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日本神話殺人事件4

 鏡花たちは東京湾に来ている。

「東京湾をこっちから見ると、また違うな」

「弟橘媛の袖はどこらへんに着いたんでしょうかね?」

「そうですね、今では干拓もされ、当時の地形とは大幅に違うでしょうから特定はできませんね。しかしながら、遠い昔に日本武尊が歩いていたのだと思うと、何やら過去に戻ったような感覚になりますね」

「そうだな。この辺だと結構静かだし、風も気持ちいいしな」

「東京の方は見えないんですね」

「確かに。うっすらと見えるような気もするけど、広いんだな東京湾って」

「ええ、アクアラインがおよそ十五キロメートルですので、向こう岸までは十キロメートル以上あるでしょうから、肉眼で東京を目視するのは難しいでしょうね」

 風を感じていると、小春のお腹が鳴った。

「あ、ごめんなさい…」

「そろそろお昼ですね。折角ですから海鮮丼でも食べに行きましょうか」

「賛成です!」

「そうだな。ここらへんで店を探そう」

 三人は中心街へ戻り、入った店で昼食を取る。

「すみません。海鮮丼3つお願いします」

「かしこまりました」

 注文を待つ間に宝探しの話になる。

「なぁ、宝なんてあるのか?」

「さぁ、わかりません。ただ、私が見つけられるような宝ならとっくに他に誰かが見つけているはずですよね。宝の存在の有無を問わず、私が見つけることはないと思います」

「だよな…じゃあ、なんたってこんな依頼を受けたんだよ?」

「ええ、折角戻ってきたんです、皆さんと楽しみたいじゃないですか」

「そうですよね!私も鏡花さんと夏の思い出を作れて嬉しいです」

 そのような話をしていると、店員が海鮮丼を運んできた。

「お待たせいたしました。海鮮丼です。こちらの特製ダレをつけて召し上がってください」

「ありがとうございます」

「わぁ、おいしそうですね」

「はい。房総半島と言えば海鮮丼ですからね」

「いただきます!」

 三人は海鮮丼を堪能し、店を後にする。

「はぁ、食ったな。次はどうするんだ?」

「木更津へ戻りましょうか。そちらの方が見る場所がたくさんありますからね」

 再び木更津へと帰還する。まず、鏡花たちが向かったのは吾妻神社だった。

「鏡花、ここは?」

「吾妻神社です。案内板がありますから見ましょうか」鏡花は案内板を読む。

「昔、ここを吾妻の森といった頃、森を中心に小池があり、これを「鏡ヶ池」と呼んで居りました。

これも日本武尊の悲しい物語に由来するものと思われます。社伝にも日本武尊御東征のみぎり相模から上総へ渡ろうとした時、海上にわかに荒れ海に身を投じた姫のお袖が数日後、この近くの海岸に漂着したのでこれを納めて吾妻神社を建てたそうです」

「じゃあ、ここも日本武尊と弟橘媛とゆかりの深い場所なんだな」

「そうですね。ご神体が弟橘媛の櫛だそうです」

「へぇ、ご神木とかなら聞くけど、櫛がご神体っていうのは面白いな」

「あれ?」

「小春ちゃん、どうした?」

「いえ、あそこにいる二人組の人って、さっき鏡花さんの実家にいた『きさらづ会』の人じゃないですか?」

「あ、あのライターの人だよな?えっと、名前は…」

「河本さんと信濃さんでしたね」

「そうそう。何してんだ?」

 鏡花たちが河本と信濃を見ていると、河本がこちらに気付き歩いてきた。

「あれ?鏡花ちゃんとお友達じゃないか。どうしたんだいこんなところで」

「こんにちわ。予習みたいなものですよ」

「そうなんだ。僕たちも同じようなものだよ。な、友美?」

「え、そ、そうね。明日の宝探しが楽しみで事前調査をしてたのよ」

「そうだったんですか」

「お二人はどこを回っているんですか?」乃木が質問する。

「僕たちはまだここしか来てないんだ。これから他の場所も回るつもりだよ」

「そうなんですね。わかりました」

「じゃあ、僕たちはこれで失礼するよ」

「はい。また明日」

 河本と信濃は入り口の方へ去って行った。

「…………」鏡花は二人の後姿を見つめている。

「おーい、鏡花、どうした?」

「えっ!?」

「どうしたんだ、固まって」

「いえ、なんでもありません。少し黄昏たそがれていただけです」

「そうか、ならいいんだけど」

「案内板にあった鏡ヶ池を見に行きませんか?」小春が催促する。

「そうだな。案内図によるとあっちの方か」乃木が指を指す。

 池の真ん中には岩が一つ置いてある。

「これが鏡ヶ池だな」

 またも鏡花は案内板の前にいる。

「ふむふむ、かつてこの場所には吾妻の森があったそうですね。その森の中心に池があり、日本武尊やその従者たちはその池の水を飲んだりしたようです。また、弟橘媛が使用していた鏡を沈めた場所として伝えられていることから、『鏡ヶ池』と言われているそうです。現在のこの池は当時のものを修復したものだそうですね」

「弟橘媛はどんな鏡を使っていたんでしょうかね?」

「小春ちゃんも女の子だね。昔の人の手鏡とか気になるんだ」

「どういう意味ですか?気になるじゃないですか。乙女のたしなみとして」

「深い意味はないよ」

「ですが、日本武尊の物語は悲話の方が目立ってしまうのでしょうね。弟橘媛を思って日本武尊が鏡を吾妻の森の池に落したのでしょう。木更津はそのような場所なのかもしれません」

「でも、日本武尊はそれだけ弟橘媛のことを愛していたんですよね。だったら、それは弟橘媛への愛の深さを語った美話とも言えませんか?」

「小春ちゃん、いいこと言うね」

「そうですね!小春さんはポジティブなんですね!」

「いえいえ、私は鏡花さんに笑っていて欲しいですから…」

「おし!次行こうぜ!」

「はい!次は太田山公園ですね」


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