二章<魔導>
「おっ!
ついに見えてきましたよ!!」
整えられた街道の先をいくカレンから歓声が上がる。
驚く事に乗っている馬は悠馬が召喚した一角馬だ。
清らかな乙女しか乗せないという馬に堂々と乗るカレン。
それはまさに女騎士という出で立ちだった。
しかし感情の抑制はまだまだのようである。
興奮と喜びに満ちたその声を受け、後に続く馬車から各々が顔を覗かせる。
「おお~すっげー!」
「おっきい~きれ~」
「素晴らしいですわね」
「ん。変わってない」
大声をあげてはしゃぐ一同。
この馬車も悠馬によって召喚された八本脚の軍馬によって牽かれている。
馬力があるとはいえ、制御が難しい。
歓声に動揺する馬を上手に宥めながら、御者席に座るドラナーは背後を振り返り苦笑まじりに忠告する。
「まだ安全と決まった訳じゃないんですぜ。
もうちっとだけ我慢して下さい、兄さん姉さん方」
「ん。多分大丈夫。
この辺からは魔導都市の防衛機能の管轄下になる。
奴等もそういうリスクは極力おかさない筈。
おそらく襲撃は魔導都市に入ってからだと思われる」
「そういうもんですかね?
まあ巫女の研修として何度かここへ来た事のあるティナ姉さんの言う事なら間違いないんでしょうが」
肩を竦めるドラナーにティナはうんうんと頷く。
「大丈夫よ、ドラナー。
ティナは物知りなんだから。
それに巫女としての力は何回も見たでしょ?
いざとなったら、ちゃんと教えてくれるもん。ね?」
「ん。
ありがとう、レミット様」
「む~~
呼び捨てにして、っていつも言ってるのに~」
「じゃあ……
ありがとう、レミット」
「えへへ~
どういたしまして☆」
優しく頭を撫でるティナに、目を細め子猫の様に身を震わせるレミット。
新しくパーティに加入したティナ。
最初は打ち解けるられか不安だった悠馬だが、どうやら上手くいったらしい。
この魔導都市エリュシオンまで2週間。
順風とは言えない旅だったが、苦難を共にする事で絆は深まったようだ。
特にティナの霊感と云うか危機察知能力には助けられた。
全てでないも、危険な罠や襲撃などを事前に把握してしまうのである。
お蔭様で致命的な事は起きず何とか無事にここまで来れたのだ。
ホントにティナさまさまである。
ただ……一つだけ問題を上げるとすれば。
それはちょっと仲良くなり過ぎてしまったのではないか、ということ。
時折ティナを含む女性陣で固まってヒソヒソ話が始まる。
悠馬も参加しようとすると「これは女性限定のお話しですので」ときっぱり断られる。
何だか孤独。
寂寥感を抱いた悠馬は御者席にドラナーを召喚。
色々と話し相手(「ドラナー……俺、皆に嫌われたのかな……?」「兄さんの考え過ぎですって!」「ホントに?」「あっしを相手に勇壮に戦った兄さんはどこにいったんです!?」「ああ、死んだ。主に食あたりで」「死ぬの早過ぎやしやせんか!? しかも理由が」)もとい、相談相手になってもらっていたのである。
まあそんな寂しい生活も、もうすぐ終わりだ。
遥か彼方に見えるのは巨大な塔が立ち並ぶ都市。
悠馬からすればテレビで見たプラハっぽい街並みだと思った。
古さの中にもどこか機能美を残し、強固な城壁に囲まれている。
世界最古の神造建築である魔導学院を主軸に添えてるからだろう。
魔導都市の由来は学院の周囲に建てられた学術機関の総称でもあるからだ。
あそこに行けば元の世界へ行く手掛かりがあるかもしれない。
それにレミット達の身の安全が確保される。
逸る心を押さえ、悠馬は遠くに見える景色に想いを馳せるのだった。
お待たせしました。
第二章<魔導都市編>開始です。




