日本神話殺人事件19
「ただいま!」
「おかえり」鏡花の声に反応して、鏡花の祖母が玄関に来る。
「おじいちゃんは?」
「居間にいるよ。早く上がりなさい」優しい表情で迎えてくれた。
鏡花たちが今に行くと、『きさらづ会』の柴田と江畑もそこにいた。
「あ、鏡花ちゃん、事件はどうなったの?」
鏡花は事件の経緯や、犯人が同じ『きさらづ』会の河本と信濃であったことなどを簡単に説明した。
「そう…」鏡花の祖父母を含め、全員が暗い顔をしている。
「鏡花もお友達さんも疲れただろう?近くの銭湯にでも行って疲れを癒してくるといいよ」
「うん。わかった」
鏡花たちは勧められるがままに銭湯へ行った。
「じゃあ、またあとでな」
「乃木さん、覗かないで下さいよ」
「修学旅行か」
「え?修学旅行だったら覗いてたんですか?」鏡花と小春は若干引いている。
「ま、まて、語弊がある。これはある種のツッコミであって…」
見ると、二人は笑いを堪えている。
「お前ら!」
「すみません」鏡花と小春は女湯に逃げ込んだ。
「まったく…」乃木も男湯に入る。
時間が早いのか、銭湯は貸切状態だ。
「鏡花さん、お背中流しますよ」
「ありがとうございます。流し合いましょうか」
「いいんですか!?」
「えっ?だめですか?」
「そんなことありません!お願いします」
小春は鏡花の背中を洗う。
「鏡花さん」
「なんですか?小春さん」
「やっぱり、今回の事件の動機が気になります」
「後日お話しできると思います。平島警部の方から教えて頂けると思っています」
「わかりました」
「でも、河本さんも友美さんも殺したいほど憎んでいたってことですよね?」
「そうですね」
「私にはまだ理解できません。人を嫌いになっても、殺意が湧くほどに憎いと思ったことはないですから…」
「それでいいんですよ。人が人を憎んでもいい結果にはなりません。私たちは機械ではないので、まったく同じ人間はいないんですよ。その中で私たちができることは、傷つけ合うことではなく、互いに尊重し合うことなんです。どんな理由があっても、人が人を殺していい理由にはなりませんから」
「鏡花さん…」
鏡花と小春が風呂から出ると、乃木は既に椅子に座って寝ていた。
「乃木さん、上がりましたよ」小春は乃木の方を揺らす。
「ん…」乃木は目を擦り、欠伸をする。
「おお、上がったのか」
「だいぶお疲れのようですね」
「あ、悪い。一番疲れてるのはお前なのにな」
「いえ、そんことはありません。乃木さんも小春さんもお疲れになっているはずです」
「そうか、そう言ってもらえると助かるよ」乃木は立ち上がる。
「そうだ、お茶しに行きましょう。おいしいケーキの出るお店があるんです」
「そうなんですか!?行きたいです!」
「じゃあ、行くか!」




