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テンプレ異世界召喚に巻き込まれたデュエリストですが、持ち前の魔導書(デッキ)で何とか頑張ってます  作者: 秋月静流


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12話 侵攻

「娘を救ってくれたそうで……本当に感謝しても仕切れない。

 改めて礼を述べさせてもらう」


 ミゼリアから話を聞くなり、悠馬達に深々と頭を下げる男性。

 白衣を着込んだ姿は実に自然体で、長年医療に携わった者独特の安心感――

 この人なら大丈夫……そう思わせるような人柄を窺わせた。

 年下で余所者である悠馬達に対する篤実な態度からもそれは垣間見れる。

 彼こそ、このピエタで唯一の医師コーウェル・ウェンディその人であった。

 元々は辺境をさすらう巡回医師だったが、無医地区であったピエタ周辺の人々に乞われこの街に根を下ろしたらしい。

 診療所の奥にある応接室に通された悠馬達は、感謝の言葉と共にコーウェルからそんな事を聞いた。

 どうやら自宅も兼ねているらしく暖炉やテーブルなどの調度品も置かれている。

 上質なソファーの感触に恐る恐る腰を下ろしながら、悠馬もミゼリアの身に起きたトラブルを客観的に説明する。


「君達がいなかったら間違いなく娘は慰み者にされた上で殺されていたな。

 本当にありがとう、ユーマ君にアイレス君」

「いえ、間に合って良かったです」

「本当ですわ」

「それで……病人がいるとか?」

「ええ。自分達の連れなんですけど」

「ふむ。症状を聞かせてくれるかね?」

「はい、昨夜から……」


 悠馬はレミットの症状を事細かく説明する。

 アイレスも処方した薬の内容と薬効を補足する。

 話を聞いたコーウェルは眉を顰め難しい顔をする。


「話を聞いた限りだと疲労による風邪に思える。

 だがアイレス君の処方した薬で快癒しないのならば別の可能性があるな。

 確定は出来ないが……多分<氷霊病>だ」

「? 何ですか、それは?」

「氷嵐の女帝と呼ばれる召喚術師が吹雪に乗せて撒き散らしている呪詛だ。

 内科的手法や薬効では一時しのぎにしかならない。

 高熱と倦怠を繰り返し、最終的には衰弱して死に到るという恐ろしい病魔だ」

「そんな……レミット様に超常の力が効くなんて」

「何とかならないですか?」

「女王の呪詛を解呪することが出来れば問題ない。

 だがその為には、拡散されているとはいえ希代の術師である氷嵐の女帝の呪力に打ち勝つだけの力が必要だ。

 一介の医師である私の手には余る」

「それは例えば――

 召喚術師の使うフォースフィールドでも防げないものなのでしょうか?」

「この病魔の厭らしいところは空気そのものを病原体へ変容させてしまう事だ。

 位階値を上げるフォースフィールドをも上手く突き抜ける。

 超常でなく通常の自然の影響下にあるもの、と詐称する訳だ。

 その分個人の抵抗力でレジストすれば対抗できるが。

 しかし頑健な成人男性ならともかく――

 女子供など弱い者ほど罹患しやすい傾向が見られる。

 現にこの街も既に10人に1人は感染してしまっているのが現状だ。

 戒厳令下にあったので満足な治療も出来なかった。

 ユーマ君はあいつらも打ち倒してくれたのだろう?」

「お嬢さんを助ける上での成り行きですがね。

 奴等は自らの罪状に相応しい罰を受けました」

「そうか……ここも占領されて半月。

 その間に多くの者が理不尽に殺された。

 私の知り合いも片手では足りないくらい死んだよ。

 兵士に対し無礼を働いたとか、口答えしたとか些細な理由で。

 人命を救う医師としては失格なのだろうが……

 あいつらが報いを受けたならそれは因果応報としか言い様がない」

「そうであれば俺も救われます。

 人の命を間接的にとはいえ奪った事に変わりはない訳ですし。

 ただ――戯れに命を啄む外道どもに、基本人権はありません。

 今後同じような輩がいれば俺はやはり断固として阻止に動きます」

「頼もしい返答だな。

 君は昨今の召喚術師が忘れている矜持を持っているらしい」

「学びました。

 召喚術師の後始末は召喚術師が行う様に、と」

「ほう。どなたかね?

 良ければ聞かせて頂きたい」

「紅蓮の召喚術師……

 ドラナー・チャンから」

「なんと! 彼を知ってるのかね!?」

「? 知り合いですか?」

「昔、南方地域を巡回中に命を救われた事がある。

 妖魔に襲われた私を損得も考えず助けてくれたよ。

『あっしには一銭にもなりやせんが……考えるより手が出ちゃいやした』

 と陰気な苦笑を浮かべながらね」

「ああ、その物言い。

 間違いないですね」

「彼は……今どこに?」

「先日まで一緒に魔導都市にいました。

 今はランスロード皇国に行ってると思います」

「そうか、息災ならばいい。

 いや……しかし彼の縁者が娘を助けてくれるとはね。

 どこで縁が繋がっているか分からないものだ」

「まったく同感ですわ。

 これもまた因果の巡り合わせ。

 良き行いには良き結果が伴うのでしょう。

 ではわたくしからも一つ尋ねて宜しいでしょうか?」

「ええ、どうぞ」

「あの者達は何者なんですの?

 悪逆非道な行いを是とする兵士達……見覚えのない紋章。

 わたくしの知るどんな国のものとも違います」

「ああ、その説明がまだでしたな。

 この街ピエタが覇権国家ロマニアと連合国家ヨルムンドの国境干渉地域にあるのは御存知ですかな?」

「いえ」

「そうですか。

 まあ幾度か小競り合いはあるも……

 貿易などを行うには格好の場だったんですよ、ここは。

 そこに突如として侵攻してきたのがあいつらです。

 半月前に宣戦布告もなく攻め込まれ、満足な防衛設備もないピエタは無残に蹂躙されました」

「……あいつら、とは?」

「永遠氷国<コキュートス>。

 氷嵐の女帝こと……

 氷の女王アナスタシア率いる召喚術師によって構成された新興国家です」







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