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5話 開戦

「くくく……」


 毅然とした悠馬の宣言に、思わずドラナーは苦笑を零す。

 そこに嘲りなどの意志はなく純粋に面白いから笑ったのだ。

 しかし相対する悠馬は自分の決意を馬鹿にされたかと、頭に血が上る。


「何がおかしいんだ!」

「いや、兄さんを馬鹿にしてるわけじゃ~ありませんよ。

 ただ……若いな、と思いました」

「え……?」


 憤然とする悠馬へ穏やかに応じるドラナー。

 その視線は悠馬を通しどこか遠いところを見詰めていた。

 果たしてそれは通り過ぎた過去か何なのか。

 悠馬に詳しい事は分からない。

 ただ目の前に立つ男が本気になったことだけは分かった。

 ドラナーから伝わってくる気迫……

 それは幾度となく死闘を繰り広げた強者達と同じ、デュエリストの証。


「血と焔に誓い、今ここに誓約す。

 我が名はドラナー・チャン。

 汝、クオン・ユーマの申し出を受けよう」


 召喚術師達の決闘誓約の成立。

 その瞬間――世界の全てが弾け、決闘を行う闘技場へと再構成される。








◇1ターン◇


 何もない荒涼とした大地に悠馬は一人で立っていた。

 遥か遠方にはドラナーの姿。

 空を覆うのは曇天の雲。

 この光景が果たしてどちらの意志で形成されたものかは分からない。

 召喚術師の決闘は激戦となる為、外部に被害を及ばさないよう術者の心象風景によって成り立つ特殊な結界内で行われるのが常であるからだ。

 ただこの場に立つ、その意味は理解している。

 結界を打ち破るにはどちらかの敗北のみ。

 だから悠馬は迷う事無く魔導書デッキを捲る。

 これから行うのは命を懸けた戦い。

 召喚術師たる自分達の死闘となるのだから。


「清き清廉なる大地に祝福あれ」


 デッキより現れ周囲を漂うのは魔導書の象徴である力の欠片(符)。

 絶大な力を秘めたそれを悠馬は手にし、大地へ注ぐ。

 その瞬間、荒涼とした大地は清められ白く輝く。


「出でよ!

 誇り高き孤狼<グレイウルフ>よ!」


 大地からの白き恩寵を受け、召喚陣が起動。

 悠馬の下に再び巨躯なる灰色狼が現れる。

 一方のドラナーは自分の足元を溶岩地帯に変えてこのターンを終えた。



 先手 ユーマ  手札 7⇒5

 後手 ドラナー 手札 8⇒7



◇2ターン◇


「行け、グレイウルフ!」


 悠馬の意を受け灰色狼は猛然と大地を駆ける。

 溶岩地帯を難無く走破し、ドラナーの身体を引き裂こうとする。


「甘いですね~」


 その瞬間、ドラナーは素早く魔導書をノック。

 中空に出現した符が紅蓮の焔となりグレイウルフを焼き尽くした。

 あれほどの巨体が瞬時に消し墨となる。

 遠くから見ても容易に分かる、恐ろしい炎だ。


「くっ!」

「まあ~所謂後の先、っというやつですな。

 さて……お次はどうします?」

「無論決まってるさ」

「ほお」

「祝福よ、連結せよ。

 聖なる結びを以って我は願う。

 出でよ!

 勇壮なる白き大剣の騎士<ブレイブナイト>よ!」

「おおおおおお!

 今、御身が前に!!」


 大地の祝福の後に召喚陣が起動。

 今度現れたのは大剣を持った白騎士だ。

 悠馬に呼ばれた事が嬉しいのか、大剣を掲げ忠節を誓う。

 その威容を苦々しい眼で見ると、ドラナーは溶岩地帯を広げ召喚陣を起動。

 灼熱の大地から姿を見せたのは火蜥蜴<サラマンダー>である。

 攻撃力防御力はあまりないも、厄介な能力を持っている。

 それは<纏いのブレス>というもの。

 攻撃か防御時に自動的に発動する恒常的なダメージだ。

 除去耐性のない者では近付く事すら容易ではない。

 悠馬は一連の流れで油断ならざる相手であることを再度認識するのだった。




>各ターンの開始時にデッキより1枚ドロー


 ユーマ  手札 6⇒4

 ドラナー 手札 7⇒5


 



 やっとターン制バトルに。

 次回決着予定です。

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