金糸雀古城殺人事件3
次の日の朝、乃木の携帯に連絡があった。
「鏡花か?」乃木が携帯を開くと送り主は鏡花ではなく、小春だった。
『乃木さん、鏡花さんから何か連絡来てませんか?』
「どう言うことだ?」
『いや、来てないな。まだ朝だしもう少し待ってみよう』
すぐに返信が来た。
『違うんです。昨日私、鏡花さんに連絡を入れたんです。でも、一向に返ってくる気配がなくて。なんかおかしいなって』
『どんくらい返ってこないんだ?』
『昨日の昼からです』
確かに変だ。
『俺も連絡してみる。何かあったら言うよ。取り敢えず、今日の講義が終わったら一度部室に来て』
『わかりました。ありがとうございます。何もなければいいんですけど』
「そうだよな。どうしたんだあいつ…」
乃木は講義中も鏡花の事が気になっていた。
授業が終わるとすぐに乃木は部室へ向かう。部室に明かりはない。
「小春ちゃんはまだ来てないのか」乃木は部屋に入り椅子に腰を掛けると、深く考え始めた。数十分経っただろうか、どこからか聞こえる廊下を走る音が大きくなる。その音が部屋の前で止まると勢いよくドアが開いた。
「遅くなってすみません!」
「そんな急いでどうしたんだ?」
「実はさっき有力な情報を手に入れたんです。鏡花さんを見たって言う人がいるんです!!」
「えっ!本当か?いつ!?どこで!?」
「落ち着いてください!連れて来ましたから!もうすぐくると思います!」小春は息を切らして言う。
「小春ちゃん、ナイスだ!」
すぐにドアが開く。
「あの、小春ちゃん?」大学生にしては少し小柄な女性が覗き込む。
「あ、幸子ちゃん、入って。ありがとね。乃木さん、この子がさっき言った鏡花さんを見たって言う」
「ありがとう!早速だけどごめん、いつ、どこで見たんだ?」
「えっえっ、あ」幸子はあたふたしている。
「乃木さん落ち着いてください。そんなに一気に聞いてもダメです。順序立てて聞きましょう。取り敢えず、冷静になってください」
「あっ、悪い……」乃木は正気になる。
「じゃあ、幸子ちゃんまずいつ鏡花さんを見たのか教えてもらってもいい?」
「う、うん。私、隣町から自転車で大学まで来てるんだけど昨日学校に来る途中で、商店街を一人で歩いてるのを見たんだ。橋爪さんも乃木さんも小春ちゃんもこの大学では有名だから…」
「俺ら有名だったのか…あ、そんなことより、それって本当に鏡花だったのか?」
「多分そうだと思います。でも、なんで隣町になんていたんでしょうか。講義がある時間なのに」
「幸子ちゃん、それは」
「幸子ちゃん、ありがとう!」乃木は小春の言葉を遮るように言う。
「小春ちゃん、行くよ」
乃木は小春の手を引っ張って部屋を飛び出した。
「乃木さん、待ってください!どうしたんですか!?」小春は手を振り払う。
「どうしたんですか?乃木さん…」
「……………」
「心配なんですよね?」
「ああ……なんか嫌な予感がするんだよ」
「わかります。でも、焦っても仕方ありません。私たちはヘルプです。鏡花さんが事件を解決して来たのを見てきました。私たちだってできます!もしかしたら、勘違いかと知れないですし…」
「小春ちゃん、今回は俺の勘が言ってるんだ。何か嫌な予感がするって。だから、一緒に来て欲しいんだ。久方邸、あの丘に聳える金糸雀城に」
「わかりました。乃木さんを信じます。もし、勘違いだったらそれでいいし、もし何かあったのなら私たちでなんとかしましょう!幸子ちゃんが見たのが本当鏡花さんなら、隣町にいたのも久方邸に行くためだったのかもしれませんし」
乃木と小春はすぐに大学を出発した。




