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薄氷村殺人事件15

 山頂に着くと、金井の遺体を調べる。

「やっぱ、この手に何が握られているのかだよな。死後硬直が緩和されるまで待つしかないのか…」

「…………」鏡花は金井の遺体をじっくりと見ている。

「鏡花?」

「乃木さん、もしかすると、発想は逆なのかもしれませんよ」

「どういうことだよ?」

「右手を握りしめたのではなく、左手を握りしめた状態から開いたのかもしれません」

「なんのために?」

「まさに、証拠を奪うためではないでしょうか?」

「ってことは、証拠は犯人に始末された可能性が高いのか?」

「そのようですね…」鏡花はそう言いながら、遺体の首に掛かっているカメラを確認する。

「何か写ってるのか?」

「ええ、この村の写真や蔵の中の写真までありますね」

「なぁ、鏡花、この事件は村の呪いと関係あるのかな?」

「いえ、呪いなんてものはありません。人間の思い込みが呪いを生み出しているのです。そして、この事件も悪魔に憑りつかれた人間による殺人ですよ…」鏡花は金井のカメラを自分の首に掛ける。

「悪魔に憑りつかれた人間?」

「はい。この村には、災いを信じすぎたばかりに自ら災いを生み出してしまった罪人つみびとがいるようですね。その罪人をそろそろ解放してあげましょう」

「じゃあ、お前、犯人がわかったのか!?」

「はい。対決は今夜八時です。わたしが昨日の事件を再現しましょう」

 棚菊家で夕食を終わらすと、鏡花は乃木に事件関係者を呼びに行くように言った。

 時刻は午後八時少し前、昨夜の儀式開始とほぼ同じ時間になった。乃木は関係者を集め、櫓の前にいる。

「乃木さん、鏡花さんは来ないんですか?」

「ああ、鏡花に集めるように言われたんだ。あいつは別のところにいるよ」

「あの娘は何をしようとしてるんじゃ」

「みなさんすみません。もう少しお待ちください」乃木は携帯を確認する。

「ところで、橋が落とされていたということでしたが、警察の方はいつ来るのでしょうか…」

「え、そうなの!?」

「みなさん、知らなかったのですか?私は母から聞いたのですが…」

「はい!私が村長さんに伝えたんです。乃木さんにそう言われたので」

「そうじゃ、この娘が急いで戻ってきて報告してくれたのじゃ。わしは家にいた佳乃には伝えたが、それ以外の人には言っておらんかったな」

「そうだったんですか!道理でいつになっても来ないと思っていました」

「実は、警察の人は村の近くまでは来ているんですよ。俺と鏡花が橋を見に行った時、反対側から警察官に話しかけられましたから、今頃はどうにかこちらに渡ろうと頑張っているはずです」

「じゃあ、事件のことは警察に任せましょう」佳乃は安堵の表情を浮かべる。

「いえ、警察が来る前に犯人を暴きます」

「え!?犯人!?」

「お、来た来た」乃木は携帯を確認する。

「みなさんお待たせしました」

「何が始まるんだい?」

「これからみなさんに確認してほしいことがあるんです。隆晴さん、あなたは昨日の夜八時頃、この櫓から蔵の中に光を見たと言っていましたよね?」

「ああ、そうだけど…」

「それは本当ですよね?」

「私が嘘を吐いているとでもいいたいのか…?」

「決して、そういうことじゃありません。隆晴さん、櫓に上って蔵の方を見てもらっていいですか?」

「あ、ああ、わかった…」

 隆晴は乃木に言われた通り、櫓を上がり、蔵の方を見る。

「あっ!昨日と同じだ!蔵の中に光が見える。誰かいるんだ!」

「馬鹿な!鍵はわしの部屋の金庫にあるんじゃぞ。入れるわけが!」

「鏡花さんじゃないんですか!?」

「とにかく確認しに行くぞい」村長の一言で蔵を確かめに行く。

 ガチャ、ガチャ

「やはり、閉まってますね。南京錠も掛かっていますし」須藤が蔵の扉をガチャガチャしながら言う。

「ねぇ、あなた、本当に見たの?」

「お前まで、私を疑っているのか?」

「そうじゃないわ。ただ、あなた以外確認していないから」

「だったら、他の人も見てみればいい…」

 もう一度、櫓に戻ることになった。

「私が確認してもいいですか?」彩香が名乗りを挙げる。

「だったら、私も一緒に上ります」小春も櫓に上ることを名乗り出た。

 二人は櫓に上り、同様に蔵の方を見る。

「え!?本当に見えるよ!隆晴さんの言っていたことは嘘ではありません!悪魔像を通して、蔵の中に光が見えます!」

「だから、言ったじゃないか…」

「しかし、蔵には鍵が掛かっていたじゃないですか!それに私たちはここにいます!誰が蔵にいるって言うの!?」田辺は少し荒げた声を出す。

「やはり、ここにいないのはあの娘だけじゃな…」

 小春たちは櫓から降りてきた。

「乃木さん、鏡花さんはどこにいるんですか?」

「俺にもわからない。みんなを櫓に連れてくるよう言われただけだから」

「じゃあ、やはり、蔵にいるのは鏡花ちゃんじゃないかしら?」

「佳乃さん、私はここにいますよ」

「えっ!?」そこにいた全員が驚き、後ろを振り返る。

 そこには鏡花がいた。

「なぜここにおるんじゃ!?」

「なぜって、私はさっきまで洞窟にいたんですよ?」

「洞窟!?」

「じゃあ、蔵にいるのは誰なんじゃ?」

「蔵には誰もいませんよ」

「えっ!?でも、鏡花さん、私と彩香ちゃんも今さっき、蔵の中に光を見ました!誰もいないはずがありません」

「そうですね。しかし、それは蔵の中から出た光ではありませんよ。これから、竹原さん殺しのトリックをお伝えしたいと思います」

「トリック!?」

「はい。竹原さんと金井さんを殺した犯人は皆さんのうちの誰かということです」










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