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10話 対処

(危ない所だったな……)


 損傷を負った身体だけでなくドレスアップした戦闘衣すら元に戻っていく驚きを顔に出さず、少しでも時間を稼ぐ為に威迫を込めて悠馬は笑みを浮かべる。

 精一杯の強がりを込めて。

 戦闘衣の中を死に瀕した事による冷たい汗が流れていくのが実感できる。

 実際この世界に転移してきてから最大級の危機であった。

 レミットを追う皇都からの刺客の中にそれを所持している者がいるかもしれないと、メイアから不確かな噂としてでも話を聞いてなければ、為す術もなく先程の一撃で殺られていただろう。

 無敵と思われたフォースフィールドを貫く兵器の存在。

 俄かには信じられない話だ。

 だが悠馬は良くも悪くも魔導書に対する偏見がない。

 魔導書であるデッキに対する信頼はあるものの、フォースフィールドそのものに対する信用は最初からなかった。

 だからこそすぐに魔導書を書き換えたのだ。

 最悪の事態を想定して。

 紅のデッキが得意とするのは破壊と――再生。

 燃えて灰となった森林から芽吹く草花がある様に、破壊とは対極であるかの様に思える再生と創生がそこには含まれる。

 具体的にいえばデッキのヴァイタルガーダーを荒ぶる暴君<殲滅龍グ・イレイズ>から生命の息吹<不死鳥ラ・リーミヤ>へと変更し、デッキ内容もそれに準じたカードに変えた。

 生命の息吹<不死鳥ラ・リーミヤ>の特性は術者の半不死化。

 ラ・リーミヤ自身は脆弱で儚い存在だが……与えられる加護は絶大。

 不死鳥ことフェニックスの恩寵がある為、ヴァイタルガーダーが顕在されている限り、デュエルに敗北する事が無い。

 無限に近い再生――否、復元能力が悠馬を守る。

 つまりラ・リーミヤが除去されない限り召喚者である悠馬は死ぬ事がないのだ。

 通常はカウンターや手札破壊などを主体とする、相手を嵌めるロックデッキなどに用いられるガーダーである。

 何故なら召喚されているラ・リーミヤ自体は最弱(AP0 DP1000)の存在の為、こちらを狙われたらひとたまりもないからだ。

 よって結界術を得意とするティナに同行してもらい守護をお願いしている。

 それはつまり、ほぼ鉄壁といってもいい。


(だが――ネタがバレれば窮地に陥る)


 ここで調子に乗ったりせず逆に慎重になるのが悠馬の優れた才覚だ。

 自分が上手くいってると思う時ほど逆境に陥りやすいものだ。

 悠馬は同級生でありライバルである要との対戦を通してその事を骨の髄まで実感させられていた。

 こんな風に目立つ奴が好き放題暴れているのは何故か?

 考えられる可能性としては――囮だ。

 真の敵はこの混乱に乗じて現れる。

 イシュバーンの動向を警戒しつつ周囲を探る悠馬。

 紅のドレスアップ効果――熱を操るという事。

 それは即ち、熱源を感知する事を可能とする。


「そこ!」


 夜陰に紛れ近付こうとしていた数名が慌てて悠馬の放った火炎弾を回避する。

 悠馬と同様のフォースフィールドを展開している事からも正体は明確だ。

 その手に持つ魔導書を見るまでもなく召喚術師であった。

 絶対結界であるフォースフィールドも万能ではない。

 あくまで位階値を向上し有害なものから術者を守るもの。

 発熱する人体を覆い隠すものではない。

 最も悠馬と同じく紅のドレスアップをしていれば話は別だが。

 更に悠馬が放った火炎弾は『召喚』されたもの。

 互いのフォースフィールドが侵食し合う状況の為、デュエル前とはいえ召喚術師にそれは痛痒なダメージをもたらす。


「くっ! 

 バレたからには構わん、やれ!」


 イシュバーンの配下に扮していた王室情報局員<シャープネス>達が不慣れながらも魔導書を起動し、応戦。

 雨あられとばかりに悠馬目掛けて飛来する攻撃用召喚物。

 冷気を纏う礫、

 毒物の塗られた鏃、

 圧縮された空気。

 それらは回避する間も無く悠馬を貫き――悠馬は消し飛んだ。


「き、消えた?」

「やったか!?」

「馬鹿者、あれは蜃気楼だ!

 術者はとっくに逃亡している!

 早く追え!」


 狼狽し慌てふためくまだまだ未熟な召喚術師達を尻目に、悠馬は十分時間を稼いだことに満足を覚えながらも皆の無事を祈るのだった。




 2年近くもの間、大変お待たせしました。

 ユナシリーズが無事完結しましたのでこちらも連載を再開したいと思います。

 これからも応援宜しくお願い致します^^

 

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