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旅人の猜疑心

橘朝日は自室にいるという情報を得た乃木は、朝日の自室に向かった。

コン、コン

「朝日いるか?俺だけど、ちょっと話いいか?」

すると、すぐにドアが開き朝日が出てきた。

「おお、乃木じゃん、どうした?」

「いや、お前と話がしたくてさ」

「俺もだよ、取り敢えず立ち話も何だし中入れよ」そう言って、乃木を中に案内した。

「お前の部屋、結構綺麗だな」

「そうだろ?」

「まぁ、字とかは汚いけどな」

「やかましいわ」二人で笑い合う。

「いや、まさかこんなことになるなんてな」

「俺もビックリの展開だよ。お前を巻き込んで悪かったな。それと橋爪さんも。お前いつの間に彼女できたんだよ」

「何言ってんだよ、さっき言ったろ。俺は彼女の依頼人で別に付き合ってなんかいない」

「そうムキになるなよ。結構可愛いじゃん。お似合いだと思うぜ。でも、ポケベルで会話してた時は言葉遣いが丁寧な人だとは思っていたけど、まさか女性だったとはな。お前の友達だっていう紹介しかなかったから、実際に見るまでわからなかったよ」

「大きなお世話だよ。ポケベルの時は自己紹介しなかったんだな。その話は面白いから彼女にしとくよ」

「まぁ、ともかく俺はこうして無事でまたお前と話してる。それだけでも幸せなんだぜ」

「だけど、無事だってことはこれから何か起こるかもしれないってことだろ?脅迫状の三日後って今日のことなんじゃないのか?」

「なんでそんなこと知ってんだ?」

「さっき、お前のオヤジさんに聞いたんだ」

「そうなんだ。ところで、お前はどう思う?」

「何が?」

「脅迫状についてだよ」

「まだなんとも言えないよ。情報が少ないからな」

「そうだよな。何か知りたい事があったら聞いてくれよ、役に立つかもしれないし」

「あ、そうだった。お前と話に来たってのもあるけど、本当の目的は聞きたい事があったからなんだ」そう言い、乃木はメモ帳を取り出した。

「まず聞きたいのが、今まで強盗や窃盗に入られたことはあるかどうかだ」

「無いね。あんな脅迫状が送られて来たのなんて初めてだから、こうして外部との接触を絶ってるんだ。犯人がどこから見ているかもわからないんだし」

「ありがとう。次に聞きたいのが、オヤジさんが外部との連絡を絶った時、誰も警察に連絡しようと言わなかったのか?」

「俺は言ったさ。何が盗まれようと命の方が大事だからな。ただ、お袋や菊池さんはオヤジの意見に合わせてたから何も言わなかったよ」

「孝子さんは?」

「大切なものが何かはわからないけど、あまり大事にしない方がいいんじゃないかって助言してたな。もともと、オヤジも警察嫌いだから最初から呼ぶつもりは無かっただろうけど」

「なんで、オヤジさんは警察嫌いなんだ?」

「さぁな。そこまではわからない。ただ、警察嫌いなのは普段の会話とかからも察しはついてたからな」

「なるほど、わかった。ありがとな」

「もういいのか?」

「ああ。また聞きたい事が出てきたら聞きに行くよ」

「おう。期待してるぜ探偵さん」

「よせよ。恥ずかしい。それに俺は助手の方だ。俺の頭じゃ探偵役はできない。彼女に譲るさ」

乃木は朝日の部屋を出て鏡花を探した。縁側を歩いていると、夕日が沈みかけ、辺りも暗くなりかけている中で誰かと話している鏡花を見つけた。鏡花は乃木に気付き近づいてきた。

「あ、乃木さん、どうでした?」

「聞いてきましたよ。それよりあの人は?」

「あの人が庭師の高山さんです。お歳は45だそうです」

「ちょっと、想像と違いました。もう少し、若い方なのかと」

「そうですね。私もお若い方を想像してました」

「何を聞いていたんですか?」

「はい。この家に勤めることになった経緯などです。やはり秀樹さんの言っていた通り、公子さんの紹介だそうです。高山さんは公子さんと学生時代の同級生だそうで、一年前に少し体調を崩して会社を辞めたそうです。職を失って途方に暮れている時に学生時代の同級生である公子さんと再会し、現在に至るそうです」

「乃木さんの方はどうでしたか?私が伝えたこと聞いてくれました?」

「ええ、聞きましたよ。ここでは何ですし一度部屋へ戻ってまとめませんか?」

「そうしましょうか」

部屋へ戻ろうと縁側を歩いていると、向こう側から孝子が歩いてきた。

「あ、お二人ともこちらにいらっしゃいましたか。お食事の準備ができてますから、どうぞ先ほどの広間へ足をお運びください」

「いいんですか?」

「勿論です。高山さんも中断なさって来てくださいな」

「はい、今行きます」渋い声で高山が言う。

「では、私は他の皆さまをお呼びしに行きますので失礼します」

二人が広間に行くと、既に朝日と使用人の菊池が席についていた。

「乃木、調査の方は順調か?」

「さぁな。俺よりも橋爪さんに聞いてくれ。俺はどっちかって言うと材料を集める方だからな」

「そうだったな。じゃ、橋爪さん、調査の方は順調ですか?」

「え、あ、はい。ぼちぼちですかね」朝日と直接会話するのはこれが初めてだ。

「あ、朝日、橋爪さん結構人見知りなんだよ」

「そうなのか。橋爪さん、俺は気にしてないですよ。申し訳ないことしましたね」

「いえ、こちらこそちゃんと挨拶もせずにすみませんでした」

「いや、構わないですよ。乃木も橋爪さんも空いてる席に座ってよ、他のみんなももう来るだろうから」

すぐに秀樹と公子がやって来た。その後、高山が来て、最後に孝子が来たところで食事をする事になった。

「今日は珍しくお客さんもいるし、談笑しながら食事をする事にしよう」

「珍しいって、オヤジが呼びたがらないからだろ」朝日の的確なツッコミに笑いが起こる。

「まぁ、細かい事はいいだろ。それじゃ頂こう」

「いただきます」

楽しい食事会も終わり、鏡花と乃木は後片付けなど孝子の手伝いをした。鏡花は片付けをしながら孝子に質問した。

「孝子さん」

「何でしょうか、橋爪さん」

「あ、鏡花でいいですよ。話し方も砕けてもらって構いません。私もその方が嬉しいです」

「そうかしら。じゃあ、鏡花ちゃん何か聞きたいことでもあるの?」

「はい。孝子さんはどうしてこの家で働くことになったんですか?一ヶ月ほど前から働いていると秀樹さんに聞いたんですが」

「あら、そうだったの。そうね、私が働き始めたのは丁度一ヶ月前くらいかしらね。家政婦募集の広告を見て応募したのよ。他にも二人居たんだけど私が働く事になったのよね」

「そうだったんですか。でも、孝子さんで良かったですね。孝子さん優しいですし、お料理もお上手ですから。こんな美味しい料理毎日食べられるなんてこの家の人は羨ましいです」

「もう、褒め上手なのね。何も出ないわよ」

「いえいえ、本心ですから。でも、最初に会った時はちょっと怖かったですけどね」

「あの時はごめんなさいね。朝日様から外に不審な男と女が居るって聞いて、菊池君と確かめに行ったら乃木さんが居たから」

「そうだったんですね。私たちこそ驚かせてしまってすみません」

「ううん、いいのよ。気にしないでね。あとは私がやっておくから、部屋に戻っていいわよ」

「わかりました。また何か聞きたいことがあったら聞いてもいいですか?」

「勿論よ。私も鏡花ちゃんとお話したいわ」

「私もです」

鏡花が部屋に戻ると乃木が部屋から出てきた。

「あ、乃木さん。丁度良かったです。今から事件についてお話しできますか?」

「ええ、いいですよ」

「私の部屋は荷物を広げてしまったので、乃木さんのお部屋にお邪魔してもいいですか?」

「いいですよ」乃木はドアを開け鏡花を中に入れた。

「まず何から話します?」

「乃木さんからどうぞ。お友達さんから聞いたことを教えてください」

「わかりました」乃木はメモ帳を開き内容を確認する。

「まず、この家に強盗や窃盗が入ったことは無いそうです」

「そして、もう一つの方ですけど、孝子さんがあまり大事にしない方がいいと言ったくらいで、特別秀樹さんが警察を呼ばないことに反対する人は朝日くらいでした」

「そうですか。ありがとうございました。お友達さんとはちゃんと話せましたか?」

「ええ、おかげさまで。あいつポケベルで会話してる時、橋爪さんが女性だって思わなかったって言ってましたよ。だから、実際に見た時驚いたらしいですよ」

「本当ですか!?」

「ええ、そう言ってましたよ」

「…………」

「どうかしましたか?」

「あ、いえ、何でもありません。次は私の番ですね」

この時、鏡花はある疑問を抱いていた。


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