はしていないだろう。


 つまり確信犯的に、武田家に協力したことになる。


「……誰がどこまで知っている?」

「今のところは私の手勢のみです。しかし滝川彦右衛門(一益)は敏い男。察知されるのは時間の問題かと。何より九鬼が小浜一族が伊勢から居なくなれば、彼らが気がつかぬはずがありませぬ」


 具房に負けず劣らず顔面を蒼白にした織田掃部が、言葉を震わせる。


 織田一族でありながら、かつて信長の不興を買ったことで各地を放浪していた織田掃部は、数年ほど甲斐に滞在。この間に武田家中との関係を深めた。織田家に帰参した後は武田家との取次(外交官)として永禄8年(1565年)には織田信長の養女と諏訪四朗(武田勝頼)との婚約をまとめ上げていた。


 この時は信長の義女夭折により婚姻は成立しなかったが、今でも織田掃部は織田家における武田家の専門家、言葉を悪くすれば親武田派の筆頭とみなされていた。


 それがここ数年の武田家と織田家との関係悪化により、織田掃部は織田家の中で急速に立場を悪化させていた。掃部としては武田家の実力を知るが故に融和策を主張していたのだが、それも今年に入って織田の同盟国たる徳川領へ武田家が武力侵攻したことで、完全に説得力を失った。


 失地回復を焦る織田掃部は、出向先の北畠と織田の関係強化と融和を図ることで自らの政治的な地位を回復しようとした。次期当主は織田弾正大弼の嫡男とは同腹の弟である茶筅丸であり、何の問題もなかったはずである。


 ところが三瀬御所に隠居しているはずの北畠の先代当主が、よりにもよって武田に通じたというのだ。


 これでは織田家における親武田派の筆頭である自分が疑われるのは必至。失地回復どころか自らの生命にかかわりかねない。


 それを避ける為に岐阜に報告する前に、今の北畠当主であり親織田派に軸足を移しつつあるとされる具房-同じく真っ先に粛清される可能性のある『同志』に真っ先に知らせたのだ。


「しかし、黙っておくわけにもいかぬだろう」

「恐れながら御本所様(具房)。いまだ三瀬(北畠先代当主の隠居所)の影響力は家中において軽視出来るようなものではありませぬ。確かに三瀬の一存だけで北畠一族が足並みをそろえるとは考えられませんが、安易に岐阜に相談しようものなら、叡山の二の舞です」

「そしてあまり織田派であることを鮮明にすれば…」


 具房はそれ以上の言葉を呑み込んだ。


 長野氏を粛清して乗っ取った父のことだ。必要とあれば息子である自分であろうと粛清することをためらわないだろう。しかしこのまま黙って見過ごしてよいものなのか……


 いや、よくはない。具房は直ぐに否定した。否定することが出来た。


 これまでの自分であれば、唯々諾々と父の決定に従っていたであろう。しかしこうまで織田家の実力を見せつけられた以上は、相手の力量を認めなければならない。何より先の宇佐山城攻防戦に従軍したことで父ですら成し遂げられなかった主上直々の御言葉を賜ったという自負心が、具房の決意を後押ししていた。


「だが、どうすればいい?」


 具房の問いかけに織田掃部は有効な手段を答えられなかった。


 粛清の恐怖から同じ立場の北畠一族、それも木造一族のような親織田派であることを明確にしていない当主に報告したものの、そこから先の有効な選択肢があるわけではない。そのような考えがあるのなら、自分だけでもとっくに伊勢から逃げ出している。


「御本所様。よろしいでしょうか」

「……っ!」

「……津川か。入れ」


 突如として外から聞き覚えのある声が掛かる。織田掃部は首を振って拒否することを進めたが、内心の後ろめたさを言い当てられた具房は、すでに上ずった声で入室を許可していた。。


 障子が静かに開くと、織田家から出向中の津川義冬が顔を見せた。その義冬は部屋の中に格上である織田掃部の顔を見つけると、慌てて平伏した。


「これは織田掃部様」

「よい、掃部は気にするな、要件を申せ」

「はい。実は……先触れはなかったのですが、先ほど先の管領様がこちらに到着されました」


 織田掃部が息を呑んだ音が聞こえた。


「……何の用かな?」


 具房は何とか平静を装って尋ねる。


 義冬は織田掃部に視線をやりながら答えた。


「三瀬の件だと伝えていただければわかると、御本所様だけに伝えるようにとのご伝言です」 



小浜景隆「ふはははは!あたしは故あれば寝返るのさ!」

佐治信方「これでは軍閥政治ではないか!」

九鬼嘉隆「貴様、反抗するか」


九鬼嘉隆「ぬう!村上水軍が肉眼で見えるぞ!もういい、撃て!」

真鍋貞友「あ、あと30秒……」

九鬼嘉隆「かまわん、撃てえい!」


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