豪邸の謎
「方角に変えるって事は、南に『朱』、東に『青』、西に『白』ということになりますね。つまり、北には『玄』の文字がくるはずですね」
「お見事ですよ、乃木さん。何故か『玄』の字だけは少し欠けてしまったようですね」
「ですけど、これがなんの関係があるのでしょうか?」
「そうですね…先ほども述べた通り、やはりこの紙だけではわからないのが本当のところです。もうお判りでしょうが、この四つの文字は四神を表しています。北の玄武、南の朱雀、東の青龍、西の白虎ですね。私は彼の家に何かヒントがあると思っています」
「あいつの家に?」
「はい。あ、それと聞きたいことがありました。この紙はどのような経緯でお友達さんの家に届いたんですか?」
「脅迫状と一緒に入ってたらしいです」
「脅迫状の内容はご存知ですか?」
「いや、脅迫状が届いた事は聞きましたが内容については聞いてないです」
「それともう一つ、彼は何故あなたに相談したのでしょうか?」
「それはさっきメールを見せたじゃないですか」
「そうですが、私なら信頼できる友人がいたとしても、先ず警察に相談します」
「確かに…そう言われてみれば、こんなことなんで俺に頼んだんだ」
「それに問題はそれだけではありません。この紙のことを伝えようにも携帯は使えないのでどうしましょうか?」
「それならいい方法があります。あいつは一日で外に出るのは、郵便受けを見に行くらいになるって言っていました。手紙を出しましょう」
「それはいい考えです。ところで乃木さんは彼の家がどこにあるのか知っていますか?」
「一度だけ行ったことがあります。ですが、なんでですか?」
「善は急げです。直接出しに行きましょう。気になることも有りますしね」
「ええ、構いませんよ」
「では、私はこの部屋の鍵を返してきますので正門でお待ちしてください」
「わかりました」
鏡花は鍵を返し、すぐに正門に向かった。
「お待たせ致しました。では、行きましょう」
「はい」
「ところで、お友達さんの家はどこなんでしょう?」
「古城駅からちょっと離れた場所にあります」
「古城駅なんですね」
「どうかされました?」
「いえ、降りたことがないので、楽しみです」
「そうですか、では行きましょう」
「はい!あ、乃木さん、お友達さんの家に向かう前にお聞きしたいことが有るのですが…」
「なんですか?」
「取り敢えず、向かいながら話しましょう」
二人は電車に乗り、この先について話し合う。
「そう言えば聞きたいことって何ですか?」
「あ、そうでしたね。自分で言ったのに忘れてました。えっと、お友達さんの家に一度だけ行ったことがあるって言ってましたよね?」
「ええ、俺があいつの家に行ったのは半年くらい前だったような気がします。あいつの家は父親が人を呼びたがらない人で、その日は父親が居ないから、って呼んでくれたんですよ」
「どのような御宅でした?」
「豪邸でしたよ。さすが資産家って感じですかね。使用人みたいな人も居ましたし。でも、あいつはそういうのは嫌がってるようですが…」
「嫌がってるんですか?」
「ええ、あいつからのメールにもあった通り、周りはあいつのことをお金持ち扱いするんですよ。あいつはそういうのが嫌でバイトもしてますし、普通に友達としてみて欲しいんだと思います。だからっていう訳でもないんですけど、俺はあいつのことを友達だと思っています」
「乃木さんはいい人なんですね」
「いや、俺は単純に人を外面で決め付けたくないだけなんです」
「羨ましいです」
「へ?」
「あ、いや、私にだって信頼できる友達くらいいますから」
「いや、俺何も言ってないんですが…」
「…………」
「あ、そうだ。あの紙と一緒に手紙も入れませんか?連絡取れないかとか。何かわかるかもしれない」
「そうですね。なにを書きましょうか?」
「俺はあいつに伝えたいことを書きますから、橋爪さんは何か指示をしてあげてはどうですか?」
「何か連絡手段がないか、だけは書いておきたいです」
「そうしましょう」
10分ほどすると古城駅に到着した。
「それにしても何もないなー」
「いえ、ミステリアスです!私、嫌いじゃないです!あ、すみません」
「面白い人ですね。あなたに興味が出てきました」
「へ?」
「独り言です、行きましょう。あいつの家はここから10分ほど歩いたところにあります」
5分ほど歩くと、遠くからでもわかるくらい大きい家が一軒見えた。周りに他の家は見当たらず、そこが目的地だと直ぐにわかった。
「わぁ……」鏡花は言葉を失う。
「俺も初めて来た時は同じように口をポカンと開けて見てましたよ」乃木は笑いながら言う。
「え、口開いていました?」恥ずかしそうに言う。
しかし、驚くのは仕方のないことだった。目の前には漫画でしか見たことのないような大豪邸があったのだ。




