薄氷村殺人事件2
「薄氷村…ですか?」
「はい。村に洞窟があります。その洞窟には水が入っている甕があるのですが、夏でも薄い氷が張っているんです」
「とても不思議ですね、面白いです」
「鏡花のミステリアスレーダーが発動したな」
「ミステリアスレーダーですか?」彩香は不思議そうな顔をしている。
「あ、気にしないでくれ。こいつは過度な推理オタクだから、非日常とかを聞くと無意識にレーダーが働くんだ。まぁ、俺が勝手に言ってるだけだけどな」
「彩香さん、薄氷村という名前はそのことに由来しているのでしょうか?」
「はい。私はそう聞きました」
「彩香ちゃん、それで相談って具体的に何?」
「あ、いや、何かをしてもらいたいって訳ではなくて、お話を聞いて頂きたかっただけなんです…村に帰るのが三日後なので…」
「そうだったんだ。ごめんな、俺たちにできることはないかもしれない」
「いいんです、相談に乗っていただいただけで十分です。ありがとうございました」彩香は立ち上がり、部屋を出て行こうとした。
「彩香さん、ちょっと待ってください!」それを制止するように鏡花が声を上げる。
「へ?なんですか?」
「乃木さん、小春さん、合宿しましょう!」
「お前、いきなり何言ってんだ?」
「彩香さん、確か雪嶺祭には儀式を受ければ参加できるって言っていましたよね?」
「え、ええ」
「是非参加させて下さい!」
「はぁぁぁぁぁぁ!?」乃木は思わず叫ぶ。
「の、乃木さんうるさいです」小春は耳を塞いでいる。
「あ、ごめん。でも待てよ、合宿ってことは彩香ちゃんの村に行くってことか?」
「そうです。三日後から数日間、皆さん空いていますか?」
「俺はバイト入ってるけど、代わり探せばなんとかなると思う」
「私もです。バイト入ってますけど、鏡花さんが行くなら私も代わりに入ってくれる人探します!彩香ちゃんの身に何か起きるかもしれないですし、『ヘルプ』として私はまだ何もできてませんから」
「小春さん…そんなことないですよ!小春さんは私の心の支えですよ」
「鏡花さん…」小春は涙ぐんでいる。
「乃木さんもです。最初の事件の時から私をサポートしてくれていますし、私の相談にも真剣に乗ってくれました。二人には感謝していますよ」
「鏡花さん、大好きです!」小春は嬉しそうに言う。
「仲が良いんですね。羨ましいです」
「では、私たちが何かの役立てた暁には彩香さんも『ヘルプ』に入って頂けないでしょうか?」
「え、私がですか…?」
「はい!是非一度考えてみて下さい」
「わかりました。ありがとうございます。では、私は用事があるのでこれで失礼しますね。詳細は小春ちゃんにメールします」
「お願いします」
「では」彩香は頭を下げて、部屋を出て行った。
後日、小春の携帯に薄氷村への行き方など、詳細が送られてきた。当日は朝出発して飛行機に乗る。北海道に着いてからは電車やバスを乗り継いで山に入ることになる。
当日の朝になり、それぞれは集合場所である空港へ向かった。




