6話 憤怒
「ぬわはははははははははははははははは!
偉大なる皇に牙を剥く反逆者共よ!
我の力を思い知るがいい!!」
目が覚めるような銀髪に紅の双瞳。
黒ずくめの夜会服を粋に着崩した貴族、イシュバーン・ノット・ガレンティスは高笑いを上げる。
いったい何事が起きたのかと近所の者達が集まって来るが、気にはしない。
何故なら自分の行為は偉大なる皇に捧げる為のモノ。
まして相手は逆賊たるマリエル侯爵に連なる者達だ。
上から受けた使命もレミットという娘の生死は問わない、
ただ必ず捕縛せよというもの。
ならばどのような行為も全て正当化される。
更に宝物庫より特別貸与されたこの魔導砲の力に感服をし始めてもいた。
いにしえの昔に作られた魔導文明の遺産。
現在では失われた超技術の結晶。
かつての大戦でも使われ戦況を変える秘宝が一つ。
使用者をサポートする補助機能のお蔭で苦も無く扱える利便性。
そして何より、どんな物をも貫き崩壊させるこの威力。
まさに自分に相応しい。
「どうしたどうした!
早く出てこい、マリエル家に連なる者達よ!
誉れも高き我の名はイシュバーン・ノット・ガレンティス。
主君ランスロードの命を受け、貴様達を捕まえにきた。
そこにいるのは分かっているぞ。
我は慈悲深い。
大人しく投降するというのならば命は取らん。
ただ……
我は気が短い。
決断するのならば早くするのだな。
その建物が崩壊せぬうちに」
再度宿へと魔導砲を構えるイシュバーン。
個室にいた悠馬達以外はすでに出払ったというか慌てて非難したのか、中から人の気配はしない。
だが眼で問い掛けると周囲に展開した配下の者達は首を縦に振り肯定する。
奴等はまだ中にいる、と。
この者達は王立情報機関<シャープネス>に属する情報局員だ。
今回特別に自分に同行を赦された者達。
自分に代わって色々手筈を整えてくれる為、重宝していた。
純粋な自分の配下は拠点に控えさせている執事のみ。
没落貴族の一人である男爵にとってそれが限界である。
下手な上級市民より生活は苦しいからだ。
しかし名義上とはいえは自分は貴族。
ならば民を導く義務と高貴なる責任がある。
反逆者に狙われやすい危険はあるも、名誉ある口上。
絶対に変わる訳にはいかない。
それに打算もあった。
この任務というか密命をやり遂げれば立身出世は間違いない。
その高揚感がイシュバーンを奮起させる。
一応人に当たらない様に配慮はした。
しかし出てこずに籠城するというのならば仕方がない。
最終手段を取るまでである。
イシュバーンは魔導砲のチャージを開始する。
全てに優れた魔導砲だが、特筆すべきはその出力調整だ。
連射をすれば五月雨の様な掃射も可能だし、溜めを行えば戦術兵器級の砲撃も行える。
降伏勧告に応じない以上、
そして相手が魔導書を持つ以上、
こうなっては全てを吹き飛ばすしかない。
甲高い音と共に大気に漂うマナが魔導砲に蓄積されていったその時――
「いい加減にしろ」
瓦解寸前の宿の出入り口から現れる一人の少年。
烈火のごとき激情を湛えた、憤怒の化身。
紅のドレスアップを纏った悠馬が毅然とその前に立ち塞がるのだった。
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