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テンプレ異世界召喚に巻き込まれたデュエリストですが、持ち前の魔導書(デッキ)で何とか頑張ってます  作者: 秋月静流


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34話 暗躍

「失礼致します、ロクサーヌ様」

「お帰り、リカルド。

 首尾はどうだったんだい?

 ……とまあ、聞くまでもないか。

 どうやらお前一人らしい」

「はい、残念ながら」

「お前ほどの男の誘いを断るとは、ね。

 レミット殿も随分身持ちが固い事だ。

 益々彼女に興味が湧いてきたよ」

「ロクサーヌ様ほどの方に見染められとは……

 大変ですな、彼女も」

「心にもない世辞はよせ」

「本心なのですがね。

 しかし会談された時の沈痛な面差しとは打って変わっておりまして……

 花の様な笑顔を浮かべておりましたぞ」

「はは、それは少し妬けるな。

 彼女は我らの目的に必要なピース。

 出来るなら手元に置いて愛でたかったのだが……

 まあ、いい。

 代役が利くなら構わないさ。

 精々大切に守り通してもらおう。

 レカキス一族にはこちらからも牽制をしておく」

「御意」

「しかしここにきてその選択肢が発生するとはね……

 やはり例の召喚術師くんのお陰かな?」

「ええ。

 皇家固有の運命を見据える力<宿命眼>。

 因果すら超越するロクサーヌ様の頸木くびきを離れるのは世界改編能力所持者のみ。

 誰の差し金かは知りませんが、それはこの世界の者では叶いません。

 宿業を持たぬ異世界召喚者だけがそれに該当します」

「例えば『彼』の様に――か?」

「左様でございます」

「彼は非常に興味深い存在だ。

 あれほどの力を持ちながら――

 何故、感情に惑う?

 何故、我らの同志となった?」

「さあ?

 彼には彼なりの思惑があるのでしょう」

「ふむ。まあいい。

 彼の参入を以て必要な欠片は揃った。

 勇者と英雄。

 宿命眼と詩編改竄。

 召喚術と事象消去。

 約束の刻は近い」

「――はい。

 世界は変革を求めておりますれば」

「うむ」

「ところで――ロクサーヌ様」

「ん?」

「足元のそれは?」

「ああ、これか?

 勇み足を踏んだ大馬鹿者にお仕置きをしたところだよ。

 学院がレカキスと繋がるくらいなら大目に見たが……

 扱いやすい駒であったエネウスを謀殺するだけに飽き足らず、

 くだんの召喚術師くんにまで容疑を掛けるとはね。

 流石に目に余ったので対処した」

「賢明な御判断かと」

「栄華を求め取り入ろうとするのは個人の勝手だ。

 が 愚者は愚者なりに領分を弁えてほしいものだ」

「まったく同意見ですな。

 まあこの手の輩はどこにでもおります。

 所詮は誘蛾灯に群がる蟲。

 気にしていても仕方ありますまい。

 それで、如何致しましょう?」

「適当に捨ててきてくれるか。

 こやつの抱えし運命は全て立ち消えた。

 放っておいてもこのように汚物を撒き散らすだけの廃人だが……

 ここはサーフォレム魔導学院。

 神代から続く旧世界の遺物が眠る場所。

 万に一つでも起こされると面倒だ。

 お前の真の力を使えば問題あるまい?

 英雄リカルド・ウイン・フォーススター」

「ははっ。

 それは皮肉にも聞こえますが……尽力致しましょう」

 では、失礼」

「ほう……相変わらず見事な手並み。

 人一人がいた痕跡をまったく残さず掻き消す、か。

 雷の勇者もそうだが……

 お前が敵に回らなくて本当に良かったよ」

「恐れ入ります」

「あやつは一連の事件の首謀者として、失踪した事にする。

 当たらずとも遠からずだ、別に構わないだろう。

 それで、レミット殿らの次の行く末は?」

「彼の願い通り、始まりの地<ラグナロード>に転移したようです」

「あの魔導師の導きか?」

「おそらくは」

「ふん、我を凌駕する人心把握能力とはな。

 いや……あの停滞の魔導師はそんな事を意識してすらいまい。

 精神制御に長けた術師に対して施行される無意識下の刷り込み。

 大したものだな。

 まあ良い、すべては動き始めた。

 運命の歯車はもはや誰にも止められぬ。

 この世界に――終焉を。

 新たな世界に――変革を。

 秘匿されし我らの名の下に」

「六界将<ヘキサグラムグローリア>の名の下に」












































「どういう事ですか、カナメ!

 貴方は言った筈です。

 魔導都市で彼女を拘束し、場合によって始末すると!

 それが緊急用転移によって脱出されたですって?

 盟約で縛り付けたノイマンは行方不明……

 更に件の召喚術師は未だ存命と聞きました。

 対召喚術師銃を持たせ派遣したイシュバーンはどうなったのです!?」

「さあ? 知りませんね」

「えっ?」

「僕に黙って暗躍するからですよ。

 申し訳ありませんが……そろそろ潮時かな。

 ここらで契約を破棄すると致しましょう。

 さすがにもう限界なので、ね」

「カナメ……

 貴方は本当に理解してるのですか!?

 まさか忘れた訳じゃないでしょうね?

 私の命に逆らえば、貴方の心臓に打ち込まれた呪詛が速やかに貴方の命を――」

「ああ、これですか?

 こんなものはね……

 正直、いつでも外せたんですよ。ほら」

「まさか!

 でもこの反応はまさか!!」

「大陸中に張り巡らされた貴女達の組織網はとても便利です。

 なので十二分に活用させて頂きました。

 ただ……もう利用価値がありません。

 僕の真の目的の為には、むしろ邪魔です。

 目障りな召喚術師は始末し、有望な魔導書の力は吸収しましたし」

「な、何を言って――」

「魔力を遮断する召喚術師に対し別系統の力、呪詛を用いる。

 さすが魔導書を歴代管理してきたレカキス一族。

 利点も弱点もよく心得ていますね。

 けど……肝心な事に対し準備は果たして万全ですか?」

「や、やめなさい、カナメ――

 貴方はもしや――」

かやりの風って、言うんでしたっけ?

 呪詛に付き纏う最悪のしっぺ返し。

 完結されなかった呪いは累乗し術者に返り牙を剥く。

 人を呪わば穴二つといいます。

 因果は巡る糸車。

 明日は分からぬ風車。

 さあ――

 僕を縛っていた呪いが、今……貴女に返ります」

「や、やめ――ひっ!」

「? あれ?

 もしもし?」

「…………」

「おやおや……(溜息)

 まさか対抗手段を用意していなかった?

 いや、こういった事態を想定していなかったのですか?

 ――何て呆気ない。

 完全優位な立場に慣れ切っていたんですね。

 自らの力に驕った結果がこれですか。

 まあ、仕方ない。

 他人を踏みにじるには自分も踏みにじられる覚悟が必要です。

 貴女にはその覚悟足りなかった。

 与えられた環境に満足して自己を邁進出来なかった。

 残念ですがその程度だったのでしょう。

 さようなら、いままでありがとうございました。

 貴女が残してくれたものは全て……

 僕と悠馬の為に使わせて頂きますから。

 悠馬……

 フフ……ねえ、悠馬?

 君に届くかな、この想いが。

 僕は君の為ならこの世界も何もかも全てを投げ出そう。

 全て壊し尽くしてみせよう。

 あの者達に協力し、全てを欺いてみせよう。

 だからお願いだ、悠馬。

 僕のこの想いを踏みにじる事だけは……

 僕のこの願いを打ち砕く事だけは……

 どうか……

 どうかしないでね?

 あはっ。

 あははは。

 あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」




 氷雪が吹きすさぶ天空にて、

 ただ独り狂い嗤う七色の召喚術師。

 おかしくもどこか哀しいその哄笑と慟哭に応える者は……

 ここには誰もいなかった。

 否、誰でもいいわけではないのだ。

 乾いた彼の欲望を満たす事が出来るであろう、

 ただ一人を除いては。         

 お気に入り登録ありがとうございます。

 次話1話分を書き足しし、読みやすくしてみました。

 かなりヤンデレチックな彼の想い。

 果たして悠馬に届くのでしょうか。

 魔導都市編である二章<魔導>、これにて終了です。

 長い間お付き合いいただきありがとうございました。

 

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