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薄氷村殺人事件13

一列になって山を登る。

「なぁ、取材に来てたもう一人の男がいなくないか?」

「儀式を受けていない人の参加はできないはずですから、村ではないでしょうか?」

「そっか」

「大丈夫ですよ」

「そうだな。お前はこの事件、どう考える?」

「どうでしょうか…そもそも、彼らがこの村に来たのは偶然のはずです。つまり、この事件自体昨日のうちに計画され、実行された事になります。この村にはそれだけ頭のキレるひとがいるようですね」

「確かに。だとしたら、いろいろと複雑になるな…」

「ええ、そうですね」

山を歩いていると、大きな鳥居が見えてきた。

「なんだあれ?」

「鳥居ですよ。もうすぐ山頂です」彩香が後ろから言う。

すると、列の前方にいる村人が何やら騒いでいる。

「どうしたんでしょうか?」

「わからない」

村長の近くにいた村人が手でバツ印を作っている。

「何かあったようです!」鏡花は山頂に向けて走り出した。

「何があったのですか!?」

鏡花は山頂に辿り着く。

「そ、そんな…」

「どうしたんだ、鏡花!?」

「鏡花さん!?」

「小春さん、来ないで下さい!」

山頂にはしめ縄が巻かれた岩があり、その前にはもたれかかるように座る金井の姿があった。

鏡花は金井に近づき、安否を確認する。

「とうじゃ?」

「残念ながら息はありません。頸動脈が切られてます」

「じゃ、じゃあ、連続殺人なのか!?」

「その可能性は非常に高いです。それに流れ出した血が完全に固まってますから、相当の時間が経っていると思われます」

「みな、よく聞け!残念じゃが、雪嶺祭は中止にする!このまま下山してくれ。詳細は追って伝えよう」

村人は下山を始める。

「わしらも降りるぞ。須藤さん、下山したらすぐに警察に連絡をしてくれ」

「わかりました」

全員が下山し始めたが、鏡花は現場を調べている。

「鏡花、降りるぞ」

「乃木さん、これ見てください」

「なんだ?」

「出血は首だけじゃないようです。背中の方を見てください」

「本当だ。背中の方からも大量の血が出てるな」

「やはり、そうでしたか」

「何がだ?」

「蔵の中で殺されていた竹原さんも、首の出血以外にも頭に殴打されたような跡があったんです」

「どういうことだ?」

「つまり、犯人は見立て殺人のようなことをしているんです。致命傷は頸動脈が切り裂かれていることですが、その前に他の外傷が付けられたんだと思います。それに、岩の前だけじゃなくて、所々血の跡があります」

「確かにあるな。背中を刺された後、岩の前に行ったのか?」

「まだ、わかりません。あれ?何か不自然じゃないですか、この手」

「え、どっちの手だ?」

「見比べてください。左手はパーに開いているのに、右手は堅く握りしめられています。不自然ですよね」

「もしかして、右手に何か握られてるんじゃないのか?証拠とか」

乃木は金井の右手を開こうとしたが、堅く握られて開かない。

「だめだ、堅くて開かない」

「死後硬直が進んでいる証拠ですね。死後十時間くらいでしょうか?しかし、気温が高いですから死後硬直の速度も速くなります。ですので、八時間から九時間くらいの間かもしれません。詳しくはわかりませんが、昨日の儀式が終わり、蔵での騒動があった時には金井さんは間違いなく生きていましたから、殺害されたのはそれ以降ということですね」

「なるほどな。でも、人を背負って山を登るなんて大変じゃないか?」

「どうして、そのように思われるのですか?」

「だって、この人がこの山を登る理由なんてあるか?仲間が殺害されたんだから、俺なら逃げ出すけどな…」

「乃木さん!調べたいことがあります。下山しましょう!」鏡花は何かを思い付いたように言う。

「え?あ、ああ」

鏡花は乃木を連れて下山し、行きに通った橋のところに来た。

「なんだこれ!」

「やはり、そうでしたか…」

橋は村側から切られていた。

「だから、金井さんは逃げることができなかったんですね…」

「でも、だったら、携帯で連絡すればよかったんじゃないのか?」

「何かできない理由があったのかもしれません」

「須藤さんが警察に連絡してるはずだけど、これじゃあ村の中までは来れない…」

「やはり、私たちで犯人を突き止めるしかないようですね」

「ああ」

「二人もの人間を殺害した犯人は私が必ず見つけ出します」

小春が村の方から走って来た。

「鏡花さーん、乃木さーん」

「あれ、小春さん?どうされたんですか?」

「私は先に下山したんですけど、鏡花さんと乃木さんが村から出て行くのを見たので追いかけて来ました」

「そうだったんですね」

「って、え!?橋が落ちてます!」

「ええ、私たちは閉じ込められてしまったようです」

「小春ちゃん、このことを村長さんに伝えてきてもらってもいい?」

「わ、わかりました!」小春は大急ぎで村へ引き返した。

その時、橋の反対側から声がする。

「おーい、君たちー!」

振り向くと、橋の反対側から警察官がこちらに向かって話しかけていた。

「事件があったって聞いたんだが、なぜこの橋は落ちているんだ!?」

「わかりません!恐らく犯人が落としたものだと思われます!」

「なんとかしてすぐに行くから、君たちは村に戻りなさい!安全な場所にいるんだ!わかったね!?」

「わかりました!」

鏡花と乃木は村へと戻る。

「なぁ、鏡花、安全な場所に居ろ、なんて言われたけど、どうするよ?」

「乃木さん、愚問ですよ」

「そうだったな。俺は村に戻ったら聞き込みをしてくるよ」

「ええ、お願いします。私は蔵の密室の謎について考えます」

「ああ、また後でな!」

二人はそれぞれの役割を担って、調査を開始する。

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