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テンプレ異世界召喚に巻き込まれたデュエリストですが、持ち前の魔導書(デッキ)で何とか頑張ってます  作者: 秋月静流


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10話 鉄槌

 デュエル決着後。

 掛札アンティの清算を済ませた悠馬はラズへ向かい歩み出す。

 みっともなく四つん這いになり逃げだそうとしていたラズだったが、突如目の前に立ちはだかった悠馬に驚愕しひっくり返る。

 シオンの力に晒されたせいか、その全身は異様にやせ細り、髪は色素が抜け落ち白髪に染まっていた。

 まるで急速に老化したかの様である。

 無理もあるまい。

 これこそ荒廃の王という異名の由縁であった。

 全ての生命存在イデアに対するエナジードレイン効果。

 恐ろしいのはその力が物理的なものだけに留まらず、概念的なものにすら及ぶという事だ。

 フォースフィールドに守護まもられた召喚術師も例外ではない。

 位階値の詐称による強固な絶対障壁すら吸い尽くす貪欲な力。

 世界の均衡を乱す異物・異端を是正し、結果として消去無効化するレミットの力とは似て非なるもの。

 半物資の様に存在へ対する致命的クリティカルな反存在。

 それがシオンの本質であり根源であった。


「ひいいいいいいいいいい!

 た、頼む殺さないでくれ!」


 無言で迫る悠馬へ間髪入れず土下座をし、命乞いを始めるラズ。

 先程までの傲慢に満ちた虚飾は剥がれ落ち哀れなくらいである。

 悠馬はそんなラズの狼狽を無機質な目で窺っていたが、大きな溜息の後、しみじみとした口調で語り出す。


「アンタはさ――」

「はいいいいいいい?」

「そうやって命乞いをした人達を助けた事があるのか?」

「――うえ?」

「力があるっていうのは確かに凄い事だ。

 我儘を押し通し――

 気に入らないものを叩き潰し――

 理不尽を跳ね除け、異を唱えられる」

「だ、だろう?

 お前よく分かってるじゃん。ボクはさ――」

「――だからこそ!」

「ひっ!」

「だからこそ……

 力ある者は自らに問い続けなくちゃいけない。

 力の正しさ、その意義を。

 特に俺達召喚術師は人よりも大きな凶器(狂気)を持っている。

 ならば抑制すべき自制の刃……

 破壊衝動を抑える鞘(理性)もちゃんと備えなくちゃいけないんだ。

 アンタにその覚悟はあったのか?

 誰かを蔑ろにする以上、

 誰かを殺める以上、

 自分がその対象になっても受け入れられるんだろ?」

「や、やめ……助け……」

「アンタ達を殺しはしないさ……俺はな。

 けど、俺は街の人々に問うぞ?

 お前達の所業と性根を。

 誰にも恥じぬ行いをしてきたなら問題ない筈だよな?

 まあ、最も――」


 ゆっくりと悠馬は後ろを振り返る。

 そこには事の成り行きを静観していたピエタの人々が集まってきていた。

 堪えに堪えていたのであろう。

 歯を食いしばり憤怒を抑え、手に手に武器を持っている。

 大切な両親を殺された者。

 愛する恋人を殺された者。

 掛け替えのない子を殺された者。

 関係は違えど結末は一つ――死だ。

 そこに意味があるならまだ救いはあった。

 街を守り死んでいった守備兵ならばいい。

 だが――実際はただの戯れだ。

 意味も理由もなくその後に殺された多くの人々。

 配下の兵士達を含むラズ達に、何故こんなに殺した?

 と尋ねればこう答えるだろう。

 面白いから、と。

 泣き叫び慈悲を乞い大事な存在達の助命を求め縋る。

 無様なその姿が滑稽である、と。

 強大なラズの召喚術を背景に虐殺を繰り広げてきた兵士達。

 彼等はその報いを受け様としていた。


「今更確認するまでもないか」


 魔導衣を翻し歩み去る悠馬。

 悠馬がデュエルの勝者としてラズに命じたのは半日間の魔導書関連能力の禁止。

 デュエルのペナルティとしては最も軽い部類に入る。

 だがそれは通常ならば、だ。

 血に飢えた暴徒を前にフォースフィールドを含む能力の禁止。

 それは事実上の死刑宣告に過ぎない。

 許しを請い、泣き叫ぶラズ達へ振り下ろされる怒りの鉄槌。

 自分達がそうであった様に、その願いが聞き入れられる事は無かった。

 苦悶に満ちた絶叫を背後に聞きながら悠馬は深い溜息をもらす。

 真っ白に染まり立ち昇っていくドラゴンブレスの様なその吐息は――

 まるで行き場のないやる瀬なさを物語る様に揺れ動くのであった。


 





 少し鬱展開ですかね。

 次話からは助けた少女を交えた通常展開になります。

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