10話 対抗
◇1ターン◇
神聖な雰囲気が漂う境内。
まるで神社の様な場所に設けられた舞台に悠馬とティナは立っていた。
この心象風景や雰囲気から察するに、ティナが扱うのは神秘と豊穣を司る紫のデッキらしい。
紫のデッキは直接的な攻めに向かないも、結界や封印といった搦め手を得意とする色だ。
思わぬ所から足を掬われぬ様、注意しなくてはならない。
(まあそれはこちらも一緒か)
今回悠馬は虚栄や幻影など惑わしを司る蒼のデッキを選んでいる。
相性としてはそれほど悪くない。
遥か彼方に居るティナも同じことを思ってるだろう。
召喚術師の決闘場であるこの空間にいる以上、いかなる存在であろうと所持されている力はデッキ化される。
無論強大な存在程、その強さに応じたデッキとなる為不公平感は無い。
ただデュエルという枠組みで戦える以上、どんな存在に対しても勝機を見い出せるのが召喚術師の特徴だ。
ダイスを用いた公平な選択の結果、先手はティナとなった。
「玉砂利よ」
ティナの掛け声と共に周囲の舞台上に玉砂利が敷き詰められる。
やはり紫のデッキで間違いないようだ。
一方の悠馬は魔導書からのドロー後、静かに泉を招き蒼色のマナを増強。
ターンを終えた。
ユーマ 手札 8⇒7 マナ1 シールド3
ティナ 手札 7⇒6 マナ1 シールド3
◇2ターン◇
「社よ、神秘となり異界の扉と成れ。
我に従うは先駆けの狛犬なり」
2ターンの開始時よりティナが動いた。
玉砂利に社を招きマナを増強。
恐ろしい形相をした狛犬を招こうとする。
その動きに割り込んだのは悠馬だ。
「<予期せぬ誤り>を使用。
あと1マナ払って下さい」
「……出来ないわ」
「じゃあカウンターですね。
残念だけどその術は無効化されました」
肩を竦める悠馬を睨むティナ。
これこそ蒼デッキの本領である対抗呪文<カウンター>である。
通常力に対し力で当たるのがカードゲームならぬデュエルの常である。
それが故により強いガーダーや効率のいいスペルを求められる。
だが7色の中で蒼だけは違う。
蒼はどんな呪文や術であろうとその効果が発動する前に割り込み無効化する。
いうなればアンチ召喚術の色でもある。
よって手札がある時の蒼デッキは鉄壁だ。
呪文そのものを発動させない。
しかし強大さの反面、一度場に出てしまったガーダーなどに干渉する術は限られる。
自色ガーダーの質も他に劣る為、劣勢になるとかなり脆い。
ハイリスクハイリターンな側面を持つ色であった。
「じゃあ俺は湖との契約を」
再度ドローすると悠馬は湖を招きマナを伸ばす。
これで使えるマナは蒼2マナとなる。
悠馬は手札を見渡し、一枚の符を選ぶ。
「泉よ、波濤を呼び湖の幻像と成れ。
出でよ!
虚ろなる従僕<イリュージョンビースト>よ!」
虚ろなる従僕<イリュージョンビースト>
AP 3000
DP 3000
SP 蒼②
『特記』
虚ろなる従僕が攻撃か防御に参加した場合、
ターン終了時に虚ろなる従僕は破壊される。
悠馬の召喚により宙が揺らめき一体の獣が姿を現す。
よく見ればそれは大型の獣の様でもあり鳥の様でもあり魚にも視えるという、不思議な半透明の存在だった。
これは半分実態を持った幻影である。
コストに見合わぬAPとDPを持つが一度でも攻防に参加すると破壊されてしまうという脆さがある。
初心者には見向きもされないガーダー。
だが今の悠馬にとっては都合が良かった。
考え方の違いである。
このガーダーは追い込まれると壁にしかならないが、上手く使えば敵対ガーダーと相討ちに持っていける。
それは蒼にはない除去呪文と一緒ではないか?
長期戦を見据えた蒼デッキにとってそれは珠玉の時間を稼いでくれる。
ここら辺が都内でも有数のデュエリストである悠馬のセンスなのだろう。
悠馬は微かな満足感と共にターンを終えた。
>ティナ、ドロー後にサモニングをするもユーマによりカウンターされる。
ユーマ、ターン開始時にデッキより1枚ドロー。
更にガーダーを一体召喚する。
ユーマ 手札 8⇒6 マナ2 シールド3
ティナ 手札 7⇒5 マナ2 シールド3
やっとデュエルになります。




