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7話 驚愕

 宿から出て来た悠馬をイシュバーンは観察する。

 慎重に魔導砲の狙いを定めながらも冷静に。

 そして気付いた。

 宙に舞い散る火の粉が悠馬を球状に避ける。

 まるで視えない障壁があるかのように。

 更には目を引く原色で彩られた華麗な衣装。

 つまりこの少年は―― 


「ほう……資料にあった黒髪黒目。

 何よりもその出で立ち。

 貴様が賊に従っているという召喚術師か?」

「違う」

「うん?」

「レミットは賊なんかじゃない」

「反逆を企てる者は皆そう言い張るな、下郎」

「それに俺の名は下郎なんかじゃない。

 久遠悠馬だ。

 お前達の敵となる者の名だ。

 しかと覚えておけ」

「はっ!

 この我に啖呵を切るとは大した奴だ。

 いったい何が気に喰わないというのだ?」

「分からないのか? 本当に?」

「ああ、分からん」

「だからお前達みたいな輩とは理解し合えないんだよ!」


 この宿には自分達とは関係の無い人々がたくさんいた。

 何よりも一生懸命自分達を持て成そうとする従業員たちもいた。

 確かに皆逃げ出し、致命的な怪我はないだろう。

 そういう風に考慮したのは理解できる。

 けど洒落た雰囲気で居心地の良さそうだった宿は……

 無残に焼け爛れ炎上してる。

 何より遠目には燃える宿を見て泣き崩れる関係者の姿が視界に入る。

 ここは彼等にとって掛け替えのない居場所だったのだ。

 それが理不尽に踏み躙られたというに、踏みつけた方は痛みすら理解しない。

 絶対的な身分と力の差に反撃しようとする意志さえ叶わない。

 そんな単純な事すらこいつらは分からないのか。

 身勝手な正義に溺れるとはそういうことなのか?


(っざけるな……)


 この世界に召喚されて早数週間になるが……

 悠馬はこの時、初めて本気で怒りを覚えた。

 押さえ切れない衝動に突き動かされる様に。


(変えてやる……絶対に変えてやる!)


 激昂しながらも悠馬はドレスアップの力を開放する。

 その瞬間、周囲に燃え盛る炎が瞬時に消え失せた。

 悠馬から放射された力によって。


「ほお……これだけの炎を瞬く間に掻き消すか。

 どのような原理か知らぬが、なかなかやるな。

 その装束から察するにお前は紅の魔導書を持つのだろう?

 てっきり燃やすだけが取り柄だと思ったが」

「お前も皆も勘違いしてる」

「?」

「紅が司るのは炎じゃない。

 熱……正確にいえば分子間運動なんだよ。

 だから加速すれば熱くなるし、停滞させれば冷える。

 まあこんな原理を言っても分からないだろうがな」


 悠馬の指摘通り、紅のドレスアップの力は<超熱冷>。

 上限はあるも視界内の温度を自在に操ると云う物だ。

 かなり使える能力だが、集中しないと発動しないという弱点がある。


「我にはお前の言っている事はよく分からん」


 面白がる様に、されど嘲る様にイシュバーンは嗤う。


「だが、お前が時間稼ぎをしている事は分かるぞ。

 お前は囮で、他の者は別ルートから逃走している……違うか?」

「なっ!?」


 見抜かれた!?

 その事実に悠馬は驚愕する。

 確かに襲撃者に対する憤りはある。

 だがこんな分かりやすい形で悠馬が出て来たのは囮になっているからだ。

 悠馬が襲撃者の注目を引き、皆はその間に各自逃走をする手筈になっている。

 こちらの企みが瞬時に看破された事実。

 目前のこの男に対する警戒レベルを悠馬は2段階上げる。

 テンプレ風で単純そうだが馬鹿ではない。

 つまり決して油断していい相手じゃない。

 咄嗟に手にした魔導書を捲ろうとするが――


「させると思うか? 死ね」


 イシュバーンの呟きと共に電光の速さで引かれる引き金。

 唸りを上げる魔導砲。

 放たれた魔力光は悠馬に突き進み――

 絶対障壁たるフォースフィールドを貫き、悠馬へと突き刺さるのだった。







書き足し更新。

お待たせしました^^

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