何故か王子様と呼ばれているらしい
2話目です。
「あの……すみません」
「はーい……って男?!」
学園長室の場所がわからなかったので、近くにいた先輩(この学園は胸元のタイと制服の袖のラインの色で学年が分かる、学年が上がることに赤、青、黒となるらしい。因みに話しかけた先輩は青なので二年生)に道を尋ねることにしたのだが、おどろかれてしまった。
彼女は、セミロングの髪を靡かせ、こちらを振り返る。
こちらと向き合ったことで露わになった彼女の容姿は、綺麗で真っ直ぐな黒髪に、ぱっちりとした瞳、スッキリとした鼻、小振りな瑞々しい唇ととても整った姿をしていた。
こちらを見た後、何故かその大きい瞳を更に広げて俺を見上げる。
「えーっと……あ、この学園が共学化になることにあたって新しく入学した、井出って言います。」
「もしかして、噂の王子様?」
「はい?」
思わず聞き返してしまった。
王子様ってなんだよ、俺は自慢じゃないが一般家庭の出で平々凡々の容姿で、決してキラキラしたようなイケメンではない。(少なくとも、カッコイイとは生まれてから1度も言われたことは無い)
「えっと……王子様って?」
「あ、はい。この学園に新しく王子様が入学してくるって話があって……」
どこの恋愛乙女ゲームだよそれ。
状況が全く読めず立ち尽くしていると、先輩は見るからにアタフタし始めた。
「ふぁ……男の人だぁ……本物だぁ……」
「……あの」
「背が高いよぉ……声が低いよぉ……」
「……えっと」
「筋肉硬いよぉ……腹筋も……」
「ちょっと!?」
服を捲ろうと伸ばした手を咄嗟に避けた。
「あ! すみませんすみません! 思わず……」
「いや……大丈夫ですよ……ちょっとびっくりしただけで……」
いきなりの事だったので、息が乱れ、悪寒が走る。
女嫌い故の拒絶反応、今回は服越しの接触だったので、そこまで酷くは無かったみたいだ。
「そうですか……でも、ちょっと顔色悪いですよ?」
そう言って彼女は、俺の額に手を伸ばして……ちょっと!?
「だ…いじょうぶです、その、ちょっとお尋ねしたいことがあるんですけど、学園長室ってどこにあるのでしょうか?」
身を捻って手を避けると、その場を離れる為に、学園長室の場所を彼女に尋ねる。
彼女は少しだけ不思議そうな顔をしたが、俺の質問に快く答えてくれた。
「あ、はい、えっと、学園長室ですね!学園長室は、生徒玄関に入って右側に行くと教員棟に出るので、すぐ近くの階段で四階に行って、その廊下の突き当たりですよ」
「えっと……はい、わかりました。ありがとうございます、それじゃあ」
快く教えてくれた先輩にお礼をすると、直ぐに学園長室へと向かう……
「あの!」
……が、彼女に呼び止められてしまう。
「あの!……あの……わたし、生徒会の書記をやっています!二年の宮本 舞花って言います!」
「えっと?」
「あの!あの!……また会いましょう!」
「はい……?」
こうして、ちょっと不思議な可愛い先輩と別れたのだった。
……学園長室遠いなぁ。