プロローグ
初投稿です、よろしくお願いします。
雲一つ無い青空。
それに色添えるかのように舞う薄桃色の花弁が1枚、1人の男の肩に止まった。
学園の入口に立つ男はそれを―――鬱陶しそうに払う。
「憂鬱だ……」
ここ、花乱恋学園で新しい門出を迎えるには相応しくない雰囲気を漂わせている彼―――井出 直継は、ゆっくりと周りを見渡し……こっそりとため息をついた。
周りでは、新しい生活に胸をふくらませている様子の女生徒、知人に再会したのか抱き合い喜び合う女生徒、新しく友達を作る為、道行く生徒に声をかけている女生徒……。
先程から、女生徒の行動にしか目がいっていないのは、俺が女の子大好きの色ボケ男……という訳では無い。むしろ、女の子は苦手である。
「あー、何でこうなったんだろうなぁ……」
そんな、女生徒しかいない正門の前で、また一つため息をつくのであった。
事の始まりは、一年前の出来事。
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「ちょっといい? 頼みがあるんだけど……」
「なに? 都香さん」
控えめなノックと共に声を掛けてくる母の声に返事をする。
「もう、私の事はお姉さんって呼んでっていってるでしょ?」
「なに?母さん」
確かに若々しい容姿だけど、お姉さんは無いだろ……。
彼女の名前は、井出 都香 二年前に、父の再婚相手としてこの家に来た。
三十代前半の彼女は、年齢にはそぐわない若々しい容姿で、買い物なんかで一緒に出かけると、中学生半ばの俺と並んで歩いているのにも関わらずよく「お姉さんですか?」と声をかけられる。それ位若い。
俺の父は、なかなか歳をいっているのだが……どう出会ったんだろうか?
両親が並んで歩いたら、通報されそうなぐらい見た目が離れてるんだけど……。
家事終わりだったのだろうか、彼女は身にまとっていたエプロンで手を拭いながら、俺の部屋に入ってきた。
……若干不満そうな顔で。
「なおちゃんが冷たい…… イイじゃないのーそこまで歳は離れてないでしょー」
「いや、そこまでって母さん三十だ「しゃらぷ!」……」
因みに、彼女の前では年齢は禁句である。
「……で? なんか用事があったんじゃないの?」
「え? ……あぁ、そうだったわ!」
彼女は、俺の問い掛けに暫く考え込んだ後、手を合わせた。
……ついさっきの事なのに、もう歳ぼk「何考えてるの?」いやぁ、お姉さんとても若々しいっす!
「あのね!実はお願いがあって!」
「うん」
「なおちゃん、まだ志望校決めてないでしょ?」
「うん」
「実は行ってほしい高校があるのよ!」
「うん」
「女子高なんだけど、私の母校で」
「うん?」
「実は、その高校の学園長がなおちゃんに高校に来てくれないかって打診があって」
「ちょ、まって! え? 女子高?」
「ん? あぁ、女子高って言っても、『元』ね? 来年から共同校になるのよ〜」
「いや、来年からってそれほぼ女子高……っていうか!俺、女の子が苦手って知ってるよね!」
「あらあら〜」
「……」
思わず絶句してしまう。
彼女はその後も、高校の話をしていたが、殆ど頭に入ってこなかった。
「―――ってことなの。どう?」
「……あのさ」
「なぁに?」
「それって拒否することは」
「む・り・よ」
「……」
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そんなこんなで、この学園の門をくぐることになってしまった。
……別に行きたい高校があった訳じゃないけど、なんか納得できない。
「まぁいいか。……とりあえず、最初に学園長室に向かわないといけないんだよな……」
多少の不満もあるものの、このまま校門前で立ち尽くすのも周りの迷惑になるので、歩き出すことにした。
……学園長室ってどこだろう?