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テンプレ異世界召喚に巻き込まれたデュエリストですが、持ち前の魔導書(デッキ)で何とか頑張ってます  作者: 秋月静流


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14話 深淵

 感情を露わにしたティナの悲鳴。

 自分だけなら何とでも切り抜ける事が出来るだろう。

 だが彼女の傍には病に伏したレミットがいる。

 結界術に優れた巫女タイプの召喚術師とはいえ鉄壁ではない。

 守るべき者を抱えての防衛戦は極めて不利だ。


「落ち着け、ティナ」


 焦燥から叫び返したくなるのをグッと堪え、悠馬は努めて平静を装う。

 いつもと変わらない悠馬の声にティナもハッと気付く。

 しばしの躊躇いの後、恥じる様に詫びの言葉を返す。


「ごめん、ユーマ。

 予想外の事態に少し取り乱してたっぽい」

「気持ちは分かる。

 ただ俺が召喚したその<シュバルグラン城塞>は千年凍国<グリザニア>に対抗する為に生み出された要塞なんだよ。

 耐寒性に優れているだけじゃない。

 建築素材に対する魔導耐久付与もある上、参戦した数多のガーダー達が常在しているので守備力も高い。

 すぐに陥落したりはしないはずだ」

「ん。事前に悠馬に聞いてた通り、迎撃に出てくれてる。

 物見の水晶を見るまでもなく互角以上どころか優勢。

 取り乱して本当に申し訳ない」

「ティナは卓越した力を持つけど実戦慣れしてないから仕方ないよ。

 それに今回はティナの直感が効かなかっただろう?」

「! どうして分かるの?

 確かにいつもの直感が作用しなくて完全なる奇襲を受けた」

「分かるんだよ、俺には。

 これは推測なんだが……多分ティナの神懸かり的な危機回避能力をみせる直感は、世界干渉可能な上位存在による祝福――つまり加護なんだよ。

 敵はそれを打ち消す、っていうか上回る加護持ちなんだ。

 その場合――より上位存在による加護が優先される」

「――どういう事?

 ユーマは敵の正体について知ってるの?」

「こっちは今人里に着いて薬を確保したところだ。

 その際に近隣を侵略している国の名前を聞いた。

 永遠氷国<コキュートス>。

 多分それが襲撃者達の所属する名だ。

 敵は氷人形の軍勢なんだろ?

 氷のエレメントに根差す力である以上、間違いなくその統治者である女王配下による攻撃だと思う。

 こっちでも一波乱あったから、その報復なのか……

 それとも氷原に目障りな建物だから襲われているかは不明だけどな。

 もう少し持ちそうか?

 レミットの容態は?」

「レミットは薬が効いたのか症状は安定している。

 無茶をしなければ急変はしないと思う。

 戦況はさっきも伝えた通り現在は優勢。

 結界術も駆使すれば1時間は余裕。

 でも私じゃ状況を打破する決定打がない――」

「心配するな、ティナ。

 この前教えたアレ、出来るか?」

「アレは――」

「同期と座標は俺がやる。

 こっちから俺が全てやれば最適なんだろうけど……その場合、レミットが置いていかれる。

 アレはあくまで個人を対象にするものだからな。

 空間ごと飛ばす魔導学院とは違う」

「でも――正直自信が無い」

「大丈夫だ。

 俺が信じるティナなら出来る。

 えっと……ティナ風に言うなら絶対大丈夫、だよ?」

「む~~~……ユーマはずるい。

 ティナが断れないのを知って、無理強いをしてる」

「そうだな。すまない」

「許さない。

 だから今度、一晩付き合ってもらう」

「うえっ!?」

「……何かエッチな事考えてない?」

「イイエ。

 ソンナコトナイヨ」

「何故にカタカナ?」

「いえ、何となく」

「はあ……そういう意味じゃなくて私の話に付き合ってほしいだけ。

 私のレベルについて来れるのは残念ながら現状ユーマだけ。

 旅で私も大分溜まってる。

 しょうがないからユーマで妥協する」

「酷い言われ様だ」

「それで――返答は?」

「ああ、勿論OKだ。

 そんなんで良ければ付き合うよ」

「貴方はついて来れるかしら?

 本気を出した私のスピードに――」

「いや、それ元ネタ的に俺役立たずになるじゃん。

 雑巾になるじゃん」

「BLを読みながらではユーマと語れない。

 受け攻め談義しながらでは妄想出来ない――」

「無駄にオサレ度が高い台詞で何を言ってるんだ、ティナ!

 そもそも何でBLボーイズラブがあるんだよ!

 俺を何に巻き込もうとしてる!」

「いったい――

 いつから私が腐女子じゃないと錯覚してた?」

「恐ろしい宣言をするな!」

「怪物(妄想)と戦う者は常に気を付けなくてはならない。

 深淵(BL)を覗き込む時――自らもまた深淵に見られているのだ」

哲学者ニーチェの言葉を借りるほどの何があった!?

 っていうか、マジでお前とシオンって何なのよ?」

「ん。全て父の受け売り」

「このシリーズのラスボスは――ティナの親父さんかもしれんな」

「という訳でユーマ、約束」

「ああ。俺にどれだけ出来るか分からないが――

 ティナの話に付き合うよ」

「ん……言質は取った」

「怖いな(苦笑)

 じゃあ……1時間後に」

「了解。頑張る」

 

 明るく弾んだティナの返答。

 悠馬は抑え切れない一抹の不安を覚えるのだった。





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