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テンプレ異世界召喚に巻き込まれたデュエリストですが、持ち前の魔導書(デッキ)で何とか頑張ってます  作者: 秋月静流


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33話 異形

「引いてくれた……って事か」


 何が彼の琴線に触れたかは分からない。

 だがこの場は引いてくれた。

 敵対する事なく悠々と去っていくリカルドの後ろ姿を見送る悠馬達。

 その胸中を過るのは総じて安堵だった。

 特に直接リカルドとやり合った悠馬は誰よりも実感している。

 ランスロード皇国の英雄、リカルド・ウイン・フォーススター。

 次に勝利を拾えるか否か。

 可能性としては五分以下だろう。

 いや、そんな甘い見通しでは駄目だ。

 奇策でなく正面からもう一度ぶつかり合った場合、現状ではデッキ構成や特性のネタが知れた分、かなり不利だと思われる。

 特に先程のデュエル。

 決して手を抜いている訳ではないだろうが、どこかこちらの実力を見据えようと試していた部分がある。

 実戦で磨き裏付けされたプレイングの端々から漂う濃厚な重圧感。

 本気のリカルドはあんなものではない。


(けど――それはこちらも同じだ)


 拳を握り締め無意識の内にデッキを触る悠馬。

 負け惜しみでない。

 死力を尽くすのがデュエリストの礼儀。

 とはいえ、悠馬も全てを出し尽くした訳ではない。

 リカルドの本気は知らないが、悠馬もまだ秘策を残している。


「行こう、ユーマ」

「……ああ、そうだな」


 自分の腕を抱え込み不安そうに見上げるレミットに優しく応じながら、悠馬は心の中に燈る闘志を抑えきれないでいた。










「ここです」


 剣皇姫の台座下を探ったメイアが何かを操作する。

 すると台座自体が大きくスライドし、階段が露出した。

 中は魔導照明が自動的に点灯し地下へ続く道を示している。


「うあ~凄い仕掛け」

「随分と凝った造りですねい。

 こんなのコスパ的に採算合わないでしょうに」

「ん。隠し部屋は浪漫。

 無意味に派手なのが望ましい」

「実用性が皆無だと思うが……」


 口々に感想を述べながら階段を下りる一同。

 下りた先は石造りのホールになっており中央には翼の生えた女神像と複雑な刻印の為されたレリーフが据えられている。


「あれが緊急用転移装置です。

 女神像の前で行先を言ってレリーフに乗ればレムリソン大陸ならばどこへでも転移する事が出来る優れものです」

「大陸内ならどこへでも!?」

「はい」

「それって……もしかしなくても、とても危険な代物なんじゃ……」

「ああ、軍事利用される事を懸念しています?

 大丈夫ですよ、ユーマさん。

 これにはあくまで緊急用の転移装置。

 裏技的な使い方である、そういった使用目的や事態を避ける為のセーフティが掛かっていますから」

「セーフティ?」

「はい。

 残念な事に同一座標には一度に4人までしか転移出来ません。

 さらにランスロード皇国の秘宝、転移宝珠とは違い、人口密集地や魔導防御の為された場所……王宮や軍事施設内部にも転移出来ません。人気のない郊外に勝手に飛ばされます」

「それが分かってるって事は……

 すでに試した、という事に見て取れますけど」

「さて、どうでしょう?」


 上品に口元を抑え微笑むメイア。

 たた眼鏡の奥に隠された眼は笑っておらす、悠馬は魔導学院の暗部を覗いた気がした。


「さあ――時間ですよ、皆さん。

 お急ぎ下さい。

 リカルド様はああ言ってましたが、物分かりの悪い輩はどこにでもいます。

 聞き分けの無い追手がもうすぐここに来る頃でしょう。

 ワタシも釈明を述べる為、そろそろ学院執行部に赴かなくてはなりませんし」

「……すみません、メイアさん」

「っ?」

「俺達の騒動に巻き込んでしまって」

「ああ、気にしないで下さい。

 ワタシはワタシの心情に従って動いています。

 決してユーマさん達に同情したとかそういう訳ではありません。

 色々ワタシ自身の思惑もありますし」

「思惑?」

「ええ。

 ユーマさんにはもっと世界を――

 この琺輪世界の危機を知ってほしいのです。

 転移先というか……今後の行先はお決まりですか?」

「いえ、正直ここが旅の果て……

 魔導都市に来れば、全て終わると思ってました。 

 あわよくば地球に帰る術も手に入るかも、と」

「力になれず申し訳ございません。

 ならばユーマさん、始まりの地を目指してみませんか?」

「始まりの地?」

「はい、この世界創生の地であり神々の終焉の地。

 黄昏の大地<ラグナロード>へと。

 あそこならばレミット様に関する謎や地球へ渡る術も手に入ると思います」

「――分かりました。

 なら当面の目標はそこにしたいと思います。

 皆もそれでいいかな?」

「うん。あたしはユーマと一緒ならばどこへでも」

「わたくしもレミット様が行くならばどこへでもご一緒致します」

「ん。ユーマの正妻はレミットに譲った。

 けどまだ側室が空いている。

 よってこれからも同行し好感度を稼ぐ予定」

「な、何を言ってるのよ!」

「? 違うの?」

「ち、違わないけど……」


 ティナの問いに顔を真っ赤にして肯定するレミット。

 釣られて悠馬も顔が上気するのを感じた。


「あらあら。

 若いっていいですわね~」

「ん。らぶらぶオーラ満載過ぎ」


 暇を持て余した奥様の井戸端会議の様に囁き合うアイレスとティナ。

 そんなバカップルとは対照的に浮かない顔をしているのはカレンだ。

 何か迷うそぶりを見せたカレンだったが、決意の表情と共に口を開く。


「私は……行かない」

「え?

「――カレン?」

「申し訳ございません、レミット様

 すまない、ユーマ殿にみんな。

 エネウス様の話を聞いた時から考えていた事なんだ。

 私は一度皇都に戻ろうと思う。

 戻って我が主君、エネゴリ様の下に向かいたい。

 無論、私が行った所で何が出来る訳じゃない。

 しかし剣を捧げた主の下で辛苦を共にする事は出来る筈。

 それが騎士たる私の役目だ。

 私は私の胸に宿るこの思いをこれ以上譲れない」


 カレンの言葉に込められた思いに押し黙る一同。

 慰めの言葉や引き留めの言葉が喉元までせり上がる。

 ただ真摯なその思いに中途半端な言葉は届かないだろう。

 閉眼し黙っていた悠馬だが、目を開き正面からカレンを見据える。


「決意は……固いんだな」

「ああ」

「なら――

 俺達に出来る事はカレンの事を信じるだけだ。

 ただ……」

「おっと、そこまで。

 仕舞いまで言わなくてもいいですよ、兄さん。

 カレンの姐さんの道のりには多くの苦難が待ち受けている。

 なら――微力ですが、紅蓮の召喚術師であるあっしが露払いをしやしょう」

「いいのか、ドラナー」

「あっしと兄さんの仲じゃないですか。

 それにあっしは望んで姐さんと共に行くんですよ」

「ば、馬鹿!

 それをバラすな、ドラナー」


 韜晦したご隠居みたいにおどけるドラナー。

 瞬間、先程からかわれたレミット同様に顔を赤らめるカレン。

 周囲に形成されるバカップル特有の甘々空間。

 他のメンバーも驚きの声を上げる。


「え~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!」

「い、一体いつからだ!?」

「驚きですわ……

 あの堅物のカレン様が……」

「フフ……実は仄かなラブ臭を前から感じていたり」

「どんだけ敏感なんですか……」


 大騒ぎする一同を余所に、カレンはドラナーの手を掴みレリーフに乗る。

 恥ずかしさから逃げる意味もある。

 だが顔に浮かぶ笑みを見る限りドラナーの同行が嬉しいのだろう。


「じゃ、じゃあ――ユーマ殿。

 レミット様を宜しく頼む。

 くれぐれも粗相のないようにな!」

「ああ、勿論。

 俺はこれからもレミットを守り抜く。

 共に歩むって、そう決めたんだ」

「……漢の顔になったな。

 今のユーマ殿なら安心して任せられる。

 では私達も行くぞ、ドラナー!

 たまには貴様も男らしくリードしてみせろ!」

「はいはい、了解しやした。

 では兄さん――また機会がありましたら」

「ああ――カレンを頼むぞ」

「カレン、お父様をよろしくね!」

「どうかご無事で」

「ん。イチャイチャは程々に。

 先祖代々より伝わるリア充爆発の加護を授けたから」

「祝福なのかやっかみなのかよく分かりやせんが……

 ――まあ、この際いいでしょ。

 それではランスロード皇国首都へ!」


 ドラナーの声に応じ輝きを上げるレリーフ。

 瞬く間もなく、二人の姿は掻き消えた。

 皇国へと瞬間転移したのだ。

 一月掛けて苦難の旅をして来た悠馬。

 目にしたそのあまりの利便性に正直思うとこもあった。

 しかし今は火急の時。

 素直にその恩寵に委ねることにした。


「じゃあメイアさん。

 俺達も行きます」

「はい。お気をつけて。

 ただ――ユーマさん。

 最後にこれだけは覚えておいてください」

「? 何ですか?」

「あの時はエネウス様に遮られましたが……

 ワタシ達魔導学院が危惧するのはレミット様の力ではありません」

「えっ!?

 だって――」

「いるのです。

 世界の融和と侵食がゆっくりと進む中――

 その陰に蠢き、滅びへ導く真の敵が」

「真の……敵?」

「――はい。

 歴史の端々に姿を覗かせる超越者達。

 おぞましきその名は……」


















「六界将<ヘキサグラムグローリア>

 そう呼ばれる、比類なき力を持つ異形の集団です」









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