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テンプレ異世界召喚に巻き込まれたデュエリストですが、持ち前の魔導書(デッキ)で何とか頑張ってます  作者: 秋月静流


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13話 襲撃

「永遠氷国<コキュートス>……ですか」


 その名を聞いた悠馬が思い浮かべたのは、<サガ>の世界設定である千年凍国<グリザニア>の話だ。

 強大な召喚術師である女帝によって引き起こされた災厄。

 類稀なる彼女が召喚した氷河期の様な大寒波。

 世界を覆い尽くしたその力の前に、多くの者が寒さと飢えで散っていった。

 更に人々を襲う女帝配下の命無き氷人形達による軍団。

 各国はそれらに対抗する為、同盟<アライアンス>を組み対抗するのだが……というのが大まかな内容である。

 悠馬がこの琺輪世界に転移し一月以上が経過したが、度々驚かされるのがサガの世界設定との共通項だ。

 召喚術師<デュエリスト>

 魔導書<デッキ>

 守護者<ガーディアン>

 用語だけに留まらず、人物や政治背景など同一ではないも近似している。

 メイアの言っていた世界間の融和が関係しているのか、サガのカードデザイナーがこの世界の事を知っているのかどうかは分からない。

 ただ現状として重要なのはこれから起こり得る事をある程度であるが悠馬が把握している、という事実である。


「永遠氷国もですが……その氷嵐の女王の目的などは分かりますか?

 あといつ頃から侵略行為が始まったのでしょう?」

「建国宣言自体は半年も前に行われていました。

 女王配下のガーダーが近隣の街を巡り宣誓して回っていたのです。


『我が名(国)を讃えよ。

 我が名に従え。

 さもなくば吹雪と共に体を蝕む呪いを賜ろう。

 それでも理解出来なくば、威を以て示す』と。


 何を馬鹿な事を。

 こんな辺境の地に物好きな。

 周辺各国が認めるが訳が無い。

 誰も本気にはしていなかった。

 本格的な侵略が始まったのは二か月ほど前でしょう。

 他の街と連絡がつかなくなり物資の流通が滞る様になったのは。

 ここピエタは大陸最北にて人族の住める最果ての地。

 ライフラインの多くを輸入に頼っています。

 少ない物資をやり繰りし、それでも何とかやって来たのですが――

 急遽倒れ、診療所に次々と運び込まれる住人達を診て理解しました。

 あの言葉は真実であったのだと。

 決定的だったのは様子見に出た物見の兵が告げた各街の状況。

 蹂躙され家畜の様な扱いを受ける人々達の苦境。

 降伏し恭順すべきか意見が分かれましたが……

 全ては遅過ぎました。

 間も置かず我々も攻め込まれ――

 半日も掛からず制圧されました。

 それからは――ご承知の通り悪夢の日々です。

 些細な事で隣人達が殺されていくのをただ眺めるしかなかった。

 だからユーマ君にアイレス君。

 この悪夢にピリオドを打ってくれた君達には――

 どれだけ感謝しても仕切れないのだ」

「お父さん……」


 暖かい飲み物を厨房から持って来たミゼリアは皆にコップを配り終えると父の隣に腰掛け肩に手を添える。

 力無く項垂れながらその手に自らの手を重ねるコーウェル。

 いつも自信と慈愛と威厳に満ちた父。

 だがこの時ばかりは憔悴しきったその姿が小さく見えた。

 悠馬達も無言でコップを傾ける。

 熱いスープがじんわりと胃の内を温めていくのが実感できた。


「つまらない話に付き合わせてしまいましたな」

「いえ、そんな事は――」

「こちらこそ聞きづらい事を尋ねてしまい申し訳ありません」

「そんな事はありませんよ。

 さて、それでそのレミットさんですが……

 この薬をどうぞ」


 コーウェルは立ち上がると応接室にあった戸棚を開け、一包みの粉末を悠馬達に手渡す。


「これは?」

「私が調合した氷霊病の対処薬です。

 完治は望めませんが進行を大幅に遅らせる事が出来ます。

 まだ未完成品ですが臨床試験は特に問題ない様ですな」

「問題ない様ってまさか……」

「ええ。

 恥ずかしい話ですが……私自身が罹患してしまいましてな。

 患者ならぬ自分の身体へなら多少の無理は通せるので」


 絶句する二人に何気なく語るコーウェル。

 しかし新薬の開発には途方もない手間と――危険が伴う。

 安全に配慮するとはいえ、どんな副作用が起きるか分からないからだ。

 通常なら高額の報酬に十分危険性を告知し徐々に試行する。

 だがその様な時間と猶予がこの街にはなかったのだろう。

 迷うその間にも患者は増え続ける。

 自責と使命感に挟まれた故の無謀ともいえる行為――

 決してそれは褒められる行為ではない。

 されど彼の医師と矜持と意志に対し、悠馬達は心から敬意を贈る。

 とその時、悠馬の持つカードフォルダーが微細に震え警句を発する。

 それは召喚術師が行える力の一つ――

 魔導書を通じた会話だ。

 距離に関係なく術師同士でリアルタイムな通話を可能とする。

 対象となる魔導書は一つのみ。

 双方の所持者の同意が必要という制約はあるも、使い捨てスマホの様な運命石とは違いデメリットは全くない為、召喚術師間で重宝されていた。

 悠馬の登録先は勿論レミットに付き添って貰っているティナだ。

 嫌な予感を覚えつつも悠馬は通話に出る。


「待たせたな、ティナ。

 何かあったか?」

「ユーマ、緊急事態発生」

「何!?

 どういう事だ!?」

「襲われている……」

「え?」

「先程から――

 消息不明の氷人形の軍勢に要塞が襲撃を受けている!」


 沈着冷静を常とするティナにしては珍しい――

 自制できない動揺した悲鳴が応接室に響き渡るのだった。






お気に入り登録ありがとうございます。

永遠氷国と千年凍国の表記を逆にしましたのでご了承下さい。


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