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薄氷村殺人事件3

鏡花が成田空港に到着すると、既に他の面子は揃っていた。

「鏡花さーん!こっちこっちー」小春が笑顔で手を振っている。

「遅かったな鏡花」

「乃木さんだって、今さっき来たばかりでしょ」

「厳しいな小春ちゃん」

「皆さんおはようございます。お待たせしてしまって申し訳ありません」

「いえ、私の方こそこんなことに巻き込んでしまってすみません」

「いいんですよ。これはあくまでも合宿ですから!」

「そうだよ、彩香ちゃん。もし何かあったとしても、鏡花さんも乃木さんも私もいるんだから大丈夫だよ。そうですよね?乃木さん」

「お、おう。任せとけ!」

「ふふ。本当に面白い人たちですね。よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします!」鏡花は笑顔で返事をする。

「もう搭乗できると思いますので、向かいましょうか」彩香に連れられ搭乗口に向かった。

鏡花たちは飛行機へ乗り込む。二時間ほど飛行機に乗ると、新千歳空港に到着した。

「北海道到着!」小春ははしゃいでいる。

「小春ちゃん、はしゃぎ過ぎだぞ。流石の鏡花だって、ほらこの調…」

「小春さん、北海道ですよ!蟹です!」鏡花は目をキラキラさせている。

「………おい、鏡花、ちょっといいか」

「なんですか?」

「いや、お前キャラがブレブレなんだよ。推理している時はあんなにクールな感じなのにな」

「鏡花さん、可愛いです!そのギャップが萌えです!」

「おい、小春ちゃんこいつはそんなこと意識してないんだぞ。本物の天然だ…」

「それが良いんじゃないですか。萌えです。非常に萌えます」

「はぁ、だめだ。まともなのがいない…」

「皆さん、電車やバスの時間があります。申し訳ないんですが、観光は帰りでもいいですか?」

「あ、そうでしたね。目的は薄氷村に行くことでした。行きましょう」

電車とバスを乗り継ぐと、山へ分け入って行った。バスの終点で降りると、目の前に橋が架かっている。

「この橋を渡ったら私の村です」

橋を渡り、少し歩くと目の前に村が現れた。看板には「薄氷村」と書かれている。

「ここが彩香さんの故郷の薄氷村ですね!」

村の奥には大きな山がそびえ立っている。ところどころに民家があり、村人が農作業をしている。すると、村人がこちらに気付き、やって来た。

「おや、彩香ちゃんじゃないか!帰って来たんだね。おかえり」

「あ、武井のおばさん、ただいま。雪嶺祭の時期だから帰って来たの」

「彩香ちゃん、その人たちは?」

「私の大学の友達だよ。雪嶺祭の話をしたら来てくれて」

「!?村長さんの許しは得たのかい?」優しそうな表情がいっきに強張った。

「今から会いに行くんだよ。大丈夫、この人たちは前回の人とは違うよ。ちゃんと儀式も受けてくれるから」

「そうなのかい?それなら、いいんだけど。遊び半分で来たならあなた方のために良くないから、帰ってちょうだいね」

「遊び半分ではありません。彩香さんの依頼を受けて来たのですから」鏡花は説明する。

「何でもいいけど、この村のしきたりだけは絶対に守っておくれよ」

「もちろんです」

「武井のおばさん、私たちはおばぁに挨拶に行くね。おじさんにもよろしく言っておいてね」

「わかったよ」

「じゃあ、行きましょうか。私の家は村の東側にある大きい家です」

「わぁ、ここからでも見えますが、本当に大きなお家ですね」鏡花は感心している。

「ねぇ、彩香ちゃん」

「なんですか?乃木さん」

「さっき、あのおばさんが村長って言っていたけど…」

「はい。棚菊家は代々この村の長たる地位にあって、私の祖母は村長なんです」

「そうなんだ」

「あ、着きましたよ。私は祖母に挨拶してくるので、皆さんはここで待っていてもらってもよろしいですか?」そう言うと、彩香は家の中に入って行った。数分して彩香が出て来て、入るように言った。

「お邪魔します!」

「祖母は居間にいるからついて来て下さい」

三人は彩香について行き居間に通された。そこには、彩香の祖母と思われる人と、他に三人の人がいた。

「おばぁ、紹介するね。こちら、私の大学で人助けのサークルをしている人たちよ。この人は、橋爪鏡花さん、そして乃木亮太さん、最後に私の友達の高島小春ちゃんよ」

「あんたらは何をしに来た?」彩香の祖母は怖い顔をして言う。

「あ、私たち彩香さんから雪嶺祭について相談を頂いて、それでここへ来ました」

「雪嶺祭についてじゃと?彩香、何を話したんだ?」

「おばぁ、怖い顔しないでよ。鏡花さんたちは相談に乗ってくれているだけなのよ。雪嶺祭の呪いについて話したら、力になってくれるって言ってここまで来てくれたの」

「彩香、関係のない者を雪嶺祭に参加させることがどういうことになるか、お前も知っているじゃろ」

「でも、儀式を受けてもらえばいいんでしょ?」

「確かにそうじゃが、あんたらはそれを承知で来たのかね?」

「も、もちろんです。私は友達として彩香ちゃんの力になりたいんです」小春が精一杯の声で言う。

「お母さん、彩香の知り合いなんだし信じてあげましょうよ」隣に座っている女性が言う。

「まぁ、来てしまったんじゃ。ゆっくりとするといい」

「素直じゃないんだから。ごめんなさいね。申し遅れたわ、私は彩香の母で棚菊佳乃(よしの)と言います。是非、うちに泊まっていって」

「ありがとうございます!」

「ところで、ここで何していたの?」

「明日に控えた雪嶺祭について話していたんだよ。あ、ごめん、私はこの村の役員をしている須藤です。困ったことがあったらなんでも聞いて下さい」

「皆さん、須藤さんの隣に座っているのは、さっき会った武井おばさんの旦那さんです。無口な人ですけど、昔から私のことを可愛がってくれました」

「どうも…」

「あ、よろしくお願いします…」

「お母さん、空いてる部屋あったよね?」

「ええ、大きい部屋空いているわよ」

「じゃあ、皆さん部屋へ案内しますね。荷物を置いたら村の中を案内します」彩香の後をついて行き、二階へ上がった。

「乃木さんはこちらの部屋を使って下さい。私たちはこの大部屋を使うので」

「え?俺、何もしないよ」

「乃木さんダメですよー。女の子は女の子のお話があるんです」

「そういうことですね。ごめんなさい」

「彩香ちゃん…」

「でも、寝るまででしたらこちらの部屋へ来ても構いませんよ」

「鏡花…お前ってやつは」

「鏡花さん、天使過ぎます!優しさがファーストクラスです」

「小春ちゃん、言ってる意味わからないけど、みんなありがとう」

「では、荷物を置いて早速村を見に行きましょう」






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