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14話 制止

 渦巻く暴風が徐々にカタチを為していく。

 無数の触手に覆われた、黒き異形の鎧姿。

 おぞましき造形の中にも畏敬を称えたその姿は漆黒の覇王ともいうべきか。

 未だ封印が解かれた事が実感できないのか、自己の存在を確かめるように両手を見る。

 拳を握ると認識される、確固たる自分。

 間違いない。

 封印は――解かれたのだ。

 我が名は腐嵐王。

 冒涜なりし荒廃者。

 歓喜と共に咆哮する。

 それは台風のごとき轟きと鳴った。

 気の済むまで声を上げると、腐嵐王はゆっくりと歩み出す。

 その目的は報復。

 忌まわしき封印を施した人間共に対し、然るべき報いを下すのだ。

 さながらそれは動く災厄。

 粘液に塗れた足が触れただけで大地が腐り、泥の様に死んでいく。


「そこまでにするんだな」


 だが――そんな腐嵐王の前に立ち塞がる者がいた。

 神秘的な紫の長衣を纏い、魔導書を手にした一人の少年。

 悠馬だった。

 返答代わりに腐嵐王は片手を挙げ風を放つ。

 呪いを纏った魔風。

 それは疫病を招き、全てを腐らす恐るべき風だ。

 しかし魔風は悠馬に届く寸前、瞬時に掻き消されるのだった。

 悠馬の展開した結界<フォースフィールド>によって。

 苛立つ腐嵐王。

 絶対王者たる自分に立ち塞がる塵芥。

 決して――赦すまじ。

 物理的な圧力を伴った腐嵐王の苛烈な殺意を受けながらも、悠馬は毅然とした態度を崩さない。


「腐嵐王よ、汝に問う――

 お前はなんだ?」

「――我は災厄。

 全てに荒廃をもたらすモノ」

「――その行く末は?」

「あまねく記憶に残りし、

 全ての存在――

 全ての次元を消し――

 そして――

 我も消えよう……永遠に」

「そうか……

 ならば俺は、お前の敵だ。

 我が名は久遠悠馬。

 召喚術師たる我が御名においてここに宣言す。

 腐嵐王――

 汝にデュエルを申し込む!」

「恐れを知らぬか、矮小なる者よ。

 ――良いだろう。

 腐敗と嵐に誓い、今ここに誓約す。

 我が名はファイレクシオ。

 汝、クオン・ユーマの申し出を受けよう。

 汝を滅ぼし――我が荒廃への礎としてくれん」


 召喚術師から高位存在への宣誓による決闘誓約の成立。

 その瞬間――

 世界の全てが弾け、決闘を行う闘技場へと再構成される。






 有名RPGのラスボスの台詞から引用させて頂きました。

 好きなんですよ、あのどうしようもない虚無感。

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