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何故か王子様になって欲しいらしい

3話目です

「ここ……か?」


 先程、生徒会書記の宮本舞花と名乗る女生徒に教えられた通りに、学園内の道順を進むと、廊下の突き当たりに明らかに他の部屋とは違う、重厚な雰囲気を放つ扉が佇んでいた。


 数回ほど扉を叩く。


「―――入りなさい」


 すると重々しさのある年老いたような、しかしハッキリと芯のある若々しいような、そんな不思議な女性の声音でこちらに入室を促してくる。


 扉を開け、「失礼します」の掛け声と共に一礼、そしてその部屋へと入室した。


 正直、正しい入室の仕方など分からなかったが、それでもキチンとした所作で入らないといけないような、そんな雰囲気にさせるような声だった。


 声の主の前に立つと、彼女はゆっくりとこちらに声を掛けた。


「ようこそおいでくださいました。私が、この学園の長をしています、森永 一二美(もりなが ひふみ)といいます。」


 彼女をみて、まず最初に思った事は、学園を束ねる人物にしては見た目が若々し過ぎる事だ。

 学園創立以来40年間、学園長の座を不動のものとしているらしいが、どう見ても三十代にしか見えない。

 確かに、白髪を一括りにして前に流してはいるが、とても六十代をとうに超えたような容姿ではない。


 その姿に驚き、少しだけ会話に間が空いてしまったが、すぐさま返事をする。


「えっと、俺……じゃない、私はこの学園で3年間学ぶことになった「井出 直継様ですね?」え、あ、そうです…」


 流石に学園初の男子生徒の名前くらいは覚えられてるらしい。そうして会話のネタも無くなり、暫くの沈黙が続くと、目の前の彼女は、その若々しい目元をニッコリと細め、こう言ったのだった。





「井出 直継様。私達は、貴方を……王子様(・・・)を待っていたのです」








 この学園に来てからよく聞く『王子様』という単語。流石に気になった俺は、尋ねてみることにした。


「王子様ってどういうことですか?ここに来る途中でも何度か耳にしましたが……」


「そうですね、まずは王子様について説明をする前に……この学園が去年まで女学園だったのは、勿論知っていますよね?」


「えぇ、なんでも由緒ある名門のお嬢様学校だったとか……」


 この学園は、高貴な令嬢が多く在学する学園であり、日本中の高所得者の娘はこの学園に入学させると言われるような名門中の名門らしい(母情報)


 そんな学園に、何故男を入学させたのか、疑問が浮かぶ。


「はい、この学園は様々な淑女達をこの世に送り出してきた、由緒ある学園と自負しています………ですが……」


 そう学園長は言った後、痛ましそうな表情をして言葉を紡いだ。


「この学園を出た淑女達の中で、世間に出て悪い男に騙される……そんな娘たちが何名も現れたのです」


 世間知らず、男知らずで無垢な故に、名も知らぬ男から煽てられ乗せられて……そうして騙され涙を飲む元生徒も多いらしい。

 確かに、先程学園長室の場所を教えてくれた彼女も男性には慣れてなかったみたいだった。


「お言葉ですが……その話と王子様って何か意味があるのでしょうか?」


「それが本題です…」


 座っていた椅子から立ち上がり、外を一望できる窓の近くまでゆっくりと歩を進める。

 暫く景色を眺めた後、こちらを向き、これから三年間の行動を決めるであろう提案を口にするのであった。




「井出直継様……是非とも私の生徒が男に慣れるために、王子様になってください」




こんな稚作を読んでくださってありがとうございます。

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