鈍感な佳澄
この物語は創作です。モデルはありません。
多佳子は思い切って佳澄に聞いて見た。
多『岩井の事どう思ってんの?』
佳『いや、友達でしょ。』
多佳子は、あまりにあっさり答えた佳澄にまたイライラした。
多『でも岩井が佳澄の事好きなのは見え見えじゃないの!』
すると、佳澄が一瞬、黙ったので、多佳子はどぎまぎした。
多『何、なんかあるわけ?』
佳『いや、何も無い。それに今は違うよ。』
今は?心臓が破裂しそうだ。
やっぱりこの2人なんかあったのだろうか?いつの間に?多佳子は黙っって先を促す。
佳『一度ね、いや、中学ん時だよ?岩井に告られたっつうか、それらしいし事は言われた』
多『好きだって?』
佳『いや、つうか、あれ、多佳子も受けた?T1高特訓強化レッスンってやつ。私は受けなかったんだけどね』
私達の中学は、T1高の市内で一番の進学率を狙っていたらしく、中3になってすぐに、各クラスから希望者と担任の推薦で、30人の、特別レッスンってのが設けられた。
ま、当時、PTAのうるさいお母様達が、公立の中学校で、進学校に行ける子だけ、えこひいきでは無いか?何事だ?と、騒いだって経緯があり、佳澄も多佳子の両親も、そのクラスに参加する事に反対した。
多『で、そのクラスがどうした訳?』
佳『岩井が、うちに聞きに来たんだよね、参加するのかって』
『....』
佳『俺も受けるつもり無いんだけど、お前が受けるなら一緒に勉強して、T1高に行かないかって。』
多『それで?』
佳『で、2人とも1高に合格したら、自分の事、友達以上に考えてくれないかって。』
多『なんて答えたのよ?』
佳『いや、T1高は受かる気で勉強は頑張るけど、先の事は約束出来ないって。』
多『そしたら?』
聞いてて、多佳子はまたイライラして来たので、たたみかけるように聞いた。
佳『分かったって。でも、岩井の事好きだと思ったら素直に言って欲しいし、私に好きな人が出来たら隠さないで言って欲しい、すっぱりと諦めるからって。』
多佳子は暗い気持ちになった。で、再び佳澄に噛み付いた。
多『で、どうするつもりなの、岩井の気持ちに対して』
佳『でも、あれ中学の時の話だしさ、あれから岩井に何も言われた事無いし。今はむしろ多佳子との方が仲良いでしょ?私、中学の時だって、もともと岩井と仲良く無いし。』
かぁ、こいつはやっぱりガキだわ。岩井の気持ち、分かってないんだわ。
多『まさか、田中君が好きとか?』
佳『は?あのサッカー部の?だって、私あの人とまともに口聞いた事もないんだよ?もっとも、岩井ともこのクラスになるまで殆ど話した事なかったかも』
ダメだ、こりゃ。鈍感すぎる。
私は急に岩井も、田中君も気の毒になった。あんた達のマドンナはただのお子ちゃまだよ。何にも気づいてないわぁ。
岩井は佳澄を諦めなんだろうか?多佳子にチャンスあるんだろうか?
自分には何も関係無いった顔で、のんびりと漫画を探している佳澄に、多佳子は憎しみに近い気持ちを覚えた。
岩井にも田中にも興味無さそうな佳澄にイライラする多佳子。ほかの事に気が向いてるのかな?