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旅人たちの調査

乃木は準備を済まし、鏡花が来るのを待っていた。

コン、コン「乃木さん、橋爪です。準備は整いましたか?」ようやく来たようだ。

「はい、今行きます」

扉を開けると、小さなポーチを肩からかけている鏡花がいた。

「お待たせしました。って、それなんですか?」

「いえいえ。このポーチのことですか?」

「そうです」

「使えそうなものを最小限で持って来ました。乃木さんこそ、胸ポケットから出てるのはボールペンですよね?」

「俺も同じです。何か役に立つことはないかとメモ帳も持って来ました」

「そうでしたんですね。では、行きましょうか………どこへ?」

「あ、書斎の場所聞き忘れたましたね…俺が聞いてます。さっきの広間に居てください」

「わかりました」

そう言って乃木はそそくさと階段を降りて行った。鏡花は言われた通り広間へ向かった。

「さっきはよく見てなかったけど、本当に広い家なんだなぁ。私の家の何十倍はあるかも」

誰も居ない広間はとても広く感じた。

「これは家の地図かな?この広間は入り口の近くで、一番南にある部屋なんだ」

広間を見ているとすぐに乃木がやって来た。

「孝子さんに聞いて来ました。一番西側の部屋だそうですよ。行きましょう」

二人は西側の部屋を目指して歩くと、一番西側には部屋が一つしかなく、それが書斎だということが直ぐにわかった。

コン、コン

「橋爪です。お話聞きに来ました」

すると中から、

「開いてるから入りなさい」という声が聞こえた。

「失礼します」

書斎は豪邸の広さに比べれば小さいようにも感じたが、普通の感覚からしたら少し大きくらいの部屋だった。

「そこのソファにでも腰をかけなさい」

「お気遣いありがとうございます」

「脅迫状について聞きたいって言ってたね」

「はい、お願いします」

「脅迫状っていうのはこれのことだよ」

そう言って、秀樹は机の横の引き出しを鍵で開け、脅迫状を取り出した。

「なぜ鍵を?」鏡花が尋ねる。

「ああ、これは私の性格でね。用心深いというか、大事なものはちゃんとしまっておきたい性分でね。それより、これだろ?君達が見たかったのは」

「はい。見せて頂いてもいいですか?」

「いいよ。気がすむまで見てくれ」

「すみません。メモを取らせてもらいます」乃木が持って来たメモ帳に脅迫状の内容を写す。

脅迫状にはこのようなことが書かれていた。

『ミッカゴ ダイジナモノヲイタダキニマイル』

パソコンで打たれた文字だった。

「なるほど。それで、これと一緒にこの白紙の紙が入っていたんですね?」そう言いながら、鏡花はあの白紙の紙をポーチから出した。

「それを何故君が?そうか、朝日のやつか」

「はい、あいつが俺に相談してくれた際にこの紙を預けてもらいました」

「そうだったのか。脅迫状が届いたのは三日前だったが、その日の内に朝日が私の書斎に来て、考えたいからその白紙の紙を貸してくれ、って言ってきたんだ。今までその紙のこと忘れてたよ。しかし、その紙には何も書かれていなかったはずだが…」

「いえ、この紙には文字が書かれていました。これを見てください」鏡花は白紙の紙を広げた。

「ん?これは?」

「この紙には傷で文字が書かれていました。その傷を鉛筆で塗ってあげると文字が浮かんできたんです」

「どういうことなのかね?」

「四神です。何か心当たりはありませんか?」

秀樹の顔色が変わった。

「確かにこの家には四神の像がある。私の部屋にもあるぞ。あれだ」

「はっ!?朱雀だ」思わず乃木が言った。

そこには赤い鳥の置物があった。

「何故四神の置物なんて置いてるんですか?」

「それが私にはわからない。この家は代々橘家が受け継いできた家なのだよ。何度か修築したらしいが、構造などは一切変わっていないらしい。この像も私が生まれる前からあるものだよ」

「先代の方が置かれたという事でしょうか?」

「恐らくはそうだろう。私の曽祖父にあたる人はカラクリや骨董品が好きだったと聞いたことはあるが、曽祖父には会ったことがない上に、実際のところはわからないんだ」

「そうなんですか…」

「他に質問はあるかね?」

「えっとですね…」

迷っている鏡花の横から乃木が質問する。

「あの、秀樹さんは何故今回の件で警察に相談しないんですか?」

秀樹はその問いに少し困ったような顔をした。

「それはね、あまり大事にしたくないんだ。この脅迫状にも書いてある通りこの家には大切なものがあるんだ。犯人が狙っているのもそれだろう」

「それは何なんですか?」

「私にもわからない」

「へ?どういうことなんです?この家の持ち主である秀樹さんが知らないものを犯人は狙ってるってことなんですか?」乃木が間髪入れずに質問する。

「そうかもしれない」

「では、秀樹さんはそれが何か知らないのに、大切なものがこの家にあるということを何故知っているのでしょうか?」

「それは代々そう言い伝えられてるからなんだよ。ただそれを発見できたものはいないんだ。だから大切なものがあることは知ってても、それが何かは誰も知らないんだ」

「わかりました」

「他に聞きたいことは?」

「あ、はい。最後に使用人の方がいつからこの家に勤めているのか教えて頂けますか?」今度は鏡花が質問する。

「孝子さんは1ヶ月前くらいだったと思う。聡の方はもう一年は経つな。フリーターだった彼を私が雇ったんだ」

「庭師の高山さんは?」

「彼は半年くらい前に妻の紹介で雇ったんだよ」

「ありがとうございます。参考にさせて頂きます」

「また何か書きたいことがあれば遠慮なく聞いてくれ」

「はい。失礼します」

「失礼しました」

二人は書斎を後にした。

「秀樹さん、思ったより優しい人でしたね」鏡花が嬉しそうにいう。

「ええ、俺も怖い人だってイメージがあったから良かったですよ」

「ところで乃木さん、ひとつお願いがあります」

「なんですか?」

「お友達さんにいくつか聞いて欲しい事があるんです。それと、ついでにお友達さんとお話しされてきてはどうでしょう?」

「わかりました。でも、いいんですか?橋爪さんは調査してるのに」

「大丈夫です。好きでやってるので。それと急がなければなりません。脅迫状にあった通り今日がその三日後なんです。まだ何も起こっていないってことは、これから起こるかもしれないんです」

鏡花は乃木に聞いてきて欲しいことを伝え、その場を離れた。

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