日本神話殺人事件6
鏡花が玄関に行く。
「どうされたんですか?」
「会長に用事があってね。いる?」
「はい。しかし、祖父は今体調を崩しているので…」
「えっ!?なんだって!会長は?」
「そちらの部屋で横になっていますが…」鏡花が指をさす。
「ちょっと失礼するよ」河本は靴を脱いで上がり込み、鏡花の祖父が寝ている部屋へ足を運ぶ。
「会長!どうしたんですか!?」
「騒々しい。もう少し静かにできんか」
「あ、すみません…」河本は少し小さくなった。
「わしなら大丈夫じゃ。ちょっとした風邪じゃ」
「それでしたら、明日の宝探しには参加できませんね…」
「そうじゃな…さっき、孫に散々釘を刺されたところじゃ」
「そうだったんですか…会長もお年なんですから休んでくださいよ。明日の宝探しには僕の友人も参加したいとのことなので、少しは盛り上がると思います」
「そうか、後のことは鏡花に任せるぞい。わしは少し寝る」そう言って、寝てしまった。
「河本さん、そういうことですので寝かせてあげてもらえませんか?」
「わかった」
「明日のことは隣の居間でお話ししましょう。乃木さんと小春さんも一緒にお願いします」
「ああ」
鏡花たちは居間に移動する。鏡花の祖母がお茶を出してくれ、一息つくと河本が段取りを説明する。
「明日は朝の九時から始めるよ。参加者は君たちと僕と友美、それとさっき言ったけど僕の友人三人も参加する予定だ。まず、午前中に吾妻神社と八剱八幡神社を回って、午後に太田山公園に行く。それで太田山の一画で宝探しをしようと思う。事前に許可は得てるから、法律上の問題はないよ」
「検討が付いているんですか?」
「学者の戯言さ」河本は鼻で笑うように言った。
「そうなんですか…」乃木はがっかりしている。
「まぁ、その学者曰く、平地は住宅街になってるからそこに何かがあるんだったら下地調査やボーリングの時点で発見されてるはず、だとするならば遙か昔より姿を変えることのない山が怪しいって論理らしいよ」
「へぇー…」乃木は完全に信用していない。
「ま、まぁまぁ、夏休みの思い出だと思えばいいじゃないですか」すかさず小春がフォローを入れる。
「ところで河本さんのご友人は、何故このような信憑性の薄い話に乗ろうと思ったのでしょう?」
「さぁ、彼らなりに何か根拠でもあるんじゃないかな?」
「彼らと言うと、そのご友人は複数人で男性なのですか?」
「男二人に女一人だよ。学生時代のサークルの仲間でね」
「そうだったのですね」鏡花は納得した様子だ。
「じゃあ、僕はこれで失礼するよ。明日の九時に迎えに来るから待っててくれ」
「わかりました」
河本は去って行った。
「明日の宝探し、楽しみですね」いつになく鏡花は興味を示している。
「そうか?」鏡花とは対照に乃木と小春はあまり乗り気じゃない。
「絶対財宝なんて見つかりっこないですよ。鏡花さんは何がそんなに楽しいんですか?」
「この世界に絶対なんてことはありません。それに、私が楽しみにしているのは宝探しだけありませんから」鏡花は何かに感づいているらしい。




