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日本神話殺人事件14

 吾妻神社を任された乃木と小春は調査を開始する。神社には、まだ『keep out』の文字が書かれたテープが貼ってあったが、警察の姿は少ない。調べ尽くしたのだろう。

 乃木と小春は神社の前まで来ている。

「人が少ないな」

「人が亡くなってますからね。警察も調べ尽くしたんだと思います。何か残っていますかね?」

「何か重要な手掛かりが残ってれば警察も犯人に辿り着いてるだろうな。でも、まだ事件が解決していないってことはここでは重要な手掛かりが見つからなかったってことなんだろう」

「だったら、ここで調べることはないんじゃないですか?」

「そうかもしれないけど、鏡花が意味もなく調べろなんて言うと思うか?」

「思いません」

「つまり、そういうことだ。それに、あいつは既に何かを掴んでいる」

「何をです?」

「わからない。証拠がないのが証拠らしい」

「証拠がないのが証拠?」小春は理解に苦しんでいる。

「俺もわからない。でも、あいつはそのトリックでは証拠が残らないって言ってた」

「うーん、私には見当も付きません。とりあえず、調べてみましょうか」

「ああ」

 乃木と小春は神社の敷地内に入った。すると、警備をしていた警察官に呼び止められる。

「そこの君たち!勝手に入っちゃだめだ」規制線の前に立っていた警察官が歩いてくる。

「やべ!」思わず乃木は声を出す。

「怪しいな。どうしてこの神社に?」

「いや、その…」乃木が言葉に詰まっていると、

「私たち、平島警部に頼まれて来たんです」小春がハッタリをかます。

「何をだ?」

「極秘に捜査したいそうなので言えないそうです」

「なんだそれは?本当に頼まれたのか?」

「本当ですよ!私たちを使ったのは、警察内部では情報を共有しなければならないからです。まだ、確信がないそうなので言いたくないと…」

にわかに信じ難いな…しかし、君たちどこかで見たような」その警察官は首を傾げ、考える。

「あ!昨日の朝、この現場に居た子じゃないか?」

「はい、居ました」

「なにやら警部が信頼を置いていたように見えたな。警部が信頼するようならば、いいだろう。だけど、現場を荒らさないでくれよ。それと、用が済んだらすぐに出て行くように。俺が何を言われるかわからない」

「ありがとうございます!」乃木と小春はお礼を言って中に入る。

「あとで警部に連絡を取ってみよう」警察官は乃木と小春を見送る。

 二人はまっすぐに鏡ヶ池に向かう。鏡ヶ池周辺には、被害者の遺品が落ちていたと思われる場所に線が書いてあったが、物品などはすべて回収されてしまっている。

「やっぱ、証拠品は全部回収されてるよな…」

「指紋なども採っているかもですね」水車のレバーを見ている小春が言う。

「どういうことだ?」

「こっち来てください」

 乃木がレバーの方に行くと、小春がレバーに付着した粉を指す。

「この白い粉って、鑑識の人が指紋を採るときに使うあれですよね?」

「確かに、よく気が付いたな」

「えへへ」小春は嬉しそうな、照れくさそうな顔をしている。

「いや、証拠がないことを証明しただけじゃんかよ」

「いえ、証拠がないことが証拠になる時もあるんでしょ?」

「まぁ、そうだけど…」

「つまりです、この池に水を張るにはこのレバーを使わなければなりません。でも、指紋が残ってないということは、犯人は手袋を着けていたということではないですか?」

「そうだな。確かに些細なことだけど、材料にはなるかもしれない」

「そうです!鏡花さんの助けになるなら、どんな些細な証拠でもいいです」

「ああ、わかった。俺は神主さんにもう一度話を聞いてくる。小春ちゃんはここで証拠集めしててくれ」

「わかりました」

 乃木は拝殿の前へ行き、神主を探す。

「普通に考えたら、あの人は別のところで殺害されたはずだよね…神社の外にもなにかあるかも」

 小春は外に出て、神社の周辺も隈なく探し始める。

「あれ、こんなところで何しているの?」

「えっ?」小春が後ろを振り返ると、信濃が立っていた。

「友美さん?」

「ええ」信濃は小春の方を見て微笑んでいる。

「あ、お恥ずかしいところを…」四つん這いで証拠を探していた小春はすぐに立ち、土を払い落とす。

「それで、何をしていたの?」

「えっと、事件の調査です」

「何か見つかった?」

「いえ、大した証拠は得られていません」

「そうなんだ」

「あの、友美さんと河本さんって結構一緒に居ることが多いですけど、お付き合いされてるんですか?」

「えっ!?い、いや、付き合ってはないよ。ほら、フリーライターだから一緒に行動することが多くて」突然のことに慌てふためいてる。

「あ、そうだったんですね。すみません」

「いいの、気にしないで」

「丁度いい機会なのでお尋ねしたいことがあるんですけど、いいですか?」小春は鞄から手帳を取り出す。

「何?」

「えっと、こんなことを聞くのは気が引けるのですけど、清志さんの殺害された時、どこに居ましたか?」

「家に居たわよ。テレビを見てたからその内容を言えば、信じてもらえるかしら?」

「あ、疑っているわけじゃ…疑っているんですけど…」

「そうだよね。やっぱ私も容疑者の一人だよね。でも、なんで清志が殺されなくちゃいけなかったんだろう。それに、藍華まで…」信濃は今にも泣きそうな顔をしている。

「ああ、ごめんなさい。デリカシーのないことを…」

「ううん、いいの。じゃあ、私行くね」暗い顔をしながら去って行った。

「はい…」



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