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始まりの事件(完)

「こんな絡繰りがこの家あったとは…」秀樹は驚きのあまり言葉を失う。

「みなさん行きましょう。ここにこの事件の全てがあるはずです」

階段を降りていくと、小さな一枚の扉があった。その扉を開けると、中には箱があった。

「この箱は?」

「開けてみましょう」

箱の中には、古い紙が何枚も入っていた。

「孝子さん、読んでも構いませんね?」

孝子は何も答えなかったが、鏡花は読み始めた。

「ここに本堂家の悪事を記す。本堂家は代々、盗みを働く一家である。絵画などを盗んでは高く売り飛ばし、金儲けをしていた。私はその悪事を見抜き、本堂豊重を問い詰めた。いずれ私は本堂家に暗殺されるだろう。その前に記述し、隠しておこうと思う。私の子孫がいつか見つける日を祈って」

「なんということだ…じゃあ、まさか孝子さんは本堂家の…」

「ええ、そうよ。私は本堂豊重の末裔よ。二ヶ月ほど前、偶然にも押入れで古い文書を見つけたの。そこには信じられない事実が書かれていたわ。その文書に書いてある通り、本堂家は代々盗人の家柄だったの。表では資産家を装い、裏では強盗や窃盗を繰り返していた。そんなことが世間に知られたら、私だけじゃなくこれから本堂家を継ぐ子供達もそういう目で見られてしまう。私はそれが怖かったの。それで、その押入れで見つけた文書には橘家に秘密を握られている、と書いてあったわ」

「それで、橘家に潜り込んだんですね?」

「ええ、そうよ。高山さんは、夜な夜な私が何かをしていることに気付いていたらしいわ。それで、今日台所で脅されたの。あとは、鏡花ちゃんが言った通りよ。私は高山さんに抱きつく振りをして料理台に置いてあった包丁で背中を刺したの」

「菊池さんに罪を着せたのは玄武の像が菊池さんの部屋にあったからですか?」

「その通りよ。菊池くんには一日でいいから部屋を開けて欲しかったの。そのために捕まるようにしたわ」

「もういいかね?」平島が割って入る。

「はい」

「本堂孝子、殺人容疑で逮捕する」

「孝子さん…」鏡花は悲しそうな顔をしている。

「あ、そうそう、鏡花ちゃん最後に聞かせて欲しいことがあるの。いつから私のこと疑ってたの?」

「昨晩からです。私が後片付けの手伝いをしている時の話なんですが覚えていますか?私と乃木さんが孝子さんと菊池さんに捕まった時のことを孝子さんはこう言ってましたよね。朝日さんから不審な男と女がうろついていると聞いた、と。でも、その後乃木さんからは、朝日さんは私を実際に見るまでは女性だとは思っていなかった、って聞いたんです。ですから、朝日さんが不審な男と女がいる、なんて言うはずが無いんです」

「ふふふ、鏡花ちゃん頭が良いのね。こんな前から気付いてたなんて。もっと話したかったわ」

「私もです。とても残念です」

孝子は平島に連れられ、警察署へ連行された。

事件は解決し、その後は皆すぐに眠りについた。

朝起きると、公子さんが料理を作っていた。

「おはようございます」

「あら、鏡花ちゃん、おはよう。早いのね」

「目が覚めてしまって」

「ココアかコーヒーあるけど、飲む?」

「では、ココアを頂けますか?」

「直ぐ持っていくから、広間で待ってて」

「はい」

言葉通り、すぐにココアを持って公子が来た。

「どうぞ」

「ありがとうございます」

「お礼を言うのは私の方よ。本当にありがとう。それにしても、昨日の推理には惚れ惚れしちゃうわ。鏡花ちゃんのファンになろうかしら?」

「そんな、恥ずかしいからやめてください」

「あら、まんざらでもないんじゃない?」

「はい、実は嬉しいです」

「そろそろご飯もできるから、みんなを起こしてきてくれないかしら?」

「わかりました」

鏡花は他の住人を起こしに行った。全員を起こし、広間に戻ると朝食の準備ができていた。橘家での最後の食事を終え、挨拶をし、鏡花と乃木は家路についた。

こうして、鏡花にとって初めての事件は幕を閉じた。





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