表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美しきモノ  作者: 空廼紡
クロニカ・マカニアの回想
3/63

クロニカ・マカニアの生い立ち

 クロニカ・マカニアはジュリウス・セピールのことが大嫌いだった。


 クロニカはトリコリス王国のマカニア公爵の娘として、生を受けた。

 父は母のことを愛していたが、一人娘であるクロニカのことを愛してはいなかった。

 その理由について、クロニカは分からなかった。


 顔が原因か、と鏡と睨めっこをしても、どこからどう見ても父が愛している母似の顔であった。己の性格については、自分ではどうにも分からなかった。母は可愛い、と言ってくれるが父にとっては可愛くないかもしれない。父の好みが分かるほど一緒に過ごした時間がないので憶測でしかなかった。

 使用人に訊こうとしたが、腫れ物扱いする者たちに相談するのは気が引けた。母なら尚更のことだった。


 父に好かれようと、勉強も社交ダンスの練習も頑張った。だが、使用人の噂話を聞いて打ちひしがれる。


 父は息子が欲しかった、と。だから女に生まれた子供が疎ましい、と。


 クロニカは、傷付いて喚いた。気が済むまで暴れて、落ち着いたところで閃いた。そうだ、男になろうと。

 母は病弱でまた子供を産んだら、命はないと診断された。クロニカ以外の子供は望めなかったのだ。

 それなら、自分が立派な男になって父の愛を貰えばいいのだ。


 今思えば、どうして男になっただけで愛されるって確信したのか。子供の思考は分からない、と後のクロニカは苦い顔をする。


 決心したクロニカは、自分の事を「俺」というようになり、仕草も言動も男に近づこうと努力した。

 それでも父はクロニカを見てくれなかった。男の振りをするクロニカを、褒める事も諫める事もなかった。

 自棄になり、剣術も学んだ。使用人たちが嘆いていたが、聞こえない振りをした。


「しょうがない子ね」


 男になろうとしている娘に嘆くことはなく、母は優しく微笑み、クロニカの頭を撫でてくれた。貴女は貴女の好きなようにやりなさい、とクロニカを暖かく見守ってくれた。

 だが十一になった日、父はクロニカを呼びつけた。


「お前も来年になったら学園に入る。男ごっこはやめて、令嬢としての教養を身につけなさい」


 こちらには一瞥もくれず、冷たく言い放った父にクロニカは絶望した。

 今までの努力が無駄なことだと、どう足掻こうが父の寵愛を受けることはないのだと。

 その言葉が引き金となったのか、クロニカは父に対して反抗期になった。


 結果、クロニカは男装を止めず、学園に入ってからも男として振る舞った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ