同窓会の夜
この物語は創作です。モデルはありません。
そう、あれは5年前。
大学3年の夏休み。中学時代の同窓会があった。
多佳子は岩井の前で、知らんぷりしていたが、内心穏やかじゃなかった。
高校卒業して3年も経つのに、つまり多佳子と岩井はなんとなくカップルになってから、もう3年以上経つのに、佳澄の一言で、こんなにも岩井は動揺するのか?
私達の恋愛の歴史は無かったのか?まるで古女房のコメントだと、自分で思って可笑しくもなったが....
当日、久しぶりに会った佳澄は、昔に比べて翳りのような雰囲気があった。
多佳子は悔しかったが、それがまた一層、佳澄のつかみどころの無い魅力を引き出していた。
案の定、岩井は多佳子の彼氏なんだって事はまるで忘れているかの様に佳澄に張り付き、一緒に来た田中は岩井から遠避けるように、佳澄に話かけていた。
多佳子は腹が立って仕方なかったが、無視してるとヤキモチを焼いてると思うわれるし、岩井の今の彼女の余裕も見せてやらないといけない。
ここでみんなの前で一発ガツンと閉締めとくか。岩井も佳澄も。
そう思い、水色のカクテルをちょっとあおり、柔らかな雰囲気を出しながら、岩井と佳澄と田中に近づいて行った。
しかし....
なんだか、気のせいか岩井が嬉しそうだ。田中に佳澄を取られて悔しがってるのじゃ無いのか?
多『田中君と佳澄が付き合ってたなんて、全然知らなかったわぁ。一緒に住んでるって?このまま学生結婚しちゃう感じ?』
すると、田中と佳澄は顔を見合わせて同時に吹き出した。みんな酔ってるから大騒ぎだ。
岩井は心無しか、るんるんそうに言う。
岩『今、こいつらに聞き出してたんだけど、佳澄は失恋したばかりなんだってさ』
多『....?』
田『佳澄のプライバシーだからなぁ。佳澄が付き合ってたのは俺じゃ無いんだ』
と田中が、勿体ぶって言う。
田『佳澄、いいの?言っても』
佳『うん。だって完全に玉砕だもん。それに後悔してないし』
佳澄の恋人は、田中の母親違いの兄だった。T高の先輩にいたと言う。もしかして、佳澄がイケメン先輩と騒いでた人か?
でも確か名前は田中じゃ無かったような?
田『兄貴と、俺、学校では知らんぷりしてる約束だったから。親達の事で色々言われるのもうざかったし』
佳『ゆうきさんが、田中君のお兄さんだって分かった時は本当に驚いたっけね』
佳澄は懐かしそうに笑う。
兄の当時の恋人として再会した田中と佳澄は、何回かお茶を飲んだり、食事に行ったりした。またそう言う時に限って地元の知り合いに見られた。
そーじゃなくとも中学時代から噂のあった2人だ。あっという間に一緒に暮らしているらしいになってしまった。
多佳子に取って真実はどうでもよかった。佳澄の噂など、今やどうでも良かった。
しかし、岩井が、田中と急接近した佳澄を見る、悔しそうで、残念そうな瞳を見て、多佳子は今度こそ岩井と別れる事に決めた。
もう。やってらんない。お前達、ふざけるなよ?
佳澄を忘れられない岩井と、ついに別れる決心をした多佳子。さてどうなる?