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日本神話殺人事件5

午後三時、鏡花たちは太田山公園、きみさらずタワーの前で上を見上げている。きみさらずタワーは途中まで登れるようになっており、何人か上っている人の姿もある。

「木更津の名前の由来には日本武尊の歌による説と、もう一つ、弟橘媛を失った日本武尊が太田山から海を見下ろし、しばらくの間この地を去らなかったことから『君去らず』と言うようになったとも言われています」

「ふーん」乃木はタワーの上の日本武尊像と弟橘媛像を見上げている。

 パシャ

「えっ!?」

 鏡花と乃木が視線を戻すと、小春がニヤニヤしながら写真を撮っている。

「乃木さん、後で送っておきますね」

「な、何のことだよ」乃木はしらばっくれているが、親指を立てグッジョブサインを送っている。

「そうだ!皆さんで一緒に撮りましょう」

「撮りましょう!」

 小春は近くにいた三人組の若者に声をかける。

「あの、すみません」

「なにかしら?」女性がこちらを向き、答える。

「写真をお願いしたいんですが、いいですか?」

「忙しいんだ、他を当たってくれ」一緒にいた男性が口を挟む。

「あ…」

「清志、いいでしょ。すぐ終わるわよ」

「ちっ!」人相の悪いその男性は舌打ちをする。

「ごめんなさいね。気を悪くしないでね」

「いえ…」

「携帯貸してもらえる?」

「はい。ここでお願いします」

 鏡花たちはきみさらずタワーの前に並ぶ。

「じゃあ、いくわよ」

 パシャ

「これでいいかしら?」きみさらずタワーを背景に三人が並んでいる。

「はい。ありがとうございます。すみませんでした」

「いいのよ。こちらこそ、ごめんね」そう言い、女性は他の二人と合流し去って行った。

「なーんか、他のふたりの男は感じ悪かったな」

「まぁ、写真撮ってくれた女性はいい人でよかったですね」

「そうだな」

 その時、鏡花の携帯電話が鳴る。

「あ、実家からです。祖母かもしれません。少し、失礼しますね」

ピッ

「もしもし、おばあちゃん?…………うん……えっ!大丈夫なの?……わかった。すぐ戻るね」

 鏡花は電話を切る。

「どうしたんだ?」

「祖父が少し体調を崩したそうです…」

「じゃあ、すぐに戻らないと!」

「はい」

鏡花たちはすぐに太田山公園を出発する。

鏡花は家に着くと、すぐに祖父の寝ている部屋へ向かった。

「おじいちゃん!」

「鏡花、おかえり」

「おばあちゃん、おじいちゃんの様子は?」

「そんな心配しなくてもいいのよ。ちょっと体調を崩してるだけだから」

「そっか、よかったぁ」鏡花は肩の力が抜けたようだ。

「でも、これじゃあ明日の宝探しには参加できそうにないよな…」

「当たり前です。もし、参加すると言っても私がさせません」

「ごめんね、鏡花…」

「おばあちゃんが謝ることじゃないよ。私はいつまでも元気でいて欲しいから…」物憂げな表情を浮かべている。

「お二人とも鏡花のことをよろしくね」

「は、はい!任せてください!鏡花さんのことは命に代えても守る、と乃木さんが言っていました」

「お、おい!」

「えっ?違うんですか?」

「違くないけど…って、何言わせてんだよ」

「くすくす」

鏡花は口に手を当てて笑っている。

「なんだよ」

「いえ、私が落ち込んでいる時、お二人はいつも笑わせてくれるので」

乃木と小春は顔を向き合わせる。

「ぷっ、はははは」

「なんですか?」

「いや、お前はそうでないとな。お前が落ち込んでるなら俺たちは励ますだけだ」

「なんじゃ、騒々しい」鏡花の祖父が目を覚ました。

「おじいちゃん!大丈夫?」

「大したことじゃないじゃろ。ただの風邪じゃ」

「そうかもしれないけど、ただの風邪が大事になることもあるんだよ!」

「わ、わかった。安静にしておるから、そう声を張り上げるな」鏡花の真剣な眼差しに圧倒されている。

「明日の宝探しには参加しちゃだめだよ」

「なんじゃと?」

「絶対にだめだよ!」

「いや、しかし、『きさらづ会』の会長として…」

「だーめ!これ以上おばあちゃんに心配をかけないで」

「う、うむ…」

「おばあちゃん、監視よろしくね」

「わかったよ」鏡花の祖母は笑顔で頷く。

その時、玄関の方から呼びかける声がした。

「すみませーん。河本です!」

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