14話 焦燥
◇2ターン◇
「清浄なる実りよ、吾に祝福を。
騎士の誉れたる気高き叙勲を胸に、
集い来たれ<カラランズ騎士団>よ!」
マナとの契約後、2マナを用いて男が招いたのは2体の騎士達。
APDP共に高くはない。
だが非常に厄介な特殊能力を持っていた。
騎士団の名が示す通り、彼等は複数の混合体。
現界出来る数は2体のみだが……
つまり部隊ユニットとしての召喚となる。
これがどういうことかというと――
彼等は死ぬ事が無い。
正確に言えば死亡後、すぐに後続が補充されてしまうのだ。
連綿と続く騎士達の団結。
その意味を解釈し「特記:手札を一枚捨てる。カラランズ騎士団はターン終了時まで破壊不能を得る」という能力に変換されている。
勿論それは無敵の能力ではない。
白や黒などの色に含まれる追放系の除去呪文を使用すれば排除は可能。
だが悠馬の扱う紅色が司るのは破壊。
破壊不能に打ち勝つことは出来ない。
ガーディアンすら対処できないアンチデッキ能力持ちの顕現――
それは即ち天敵といえる。
魔導書を持つ手に力が籠る。
だがまだ勝敗が決した訳ではない。
最後の最後まで決して諦めない。
それはデュエリストとして最低限の矜持だ。
「まずはお手並みを拝見」
そんな悠馬を冷静に見据え、芝居がかった台詞と共に男は攻撃を命ずる。
男の指示を受け、槍を掲げるのは前のターンに召喚された兵士達。
鬨の声を上げながら悠馬の待つ闘技場へ駆けていく。
その先にあるのは3枚のシールド。
この全てが砕かれた時、悠馬の喉元へ敗北の刃が突き付けられる。
「荒れ狂え劫火。
我に仇為す者を屠る剣となれ……
其は<衝撃の火葬>!」
対する悠馬は紅デッキの基本、火力呪文をサモン。
悠馬の命じる『力ある言葉』に応じ手元の符が発光。
全てを燃やす劫火となり兵士達に襲い掛かる。
マナ効率に優れたそれはDP3000までのガーダーを瞬時に滅ぼす。
――筈だった。
男が、マナを使い果たした筈の男が――魔導書を掲げなければ。
「我が知識の欠片を代償に。
我に付き従う者達へ神の恩寵を。
これ即ち<神聖なる対価>なり」
マナが無い筈の男の魔導書が発光。
兵士達に襲い掛かる劫火を防ぐ、光り輝く防御膜となる。
目も眩む閃光の後、傷一つもない姿を現す兵士達。
「まさか……ピッチスペル!?」
驚愕する悠馬。
マナを使用せず手札やシールドを代償に発動する古代上位呪文。
それは悠馬が生まれる前に生み出され、そのあまりの強さ故に禁止となってしまった伝説級のサガのカード能力。
敵はどうやら自分も知らない知識を持つ、熟達の使い手らしい。
せめてもの救いは能力の代償なのか、兵士達は戦闘フェイズから外れこのターンは攻撃できないという事か。
しかし無傷で兵士達が残ってしまったのは大きな痛手だ。
これで相手の場には兵士達が2体、騎士が2体、計4体ものガーダーがいる。
先程も述べたが数は力、暴力だ。
1体のガーディアンより無数のガーダーが勝る状況は多々ある。
残念そうに肩を竦めターンを終える男。
自分のターンを迎えた悠馬は魔導書から新たなカードをドロー。
苦渋の後、溶岩地帯を広げ召喚陣を起動する。
灼熱の大地から姿を見せたのは、ドラナーが得意とする火属性の顕現こと火蜥蜴<サラマンダー>である。
攻撃力防御力はあまりないも、厄介な能力を持っている。
それは<纏いのブレス>というもの。
攻撃か防御時に自動的に発動する恒常的なダメージだ。
除去耐性のない者では近付く事すら容易ではない。
だが――果たして現状を切り抜ける事が出来るのだろうか?
額を流れる嫌な感触。
滑り落ちていく冷たい汗を拭おうともせず、悠馬はかつてない強敵との遭遇に打ち震えるのだった。
ユーマ 手札 7⇒4 マナ2 シールド3
??? 手札 5⇒2 マナ2 シールド3
<カラランズ騎士団>
SP 白②
AP 1000
DP 1000
『特記』
カラランズ騎士団が場に出た時、自身と同一のトークンを生成する。
手札を一枚捨てる:カラランズ騎士団はターン終了時まで破壊不能を得る。
<神聖なる対価>
SP 白④
『特記』
神聖なる対価は自軍のガーダーに指定した色の守護を与える。
場に出ているガーダーの数より大きいSPの手札を破棄する:あなたは神聖なる対価のSPを払う事なく唱えても良い。
「仕事が忙しくて更新できない(涙)」
「じゃあ――職場から更新すればいいじゃない」
「何という……こと」
という訳で、禁断の更新です(笑)




