日本神話殺人事件7
「ちっ、漸く来たか。こんなとこに呼び出して何の用…うっ!」
「 ………」
「ど、どういうことだ…よ」
バタッ
「………」
朝が来た。雲ひとつない夏の空は、青春を彷彿とさせる。
「おはようございますぅ…」相変わらず鏡花は朝に弱い。
「あ、鏡花さん、おはようございます。寝癖付いていますよ」小春は鏡花の寝癖を直すように手櫛で解かす。
「ありがとうございます、小春さん」
「か、かわいい」小春はペットの頭を撫でるようにする。
「小春ちゃん、よせって」
「羨ましいんですか?」小春お得意の笑みを浮かべている。
「そ、それは…」乃木は理性を抑え、手を握りしめる。
「ダメですよ」
「くっ…」乃木は悔しそうな表情を浮かべる。
そのようなやり取りをしていると、鏡花の祖母が朝ご飯を運んで来た。
「あ、俺たち運びますよ」乃木が直ぐに駆け寄り、食器を受け取る。
朝食を食べ終えると、玄関の方から声がした。
「すみませーん」
「あれ?まだ、九時までは少し時間があるようですが…」鏡花は疑問に思いながら玄関へ向かう。
「あの、今日宝探しに参加する予定のものなんですけど…」玄関には一人の女性が立っていた。
「えっと…」
「あら?あなたは昨日の」
「あ!太田山公園で写真を撮って頂いた」
「そうよ。あなた、ここに住んでいるの?」
「はい。橋爪鏡花と言います。ここは私の祖父母の家であり、私の実家でもあるんです」
「私は寺門藍華よ。ところで、他に誰か来ていないかしら?」
「いえ、あなたが最初ですが。九時に河本さんと信濃さんが来るはずです」
「そうなのね」
「中でお待ちになってください」
「いいの?」
「ええ、もう直他の人も来るのではないでしょうか?」
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわね」
鏡花は居間に藍華を通す。
「乃木さん、小春さん、こちら寺門藍華さんです」鏡花は乃木と小春に紹介する。
「今日はよろしくね」
「あ!昨日のお姉さん!」
「あら、あなたたちも一緒だったのね」
「他の二人の男性はどうしたんですか?」乃木が質問する。
「後から来ると思うわ」藍華がそう言うと、玄関の戸を引く音が聞こえた。
「誰か来ましたね」
「すみませーん。河本です!」
「河本くんね。私が行くわ」藍華は玄関へ向かう。
「あ、藍華、もう来てたのか!」
「隆彦も友美も遅いじゃない。私が一番乗りよ」
「そうは言っても約束の九時三分前よ。藍華はいつも時間より前に来るよね。そこがあんたのいいとこでもあるけど」
「友美だって、昔から几帳面だったでしょ?」話に花が咲いている。
「仲良さそうだな、あの人たち」その様子を見ていた乃木が言う。
「いい事じゃないですか。他の男の人たちが気になりますけどね」小春も少し安心したようだ。
「藍華、清志と拓也はまだ来てないのか?」
「そうなのよね」
その時、河本と信濃の後ろから声が聞こえた。
「俺ならいるぞ…」トーンの低い声が聞こえる。
「うわっ!」河本たちは突然現れた男に驚く。
「拓也、いつからいたんだよ?」
「今さっきさ…。本当は河本と友美の後ろを歩いてたんだ」
「そうだったの?話しかけてくれればいいのに」
「お前ら仲良いから邪魔しちゃいけないと思って…」
「変なとこで気を使うの変わってないね」
「清志はまだ来ていないのか…?約束の九時だぞ」
「藍華、連絡取れないか?」
「わかったわ」藍華はポケットから携帯を取り出し、電話を掛ける。
…………
「だめ、出ないわ」
「寝てんのか?」
「あと少し待って来なかったら、置いて行こう」信濃は少し怒ったような口調で言う。
「あ、鏡花ちゃんたち、ごめんね」扉の隙間から覗いていた鏡花たちに河本が言う。
「あ!大丈夫です…」
「あと、五分してなんの連絡も取れないようだったら、このまま進めよう」
「はい」鏡花は扉をそっと閉める。
「なんで、扉閉めるんだよ」
「あ、いえ、なんとなく…」
「それよりも今いない清志っていう人、昨日私が藍華さんに写真をお願いした時に、断った人ですよね?」
「ああ、あの、少し強面の人か」
「おそらくは」
「まぁ、寝坊だろう。それにいなくてよかったんじゃないのか?」
「確かに、私も少し怖かったですもん。ね、鏡花さん」
「………」
「鏡花さん?」
「お前、また何か考えていたな?」
「え、何故そう思われるんです?」
「何度も一緒に修羅場を潜って来てんだ。お前が沈黙してる時は、何かを考えてる時だってことくらいわかる」
「私のことよく見てくれているんですね」
「だって乃木さんは鏡花さんのこと。はっ」そこまで言いかけて、小春は自分の口を押さえた。
「私のこと、何ですか?」
「い、いや、何でもない。ほら準備しろよ」乃木はお茶を濁す。
数分が経ち、河本が出発を決める。玄関に一同が集まり、河本が段取りを説明する。
「みんな待たせてごめん。清志の奴とは連絡が取れないようだから、このメンバーで行こう。あと、さっき柴田さんから連絡があって江畑さんと一緒に午後から参加できるかもしれないとのことだ」
「柴田さんって?」
「柴田さんと江畑さんは『きさらづ会』のメンバーだよ。二人とも五十代くらいの女性だよ」
「へぇ、その『きさらづ会』って、結構年齢バラバラなのね」
「そうだよ。メンバーは他にもいるから鏡花ちゃんたちも知らない人がいるんじゃないかな?」
「そうなんですね」
「本題だけど、午前中は吾妻神社と八剱八幡神社を回って雰囲気を出そうと思う。それで、午後は太田山公園できみさらずタワーを見てから、太田山で宝探しをしようと思う。いいかい?」
「いよいよね。私たちはやるからには絶対に見つけるわ!」藍華は今になくやる気だ。
「じゃあ、行こうか」




