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日本(ヤマト)神話殺人事件

日本武尊(ヤマトタケルノミコト)は東国遠征に向かった。

その途上、走水(はしりみず)の海(浦賀水道)を通り上総(千葉県)へ抜けようとした時、烈しい暴風雨となり、まったく船が進めなくなる。


そこで、日本武尊の妻・弟橘媛(オトタチバナヒメ)が、自身の身を海に投じること申し出た。

日本武尊は、結局、妻オトタチバナヒメの申し出を受け入れる。


いよいよ海に身を投げるという時、

夫・日本武尊の方を振り返り弟橘媛は歌を詠んだ。


さねかし 相模さがむの小野に 燃ゆる火の

火中ほなかに立ちて 問ひし君はも


これより以前、

ヤマトタケルは相模国さがむのくにで敵に騙され、野の真ん中で四方から火を放たれ、

絶体絶命の危機に立たされたことがあった。

その横には、弟橘媛もいたらしい。


歌の意味は、あの時、炎が燃える相模の野にあって、私の名前を呼んでくれたあなたのことを忘れないというものであった。


「なんたって、木更津なんかに来たんだ?」

「今回はちゃんと依頼らしいですよ。鏡花さんは先にこの地へ来ているらしいですけど」

乃木と小春は橋の上から川を覗いている。

「暑いですねー」

「あいつは何をしているんだ?」

「まぁ、気長に待ちましょうよ。あ、そうだ!木更津の名前の由来って知っていますか?」

「由来?わからんな」

「確か、神話か何かに由来してたような気がします」

「いや、小春ちゃんもわかってないんじゃん」

「てへ」

「……」

「まぁ、そう言うことで、地名というのは神話や遥か昔の出来事に由来していることが多いんですよ。木更津については、確かー……」

「君去らず 袖しが浦に 立つ波の

その面影を みるぞ悲しき」

「っ!?」乃木と小春は驚き、振り返る。

「おはようございます!」

「鏡花!」

「鏡花さん!」

「詳細を伝えずに来て頂いてすみません」

「鏡花さん、さっきの歌…」

「ええ、お二人が木更津の由来についてお話しされていたようなので」

「その歌って何なんだ?」

「木更津の由来となる歌です。日本武尊が神奈川県の走水(はしりみず)という場所から、現在の浦賀水道を渡って上総(かずさ)国、つまり私たちのいる千葉県ですね。その上総国へ渡ろうとした時、海が大荒れになっていました。そこで日本武尊の妻であった弟橘媛が、自身の身を海に投じることでその嵐を鎮めたと言います。その後、海岸を歩いている時に弟橘媛の袖を見つけます。その時に日本武尊が弟橘媛を思って詠んだのが、さっき私が詠んだ歌です。『君去らず』このフレーズが『木更津』という名前の由来という説もありますね」

「へぇー、そうだったのか」

「それです。私もそれが言いたかったんです!」

「殆ど、わかってなかったじゃん」

「神話に由来してることは知ってましたから、二十点くらいは貰えますよー」

「何だ、二十点って」

「それよりも鏡花さん、どうして私たちを木更津まで呼んだんですか?依頼だと言っていましたけど」

「はい。『ヘルプ』としての活動です。実は千葉県木更津市は私の地元なんですよ」

「えっ!?そうだったんですか?」

「ええ。ですから、木更津の由来についても知っていたんです」

「で、その依頼って何だ?誰からのなんだ?」

「一つずつ説明しますね。まず、誰からかということですが、ある地元の団体です。後で紹介しますね。それと、依頼内容についても直接会って聞きましょうか。私も詳しくは知らないので」

鏡花は歩き出す。乃木と小春は鏡花に連れられるまま、木更津駅まで戻って来た。

「先ずは、ここからバスに乗って私の実家に行きましょう。お二人とも私の実家に泊まってもらってもいいですか?」

「勿論です!鏡花さんの実家なんて超楽しみです。乃木さん、チャンスですねー」

「何がだよ」

「ご両親に挨拶したらどうです?」

「アホか」

「どうされましたか?」

「いや、なんでもない」

鏡花はキョトンとしている。

「何でもないようでしたら行きましょうか。あそこに止まっているバスに乗ります」

三人は鏡花の実家を目指しバスに乗る。しかし、この時知る由もなかった。この依頼によってとんでもない事件に巻き込まれることを…

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