薄氷村殺人事件6
「まず彩香じゃが、今回の儀式はお前が行うんじゃ」
「えっ!?おばぁ、私できないよ」
「いや、お前ならできるはずじゃ。この村を出るまでに全てを教えたからね」
「確かに教えてもらったけど、覚えているかわからないよ…」
「大丈夫じゃ。儀式まではまだ時間がある。わしが教えよう。そうすれば思い出すはずじゃ。いいな?」
「わかったよ、おばぁ」
「お前さんたちには、儀式の行われる夜八時の少し前には洞窟の前に居てくれ。洞窟の前には、役場の須藤さんが居るはずじゃ」
「わかりました」
「この儀式は、この村に言い伝えられる悪魔に殺されないようにするための神聖な儀式なのじゃ。時計など、服以外のものは置いてきてくれ。それを守らない者や儀式を受けない者は、悪魔に食い殺されることになるぞ」
「おばぁ、みんなを脅さないでよ」
「脅してなどいない。事実じゃ」
「彩香さん、大丈夫ですよ。私たちはちゃんと儀式を受けますから。彩香さんの方こそ、儀式は大丈夫ですか?」
「はい。八時までには思い出しますから、心配しないでください」
その時、外から言い争う声が聴こえた。
「また、あなた達ですか!帰ってください!何度言われても取材は受けてませんから、止めてください!」
「うるせぇな、あんたに聞いてねぇよ」
「すいませーん、村長さんいます?俺たち、雪嶺祭を取材したいんですけどー」
「なんじゃ?騒騒しい」
「乃木さん!」
「ああ、さっきのやつらだ」
若い二人組の男は、声を上げ続けている。
「村長さーん、いるんでしょ?取材させて下さいよー」
村長は重い腰を上げて、玄関へ向かう。
「あんたらは何者じゃ?」
「あれ?あなたが村長さん?」
「いかにもそうじゃが」
「俺たち、この村を取材しにきたんですよー。ここまで来たんで、俺らも引けないんすよね」
「君たちが勝手に来たんじゃないか!」須藤が怒りの表情を浮かべる。
「あんたらには悪いが、この村に取材することなんてありゃせんよ。それにこの村にはあんたらを食い殺す悪魔がいる。死にたくなければ帰るんじゃ。わしらはあんたらに用はない」
「いや、俺たちは引き下がらないですよ」
そう言った瞬間、村長は男を睨みつけた。
「ギクッ!?」男達は村長のオーラに圧倒され、固まる。
「帰るんじゃ!」
「い、いや、そんな怖い目で見ないで下さいよ…」
「おい、行くぞ!」二人の男は玄関から出て行った。
「須藤さん、またあやつらを見つけたら警察に連絡して下さい」
「わ、わかりました」
「彩香、それにあんたらも、蔵に行くぞい」
「え、蔵って、そこのですか?」
「ああ、そうじゃ。儀式に必要な物が入っているからね。蔵の鍵は金庫にしまってあるが、代々暗証番号は村長たる者しか知らされていない。少しここで待っておれ」村長は二階へ上がって行った。
「蔵って、雪嶺祭の時期にしか開かないんだよな?」
「うん、そうだよ。でも、十年前の雪嶺祭で開いた以来だからね」
「あ、須藤さん、そうなんですか。でも、蔵には何があるんですか?」
「悪魔の目じゃ」
「悪魔の目!?」
「村長、それは…」
「なーに、その子らは明日の雪嶺祭に参加するんじゃ。どの道明日になれば目にすることになる」
「そうですね…」
「その悪魔の目、とは何のことなんですか!?」鏡花は興味津々に聞く。
「雪嶺祭は、その悪魔の目を氷門山に持って行くんだ。現物は今から行く蔵の中に厳重に保管されているけど、悪魔の目は、当日の祭り前になって初めて取り出すんだ。君たちも、くれぐれも悪魔の目には触れないようにね。まぁ、鍵は村長が持ってるし、用がなければ蔵は開けないから大丈夫だと思うけど」
「わかりました!」
「では、行くぞい」
鏡花たちは、村長と須藤について行き、目の前の蔵へ向かう。
カチャカチャ、カチ
蔵の鍵を開け、扉を開く。
蔵の中は埃っぽく、熱がこもっている。
「ふぅ、流石に十年ともなると埃が凄いな」村長は埃をはたきながら儀式に使う祭具を探している。
「もしかして、あれが悪魔の目、っていうやつですか?」小春が指した先には、明らかに他とは違う雰囲気を醸し出している箱があった。
「そうだよ。あれが悪魔の目だ。でも、村長以外は絶対に触れちゃダメだよ」
「へぇー、いいこと聞いちゃいましたね!」
蔵の入り口には、先ほどの男たちがカメラを構えて立っている。
「あなたたち、まだ居たんですか!警察に通報しますよ!」
「でも、僕たち今、この村の秘密知っちゃったんですけどね」笑いながらこちらを見ている。
「貴様ら、天罰がくだるぞ!!」




