旅人たちの休息
「そうだったのか。うちの息子がすまないことをした。こうなっては致し方ない。君たちにも協力してもらいたい」
「はい。勿論です!」食い気味に鏡花が言う。
「お、おお、ありがとう」鏡花の勢いに圧倒されたようだ。
「いえ、こちらこそご迷惑かけてすみませんでした」
「いいんだよ。そうだ、自己紹介をしよう。私はこの家の主人で、朝日の父親の橘秀樹だ。そこにいるのは私の妻の公子だ」
「妻の公子です」笑顔がチャーミングで優しそうな女性だ。
「それと、使用人を紹介しよう。彼は菊池聡と言って偏屈なところもあるが真面目な子だよ」
「どうも、先ほどは失礼しました…」
「いえ、こちらが悪かったですのでお気になさらずに」
「続けよう。彼女は本堂孝子さん、妻の手伝いをしているお手伝いさんだ。妻よりも年齢は上だか謙虚な人だよ」
「私も先ほどは失礼を致しました。朝日さんから不審者がいると聞いたので、菊池君と見に行ったのです」
「今ここには居ないがもう一人、庭師の高山君という人もいる。彼は今、庭で花の世話をしているはずだから会ったらよろしく頼むよ」
「はい、わかりました」二人が答える。
「君達についても教えてくれないか?」
「あ、そうでした、すみません。私は橋爪鏡花と言います。乃木さんの依頼を受けて協力しています。朝日さんとは昨日知り合いました」
「ほう。依頼というと?」
「私は大学で人助けをするサークルを立ち上げています。私しかいませんが…。乃木さんからの依頼は、私にとって初めての依頼なんです」
「素晴らしいことをしているんだね」
「ありがとうございます。趣味の一環です。乃木さんどうぞ」
「はい。俺は乃木亮太といいます。朝日とは大学で知り合いました」
「聞いているよ。息子のことを心の底から友達だと思ってくれてるんだってね。息子は昔からお金持ちの息子という目でしか見られなかった。私のせいでもあるが、君みたいな友達ができて私は本当に嬉しい。ありがとう」
「いえ、そんな。ただ気が合ったから友達になった。それだけのことです」
「そうか。まぁ、自己紹介も終わったことだし、孝子さん、二人を余ってる部屋に連れて行ってもらえないか?皆んなも戻っていいぞ」
「かしこまりました、旦那様。では、お二人とも私について来てください」
「あ、その前に秀樹さん、後で脅迫状についてお話伺ってもいいですか?」
「ああ、いいよ。書斎にいるから後で来なさい」
「ありがとうございます」
「では、こちらへ」鏡花と乃木は孝子に連れられ、2階の部屋に案内された。
「乃木さんはこちらの部屋を、橋爪さんはお隣の部屋をお使いください。普段使わないので特に何もありませんが、布団などはクローゼットに有りますのでご自由にどうぞ」
「ご丁寧にありがとうございます」
「鍵はこちらになります。何かあれば私に申し付けてください」そう言うと、孝子は一階へ降りて行った。その姿を見送り二人は部屋の鍵を開ける。
「あ、そうです。荷物を置いたら乃木さんも一緒に聞きに行きましょう。私は少し準備があるので、準備ができたら呼びに行きますね」
「わかりました。また、後で」
鏡花と乃木はそれぞれの準備を済ます。この先に起こる事件に向けて。