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テンプレ異世界召喚に巻き込まれたデュエリストですが、持ち前の魔導書(デッキ)で何とか頑張ってます  作者: 秋月静流


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17話 逆転

◇4ターン◇


 嵌っているな。

 腐嵐王を挑発しながらも、悠馬は冷静に戦力差を考える。

 場には4マナ(シールド破損時にプラス1)と石灯籠。

 <玉砂利><社><鳥居>が並び立つ事により、ヴァイタルガーダーを呼ぶ前提条件は整った。

 ただしドロー前の現在、手札は0。

 残されたシールドは2。

 相手の場にはガーダーが一体、さらに手札は4枚もある。

 手札破壊デッキである以上、おそらく手札干渉系もしくは除去系のスペルなどが考えられる。

 つまり悠馬がどのように動こうが実質このターンが最期になる可能性がある。


(引いてこれるか……)


 魔導書に手を掛けた悠馬。

 TCGをする者なら誰しもが思う想い。

 ここでデッキからアレを引ければ……

 ただ現実は非情である。

 そんなに都合よく引ける訳がない。

 強者はいつも強い『引き』をしている様に見えるが、それは違う。

 待望のカードを引くまで生き延びるプレイングとダメージ計算。

 冷徹な対応と計算をしているからこそ『間に合った』のだ。

 だから悠馬はドローに期待はしてこなかった。

 元々悠馬は引きが強い方ではない。

 マナスペルばかり引き苦笑する事が多かった。

 故にプレイングとデッキ構成に心血を注ぎ、祈りは捨ててきた。

 そう、今までは。

 異世界に転移し、初めて悠馬はデッキに祈る。

 その瞬間思い出したのはライバルである九条要の事。

 確かに要はプレイングも巧みでデッキ構築も見事だった。

 しかしそれ以前にここ一番での引きが神掛かっていた。

 驚く悠馬にいつも綺麗な澄まし顔で要は答えたのだ。


「デッキの声を聞く事だよ、ゆうま」


 少女の様に可憐な容姿を持つ要。

 そう言って無防備な素顔を覗かせる要は自然体で自分より高みにいる事が実感出来た。

 閉眼した悠馬は魔導書たるデッキに想いを馳せる。

 楽しい時間。

 苦しい時間。

 様々な時間をデッキと共に過ごしてきた。

 この無数のカード達は自分の生きてきた時間そのもの……

 ――とまでは言わないが、大きな構成要素だ。

 掛け替えのない相方ともいえよう。


(そうか……俺は勘違いをしていたんだな)


 悠馬はここに到りやっと要の言う事を理解した。

 カードは祈りながら引いてくるものじゃない。

 デッキと、そのデッキを構築した自分を信じるものなのだ。


(だから……

 俺に力を貸してくれ!

 この前に立つ奴を斃す為に!!) 


 願いを込めて悠馬はデッキからカードを引く。

 引いたカードを見て硬直する悠馬。

 何もせずそのままターン終了を告げる。


「どうやら何も引かなかったようだな」


 自分の手番。

 新たなガーダーを召喚しながら腐嵐王は嘲りの言葉を投げ掛ける。

 悠馬は答えず、ただ俯くのみ。

 憔悴したその姿に腐嵐王は満足げに頷く。


「嘆くな、召喚術師。

 所詮はそれが貴様の器という事。

 さあ、この我が貴様を安寧に導いてくれよう」


 速攻を付与され悠馬に襲い掛かるガーダー達。

 砕け散る2枚のシールド。

 これで悠馬に残されたシールドは0だ。

 防御するガーダーか何らかのスペルでシールドを補充できない限り、次に攻撃を受けたら悠馬の敗北となる。

 その為には何かしら有効スペルを用いらなくてはならない。

 シールド破損時の効果を手札の補充に使い、悠馬の手札は残り3枚。

 しかし――


「さらに乱数破棄<ラプラス>発動。

 手札に渡ったものを含めランダムに2枚棄てよ」


 追い打ちとなる腐嵐王の攻勢。

 シールドを代償に恐るべき効果が発動。

 悠馬に残された手札が無作為に破棄されついには1枚となる。


「これで詰みだな、召喚術師。

 投了するがいい。

 貴様を滅ぼす事に代わりは無いが、せめて苦しまずに――」


 そこまで言い掛けて腐嵐王は気付いた。

 俯いたままの悠馬。

 見えないその口元から笑い声が聞こえている事に。


「――無様な。

 狂ったか?」

「いいや、違うね!」


 見下した侮蔑に対し、毅然と顔を上げ応じる悠馬。

 その瞳には強い闘志が込められている。

 射抜かれた様に思わず後退する腐嵐王。


「馬鹿な……この我が退くだと?

 しかし召喚術師、貴様にもはや逆転の術はあるま」

「――これは賭けだった」


 腐嵐王の言葉を遮り悠馬は告げる。

 その敗北を。


「賭け――だと?」

「――ああ。

 お前が俺の予想以上の動きをしてくれる事。

 最悪を超える動きで俺を追い詰めてくれる事を」

「貴様は一体――」

「勝利するのなら堅実なプレイングで良かったんだ。

 無駄に絶望を煽ったりせずに。

 ただお前は俺を心底貶めたいが為に持てる力を全て費やしてしまった……」

「何を言って――」

「窮鼠猫を噛むという言葉を知ってるか?

 追い詰められた獲物は何をするか分からないんだぜ?

 そしてお前は最期の希望であったランダムディスカードにすら失敗した。

 このデュエルに敗因があるとしたら……

 それは間違いなくお前の傲慢さだ、無能王!」

「無能……だと?

 この我を無能呼ばわりするというのか?

 定命の者が世迷い事を洩らすな!

 ならばこの状況、貴様はどう覆せるというのだ!!」

「それを今から証明してみせるのさ。

 石灯籠を燈火とし、マナを倍増。

 祈祷を以って結実とし、今ここに我は願う」


 石灯籠から漏れた燈火が玉砂利の上に秘文を為してゆく。

 社が共鳴し、鳥居には注連縄が下りる。


「幽界より来たれ!

 封印の護り手<監視者ティナ・ハーヴェスト>よ!」

「悠馬の望むがままに」


 悠馬の召喚に応じたのは祭祀の神器を携えた美しい碧髪の巫女。

 幽玄の神秘を讃えたその姿。

 それは一時的に悠馬のヴァイタルガーダーとなったティナに間違いなかった。




 次回でデュエル決着です。

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