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テンプレ異世界召喚に巻き込まれたデュエリストですが、持ち前の魔導書(デッキ)で何とか頑張ってます  作者: 秋月静流


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20話 抱擁

「ティナ……」


 膝を折り、大地に手をつき慟哭したい衝動を堪える悠馬。

 この世界では万能の様に思えた魔導書デッキの力。

 召喚術師である自分でも守れない、救えない存在がいるだなんて……


「馬鹿だ、俺は……

 浅はかな考えで隷属化すればいいなんて。

 何でティナの真意を考えなかったんだ!」


 涙を零す悠馬に声を掛けれず、そっと遠巻きに見守るレミット達。

 通夜の様に死を悼む雰囲気が漂うそんな中、


「いや……

 それはおかしいだろう、ユーマよ」


 魔導書から契約したばかりのファイレクシオンの声が掛けられる。

 先程から一連の成り行きを静観していたが、腑に落ちない点があったからだ。


「――え?」

「要石は確かに封印の要である。

 しかしその石が無くなったからといってあの巫女が消える道理がない。

 監視者とはいうなれば我と共に封印された状態なのだぞ」

「へ?」

「我の封印がこうやって解かれた。

 ならば監視者も同様なのではないか?」

「そ、それってもしかして――」

「うむ」


 驚愕する悠馬の前で要石のあった場所の地面に魔方陣が浮かぶ。

 固まる悠馬。

 やがて魔方陣は複雑な儀式魔術を形成するや、一人の少女を召喚した。

 その少女とは無論――


「ん。

 悠馬、また会えた」


 散歩帰りの様な気安さで手を挙げる。

 その姿は半透明ではなく、動きにはしっかりとした質感が伴う。

 幽体ではない。

 実体を持った生身のティナだった。


「ティナ!」


 駆け寄りティナを抱き締める悠馬。

 巫女服の中に納まる細い肢体がダイレクトに伝わる。

 幻でも幽霊でもない。

 ティナはここにいた。


「悠馬……

 嬉しいけど、ちょっと痛い。

 あと皆見てる」

「あっ、ごめん!」


 慌てて離れる悠馬。

 ジト目のレミット達を上手く誤魔化しなながら、ティナに疑問を投げ掛ける。


「でもどういうことなんだよ、ティナ!

 消えるっていうから……

 てっきりもう会えないとばかり……」

「意味合いが違った」

「え?」

「幽体としての私は消滅する、と言いたかった。

 ファイレクシオンが隷属化された今、私は共に封じられていた本体へと戻らなければならないから。

 だから先程までの会話は消えるという単語の前に(幽体としての私は)と付けるのが正しい」

「はああ!?

 何だよ、最初からそう言えよ~」


 安堵のあまり、再度膝から崩れ落ちる悠馬。

 ティナとの別離はそれほどの精神的負担を掛けていたのだ。

 そんな悠馬の肩に労わる様に優しく手を乗せるティナ。

 精一杯の謝意を込めて悠馬に謝罪し始める。


「ごめんなさい、悠馬」

「――?

 ああ、いいよ。

 ティナがこうして無事なら――」

「私はもう、幽体じゃない」

「うん。おめでとう」

「だから――

 悠馬の代わりに女子のブラ柄覗きチェックは出来ない――(悲壮感)」

「んな事を頼んだ覚えはない!」

「――え?

 パンツの方が……いいの?」

「何で不思議そうに聞き返してくるんだよ!

 そういう意味じゃない!」

「まさか靴下だけ、とか……(ごくり)

 ――悠馬、恐ろしい子」

「いい加減覗きの発想から脱却しろ!!」


 憤慨し、立ち上がる悠馬。

 上品に口元を押さえて嗤うティナ。

 その仕草でからかわれていたのだと実感する。

 ……多分。


「ああ、まったくもう……

 ティナには振り回されぱなしだな」

「フフ。

 ボッチの私をその気にさせた罪は重い。

 責任、ちゃんと取って。

 特に今は私がいた時代とは違うみたいだし」

「分かったよ。

 けど事情はこれから話すけど、危険な旅になるぞ」

「構わないわ」

「よし、ならば――

 これからもよろしくな、ティナ」

「こちらこそ、悠馬。

 変な女だけど今後ともよろしく」


 固く組み合わされる手と手。

 新たな仲間の合流を祝福するかのように、光のサークルが空から注ぎ降りる。

 暴風雨は完全に消え去り、雲の切れ間からは数日振りとなる青空と日の光が顔を覗かせていた。

 それはまるでティナが悠馬の仲間となった絆を象徴するような瞬間だった。





























「――それで。

 どのような対応をしたのです?」

「封印指定だった腐嵐王の封印を緩めてみました。

 すぐに食いついてきましたよ」

「首尾は?」

「思わしくないですね。

 当て馬代わりにあわよくば、と思ったんですけど……

 どうやら腐嵐王だけでなく封印の監視者も隷属化したみたいです。

 なかなかに強いですよ、彼。

 まあ魔導書デッキの構成を垣間見れたのが唯一の収穫ですかね」

「そうですか……

 アナタの指摘通り、確かに強さは認めましょう。

 しかもその実力は未知数。

 未だ解析中です」

「そうなんですか?」

「はい。

 この一週間で指令を下したB級までの召喚術師達は全て退けられました。

 今はA級(実戦)レベルの帯出も考慮してます」

「へえ~

 そっちも大変そうですねー」

「――アナタの様なはぐれ召喚術師の活動が許されているのは、その類い稀な力によるものだからです。

 S級(禁忌)魔導書の所持者。

 その力、今こそ役立てなさい」

「は~い」

「本当に分かっているのですか?」

「心より」

「はあ……(溜息)

 まあいいでしょう。

 やり方はアナタに一任します。

 任せましたよ、カナメ」

「了解しました。

 全ては――様の御心のままに」


 更に何かを言いたげな通話を強引に打ちきり、召喚術師は遥かなる天空より下界を見下ろす。

 先程まで吹き荒れていた暴風雨を物ともしない強固な力場に守られているその召喚術師は、ただそこにいるだけで恐ろしいほどの畏れを纏っている。

 細身のラインを覆うのは虹色に輝く見た事もないドレスアップ。

 少女の様に可憐な顔に喜色を浮かべ、召喚術師は無邪気に微笑む。


「強くなったね、悠馬。

 再戦が楽しみだよ」


 その召喚術師とは悠馬をこの世界に招く要因となったカードを渡した持ち主。

 悠馬の同級生である九条要に間違いなかった。






 多めのお気に入り登録と評価、ありがとうございます。

 序章冒頭に数行出てた悠馬のライバル、要の登場。

 露骨な伏線ですね(笑)

 これにて第一章終了です。

 次回からは魔導都市編を予定してます。

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