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日本神話殺人事件2

「わぁー、なんか都会に来た感じです!」小春は車窓から外を眺めながらはしゃいでいる。

「東京はもっと都会だぞ」

「知ってますよ。流石の私でも東京には行ったことあります。でも、大学の近くとかと比べるとここでさえも都会に感じてしまいます」

「そうですね」

「あの、鏡花さん」

「なんでしょうか?」

「ご実家から東京はすぐ近くなのにどうしてあの大学に?」

「………」

「小春ちゃん、それは…」

「乃木さん、お気になさらないでください。実は実家と言っても、今は母型の祖父母が住んでいる家なんですよ。乃木さんは知っていると思いますが、私は中学生の時に母を亡くしています」

「ああ…」

「私は小学生の時に、木更津の家から現在住んでいる場所に引っ越しました。ですから、向こうに住んでいる期間の方が長いんですよ。母を亡くしてからは、父が男手一つで私を育ててくれました。父は現在単身赴任という形なので私は一人暮らしをしているのです」

「すみません…」小春は俯いている。

「やめてください、小春さん、私は気にしていませんから」

「そうだよ、小春ちゃん。こいつは過去と向き合って、一歩踏み出したんだ」

「はい、その通りです。ですので大丈夫ですよ。あ、次のバス停で降りますよ」鏡花はボタンを押す。

三人はバスを降り、鏡花の祖父母が住んでいる家へ向かう。

「依頼が済みましたら、観光でもどうですか?どうせなら東京にも行きませんか?」

「いいですね!」

「そうだな」

(あぜ)道を歩いていると、田んぼで農作業をしている夫婦が声をかけて来た。

「鏡花ちゃん?」

「えっ!?酒井のおばさんとおじさん?」

「そうよ。久しぶりね。こっち帰って来てたの?」

「はい。少し用事がありまして」

「鏡花ちゃん、大きくなったなー。向こう行ってからは殆ど来てなかったろ?」

「すみません。いろいろとありまして、こちらには殆ど戻れませんでした」

「そういえば、そうだったな…」

「あなた、そのことは…」

「いえ、いいんです。昔のことですから。それにこちらにいる方たちのおかげで私は前に進めましたから!」

「そうだったの。偉いわ。ところでそちらの人たちは?」

「あ、私は高島小春といいます。鏡花さんの後輩で、ある出来事がキッカケで私も人助けをしています」

「乃木亮太です。鏡花とは同級生で、俺も鏡花に助けてもらったことがあって、それで鏡花の手伝いをしています」

「いいお友達ができたのね」

「はい!」

「そういえば、ついさっき橋爪さんの家に『きさらず会』の人たちが集まってたな」

「もうですか。私たちも今から向かうところです」

「またね」

「はい」

鏡花たちはその場を後にする。

「なぁ、『きさらづ会』って?」

「木更津を盛り上げるために、地元の人たちで結成された団体です。そして、今回の依頼主でもあります。小学生の時、私も何度か参加させていただいたのですが、長い間ご無沙汰だったので連絡があった時は驚きました。私の祖父が会長を務めているんですよ」

「そうなんですかぁ。何をする団体なんです?」

「いろいろな活動をしていましたけど、私が参加したのは財宝探しですかね?」

「財宝!?」

「はい。もう、十年以上も前の話ですのであまり覚えていませんが…」

「なんか楽しそうな団体だな」

「そうですね。年齢などもまばらですし、いろいろな人がいますね。あ、見えてきましたよ。あそこにある道路に面した家が祖父母の家です」

鏡花が指した方向にはその一軒しかなく、入り口には『きさらづ会館』と書かれていた。

家の玄関近くまで行くと、なにやら話し声が聞こえる。

「おばあちゃん、おじいちゃん、ただいま!」

鏡花がそう言うと奥から老人が出てきた。

「おや、鏡花、おかえり。その子たちがお友達かい?」柔らかい声をしている。

「うん。そうだよ。それより、声がするけどもう来てるの?」

「さっき来たんだよ。みんな待ってるから居間に来なさい」

「うん。わかった」鏡花は靴を脱ぎ、家へ上がる。

「……」

「みなさん、どうされたんですか?どうぞ、お上がりください」

「お、おう」乃木と小春は荘厳な雰囲気に圧倒されつつ、家へ上がる。

声のする方へ行くと、広い和室に五人ほどの人がいた。

「鏡花ちゃん、久しぶりじゃない!」五十代くらいの眼鏡を掛けた女性が話しかけてきた。

「えっと…」

「十年近くも前だものね、覚えていなくても仕方ないわ」

「すみません」

「いいのよ。ほら、小学生の頃よく鏡花ちゃん私の畑のトマト美味しいって言ってくれてたじゃない」

「トマト…あ!柴田さん!?」

「そうよー。思い出しくれて嬉しいわ」

「あんた、この子知っているのかい?」隣にいた同じくらいの年齢の女性が言う。

「橋爪さんのお孫さんだよ。江畑さんは鏡花ちゃんが引っ越した後に『きさらづ会』に入ったから知らなかったんだね」

「おや、会長のお孫さんなのかい!?」

「言ってなかったかな?この子はわしの孫さ」一番年が上と思われる男性が言う。

「鏡花もお友達もそこへ座ってどうぞ」鏡花の祖母に促される。

「あ、失礼します」乃木と小春は用意された座布団に正座する。

「会長のお孫さん、綺麗な子じゃないですか」そう言う男性は、鏡花たちより少し年齢が上のように思われるが、その会においてはとても若い。

「あ、ありがとうございます…」

「あ、これは申し遅れました。僕は半年くらい前にこの『きさらづ会』に入った、河本隆彦(こうもとたかひこ)といいます。二十六歳だから、君たちよりも少し上かな。よろしく」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「ちょっと、隆彦、鼻の下伸ばしてんじゃないわよ」

「別にそんなことしてないだろ」

「ごめんなさいね。私は信濃友美(しなのともみ)、隆彦と一緒にこの『きさらづ会』に入ったの」

「どのようなご関係で?」

「フリーライター仲間よ。私たちも木更津出身で、フリーライターとして仕事をする反面、財宝探しなどをしてるこの『きさらづ会』の一員としてネタを掴むつもりなの」

「そうなんですね」

「次はあなた達について教えてくれない?」

「あ、そうでした。先ほども紹介頂きましたが、私は橋爪鏡花かと言います。『きさらづ会』の会長は私の祖父です。乃木さん、どうぞ」

「俺は乃木亮太と言います。あることがきっかけで鏡花の作ったサークルに入ることになって、今回はその活動の一環で来ています」

「私は高島小春です。私は鏡花さんと乃木さんに助けてもらって、そのことがキッカケで私もサークルに入ったんです。今回は乃木さん同様、鏡花さんに呼ばれて来ました」

「鏡花ちゃん、向こうでも元気にやっているのね」柴田は嬉しそうに言う。

「はい、お陰様で。ところで、私を呼んだのはどう言ったご用件で?」

鏡花の祖父は一息ついて話し始める。

「わしが鏡花を呼んだのは、夏休みを利用して『きさらず会』に協力してほしいからなんじゃ。お前は過去に参加したことがあっただろう。ほら、十年近く前の財宝探しの時」

「うん。でも、私飽きちゃって途中で帰らなかったっけ?」

「そうだったな。ともかく、どうじゃ?久しぶりに帰ってきたんだ、参加しないか?」

「うん。そのつもりで来たし、皆さんにも来てもらったからね。乃木さん、小春さん、よろしいですよね?」

「お、おう」乃木は鏡花の曇りない眼差しに押された。

「おじいちゃん、今回は何をするの?」

「財宝探しじゃ。詳しくはそこの若い二人が説明してくれるじゃろ」

「その財宝については僕たちが説明するよ」

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