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序
―きれいだと、思った
あの子と遊んできなさい、と母に屋敷の外へと放り出された。
暖かい日差しが強さを増し始めた時期でもあり、少し外に出るだけでも屋内に慣れ親しんだ肌が悲鳴を上げる。
辟易しながらも、なるべく影がある道を選びながら、その子がいると言われた場所に向かった。
燦々と煌めく太陽。透き通った青い空は雲一つなく、目が痛くなる程眩しい。
あの子へと向かう道には、青々と茂っている草木が道を作っていた。よく手入れされているそれは、空の光に反射して煌々と光っている。
あの子の歌声が聞こえる。自然を讃える歌のようで、あの子らしいと思った。とても楽しそうに歌う声を聞けば、自然と足早になる。
滑るように通り抜けた先に、あの子の姿が見えた。
麦わら帽子を被っている。そこから伸びている長い朱色の髪がゆらゆらと揺れていた。
その子の感情を表しているように揺れるそれを見て、まるで尻尾みたいだな、と思いながら声をかけた。
その子が振り向く。
夏の青空に負けないくらいの、眩しくて強い瞳がこちらを捉えた。