5話 因縁
固い床と熱烈に頬擦りする羽目になった悠馬がまず連想したのは、召喚前の地球でよく見たTVや映画の紛争シーンだ。
甲高い銃の音とは違う、物理的な重圧さえ伴った重低音。
所々登場しては、時折シーンそのものすら破壊してしまうもの。
それは砲撃による攻撃だ。
(まさかこの世界にそんなものがあるのかよ!?)
壁に開いた大穴。
熱量か圧力によって無惨に破壊された外壁。
個室の外からは悲鳴をあげて逃げ惑う人々の声が聞こえる。
焦燥に駆られながらも悠馬は展開していたフォースフィールドを恣意的に強化。
自分自身だけでなく部屋の皆を効果範囲に捉える。
これで当面の安全は確保できた。
だが……油断はならない。
魔導書を携えた召喚術師の展開するフォースフィールドは絶対だ。
しかしそれは決して無敵であるとはいえない。
確かにこの結界は魔導書以外の攻撃を物理法則すら塗り替え無効化する。
力場を展開した召喚術師を相手取るのは至難の業だろう。
よって通常は同じ力場を扱う召喚術師を以って相殺させ合う。
だがここで一つの例外が生じる。
結界内は絶対防御。
ならば結果の外は?
そう、今の悠馬達は部屋中を覆った力場内にいる限り安全だろう。
でも逆に考えれば、それは力場の外で何かがあった場合、その影響を直接的でなくとも間接的に受けてしまうのだ。
例えば、召喚術師の足元を束縛できる素材で固めてしまえば?
例えば、召喚術師の周囲を爆撃や毒などで包囲してしまえば?
無論、結界内ならば意識する事により足場を正常化し汚れた空気を清浄化する事も可能。
けどそこを狙われたら?
強大ではあるが魔導書の力とて無限ではない。
何かにリソースを割り振れば割り振った分、何かが疎かになる。
この場合は言うなれば外堀を埋められた状況なのだ。
次は何かしらの奥の手を投入してくるのがセオリー。
幸いなのは皆が襲撃慣れ(?)していた事だ。
突発的な凶行に困惑しつつも、即応する一同。
一番幼いレミットですら自分の父である侯爵の事を瞬時に意識外にし、すぐに逃避行動を行えるよう自己点検を行っている。
「皆、無事か!?」
「イタタ……
はい、転んじゃいましたけど何とか」
「うん、あたしは大丈夫!」
「ええ、わたくしも大丈夫ですわ」
「ああ、私も何とか」
「ん。これぐらいは平気」
「同じく。
しっかし……いったいなんでしょうな、こりゃ~」
「それについての解説は不要と思われる」
「はい?
どうしてですか、ティナの姐さん」
「だって」
「ねえ?」
「そこで解説したそうにしてる奴がいる」
「あれはまさか!
イシュバーン男爵とその配下の者達!?」
驚愕するメイアに応じたティナの指し示した先。
壁に開いた大穴から窺い見える外の風景。
そこには何事かと集まる野次馬達を威嚇する武装した男達がいた。
中心にいるのは、明らかに規格外な魔力を放つ魔導砲を構えた若い貴族風の男だ。
砲撃によって瓦解した宿を見て満足げに大笑いを上げている。
何というか、その様子はテンプレ的な悪役に近い。
顔立ちは悪くないも、傲慢としかいえない他者への見下した目線が全てを台無しにしている。
この者こそ後に悠馬達を幾度も危機へと陥れる事となる者。
悠馬の因縁の相手ともいえる、イシュバーンとの初邂逅となるのだが……
この時は双方共に、知る由もなかった。
更新です。
新規お気に入り、ありがとうございます。
少しでもこの小説を読んで楽しんでもらえれば幸いです。
理想的には読後でニヤリとしてもらえばw
あと最近仕事が忙しくなってきましたので少し更新が遅くなります。
これからも応援よろしくお願いしますね。




